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21話

 王都の門から街に入ったジャックはそのまま止まることなく目的の場所へ向けて走っている。


「どこへ……向かうのだジャック?」


 ジャックがいったいどこへ行こうとしているのか気になったマジーナが少し息を乱しながら問いかける。


「研究所だ」


「研究所? どこの?」


「お前も知っている特級ポークを作っている研究所だ」


「特級ポークの……」


 マジーナは特級ポークと聞いて偉そうに言っていた頃の自分を思い返し苦い顔を浮かべる。


「けどそこに向かってどうするつもりなのだ?」


「エレノアの狙いはあそこだ。あそこには錬生術に必要な機材が一通りそろっているからな」


「どういうことなのだ?」


「やつの狙いはそこで人口生命体を作りだすことだ」


「人口生命体を?」


「ああ、今守備隊やハンターといって主だった連中は王都の外にいる魔物に釘付けにされている。そんな状態で街の中から魔物が出てきたらどうなると思う」


「そんなの大パニックになるのだ。ハンター達が出払っている状態で魔物が現れたら一般人ではどうにもできないのだ」


「そうだ。そうなれば王都に壊滅的なダメージを与えられることになるだろう」


「ならばそのことをみんなにも伝えないと」


「無駄だ。これはあくまで俺の推測でしかない。証拠がなければ誰も信用しないし動かない」


「でも」


「今は説得している時間すら惜しい。それに俺は今まで一人でやってきたし何の問題もない」


「違うのだジャック! わたしもいるから二人なのだ」


「……ああそうだな。だが足手まといになるようなら置いていくからな」


「任せるのだ」


 とマジーナは自信満々に答える。


 そうこうしている間に二人は研究所の前までやってくる。


「ここが研究所なのか?」


 マジーナの疑問ももっとだった。


 研究所と言っても外観はどこにでもありそうな洋館なのだ。パッと見た限りではそこが研究所だとはわからないだろう。


「まあ特級ポークも人口生命体だ。表向きには言えないことをやっているからこうやってカモフラージュしてるんだ」


「なるほどなのだ。でもジャックはどうしてここがその研究所だって知っているのだ?」


「ここは元々錬生術師の研究所でもあったんだ。俺は五年前にここを訪れたから知っているんだ。俺の予

想だとエレノアってやつはここにいた錬生術師の身内か何かだろう。だからこの場所について知っていておかしくはない」


「ふーんそうなのだ」


「とにかく急ぐぞ」


「わかったのだ」


 ジャックとマジーナは洋館の中へと入って行く。


 洋館の中は散らかっていた。誰かが入って来た時のためなのか洋館の中は玄関ホールは調度品等が飾られていたがそれらが全て床に転がっていた。


「まさかすでに襲撃があったのだ?」


「いや、争った形跡はないから違うだろう」


 ジャックは辺りを観察しながら考えを述べる。


「おそらく魔物の襲撃と聞いて慌てて逃げ出したんだろう。過去の一件もあるからここにいた連中はとっとと避難したかもしれない」


「過去の一件?」


 五年前の事件の詳細を知らないマジーナは首を傾げるがジャックはマジーナに知る必要はないと考え説明はしない。


「こんな状況じゃエレノアが先に侵入していてもわからないな。警戒を解くなよ」


 とジャックはマジーナに言うと先に歩んでいく。


 ジャックのはそのまま階段へと進み二階へ上がる階段へは上がらずその脇にあった隠し扉から地下へと下りる階段を見つけ地下へと向かう。


「なんなのだここは?」


「さっきも言ったが上の洋館はカモフラージュだ。この地下が錬生術が行われている場所だ。エレノアがいるならそこだろう」


「うわっ! これは何なのだ?」


 地下へとやってくるとマジーナはガラスの容器に閉じ込められている豚を見て驚き混じりに訊ねる。


「こいつが特級ポークだ。特級ポークは急速に成長して三日もあれば大人の豚になるがその分すぐに死んでしまうからな。この培養液につけておけばその成長を止めることができるんだ」


「ほえー、なんだか見ていてあまり気持ちのいいものではないのだ」


 マジーナはキョロキョロと辺りを見回しながら培養液につけられた特級ポークを見て嫌そうな顔をする。


「だろうな」


 そう言ってジャックは辺りを警戒しながら先に進む。


「……っ! 気をつけろ。この先に誰かいるぞ」


 それから警戒しながら進むこと数十分。ジャックは際奥の間へとつながる扉の前で人の気配を察知してマジーナに警戒するように呼びかける。


「……」


 マジーナはジャックの目を見ながら無言で頷く。


 ジャックはそれを確認して際奥の間へとつながる扉を開ける。


 扉を開けた先には地下室とは思えないだ広い空間に出た。ここはかつて魔物の戦闘力を調べるために魔物同士を戦わせた場所だ。今でもそのありさまを語るようにあちこちに魔物の血がこびりついている。


「まさかここの存在に気が付くなんてね」


 ジャックが入ってくるのを見て先にこの部屋にいたエレノアが振り返りながら声をかけてきた。彼女はジャック達が来る前にこの研究所にやってきていたのだ。


「あんたがエレノア・マクガフィンか」


「お久しぶり? いえあなたとは初めましてというべきかしらね。でも残念だけどほんの少し遅かったわね」


 彼女は高揚しているようで楽しそうに語る。


 ジャックとマジーナはそんな彼女へ視線を向けてはいない。二人が視線を向けるのは彼女の近くに佇む生物だ。


 パッと身は赤獅子のバロンのように見えるがその頭は一つではなく二つ。赤獅子のバロンの頭とは別に黒山羊の頭――バフォメットの頭が生えているのだ。そしてお尻にはバジリスクの姿もある。


「バカな!」


 ジャックはその生物を見てありえないと否定したくなる。


 錬生術で錬成できるのはベースとなった因子を持った生物のみ。複数の生物の因子を取り込むことなどできない。しかし目の前にいる生物は赤獅子のバロンの身体にバフォメットとバジリスクがそれぞれ生きており一体となっている。


 理論上そんなことはありえないはずだ。


 魔物を無理やりツギハギしてくっつけたとしても生物は拒絶反応を起こして死んでしまうのだ。それなのに目の前にいる生物はちゃんと生きている。それどころかバジリスクの持つ毒にも母体となる身体が異変を起こしていない。


 だが同時にそれができたから大蛇に毒を持った個体が作る出すことができたのではないかと推測する。


「これが私の作りだした究極の生命体、キメラよ」

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