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17話

 マジーナ達がジャックを探している頃、ジャックは王都にあるハンター総本部にいた。


 このハンター総本部では全国のありとあらゆる情報が集まってくる場所で、ジャックはそこの資料室でサハギン族の村にいたエレノア・マクガフィンという人物について調べていた。


「ちっ、エレノア・マクガフィンという人物の戸籍は存在しないか」


 ジャックはテーブルの上に集めてきた資料を投げだす。ジャックが調べていたのはこの国の戸籍票だった。エレノアとマクガフィンの両方で該当する人物をピックアップしてみたがそれらしき人間は存在していなかった。


「エレノア・マクガフィンという名前自体が偽名だったか」


 元々隠れてこそこそとやっている人間が正直に名乗るとは思えないからその可能性もなくはなかった。


「もしくは国によって存在を消されているか……」


 生物の錬生は倫理の問題からどこの国も禁止されている。しかしそれでも手を出してしまうのが人間というもの。だから錬生術師の存在は秘匿されている。それに伴って戸籍も抹消されていてもおかしくはない。


「けどこの国にいる錬生術師は五年前の事件に巻き込まれて全員死んでいるはずだ」


 ジャックの言う五年前の事件とは王都で起きた魔物の襲撃事件だ。表向きは魔物の襲撃となっているが本当は錬成した魔物の制御に失敗したせいで王都に魔物が溢れかえったのだ。ジャックはその時に王都の研究所で魔物の処理をしたので裏の事情を知っていた。


「となるとこのエレノア・マクガフィンってやつは何者なんだ……」


 結局何の手がかりのない状況にジャックは苛立ち混じりにため息を吐くと頭を掻きむしる。


 サハギンの村でエレノアについて聞いてみたが下着の色とか胸のサイズの話だったりとろくな答えは返ってこなかった。断片的に話を繋げて何かの実験をしていたみたいだということがわかったぐらいだ。


 試しに似顔絵を描かせてみたが下着の絵か胸の部分を強調した絵しか描いてこなかった。顔について聞いても覚えていないらしい。


 ジャックがエレノアという人物について考えていると、ジャックから少し離れた場所からジャックの様子を窺う影があった。その人物はジャックをジッと見つめながら小声でぶつぶつと呟いている。


「ああっ! まさかこんなところで愛しのジャック様にお会いできるなんてこれはまさか運命! 神の与えた奇跡! そうに違いありません。何やらジャック様はお悩みのご様子。この光の聖女ことフィリアスがジャック様のお悩みを解決させてみせます。そしてそのあかつきにはジャック様から熱い接吻が……ぐへへ」


 口元からだらしなく涎を垂らすのはフィリアス・オブリージュ。今はだらしない顔をしているが普段はお淑やかな見た目と神々しさを感じさせるプラチナブロンドの長髪と佇まい、そして光のフォルスを扱うことから光の聖女と呼ばれるA級ハンターだ。


「おっとこうしている場合ではありませんね。さっそくジャック様にお声掛けしませんと……」


 口元の涎を持っていたハンカチで拭いジャックのいる席へと歩み出すが……。


「ぶへらっ!」


 何もない所で盛大に転ぶフィリアス。いや、正確には転ばされたフィリアス。フィリアスの履いていたヒールがは地面とくっつくように凍らされていたのだ。


 フィリアスにはすぐに自分にこんなことをした人物が誰だかわかった。というより自分にこんなことをする人間は一人しかいない。


「これはどういうおつもりですかココさん」


 転ばされたフィリアスは上品な笑みを浮かべながら自身を転ばせた人物の顔を見る。表情とは対照的にその目はまったく笑っていない。


 フィリアスの視線の先には無表情を浮かべた青い髪の少女の姿があった。彼女はハンター達の間で絶対零度と呼ばれる迷宮ハンターで、フィリアスと同じA級ハンターでもあった。


 そのココと呼ばれたA級ハンターの少女は淡々とした口調で告げる。


「……ジャックは私の夫となる人。あなたみたいな泥棒猫はジャックに近づけないのは当然のこと」


「あらあらおかしいですね。あなたのような人がわたくしを差し置いてジャック様の伴侶になろうなんて一〇〇年早いんじゃないかしら」


 光のフォルスの力で凍りついたヒールを瞬時に溶かし立ち上がると彼女は豊満な胸を強調するように立ち未成熟な胸を持つココを挑発する。


「……そんな脂肪の塊なんかにジャックはこだわらない。大事なのは感度だから」


 とココも胸を張り返す。


「……それに私はジャックと手を握ったこともある」


「て、手を!? なんて羨ましい。ですがわたくしはジャック様におでこに手を当ててもらったことがあります」


「……むっ。ずるい。けど私はジャックにおんぶしてもらったことがあるもん」


「わ、わたくしだってジャック様にお姫様抱っこをしてもらったことがあります」


「……」


「……」


 張り合う二人は明らかに敵意をむき出しにバチバチと火花を散らせる。そして真っ先に動いたのはココ。


「……あなたの相手をしている暇はない」


 そう言ってココはフィリアスに背を向けジャックの元へと駆けていく。もちろんその際に氷のフォルスを発動してフィリアスの周りに氷の壁を構築させ動きを封じる。


「……アイスウォール」


「……っ! 卑怯です!」


 そう言いながらもフィリアスは氷の壁を一瞬で溶かし、ココ目がけて光のフォルスを発動させる。


「ホーリーランス」


 ココに向けて熱量を持った光の輝く槍が投げつけられる。ココはそれをスッと横によけてかわす。しかしそれをよけたせいでフィリアスの放った光の槍はジャックへと向かっていく。


「あっ」


「……あっ」


 しまったという顔をする二人。


「ちっ」


 エレノアについて考え事をしていたジャックは迫りくる槍に気が付きフォルスを発動させようとするが……。


「キーンエッジ!」


 どこからともなく現れた白銀の刃が光り輝く槍とぶつかり相殺する。


「大丈夫なのかジャック」


 相殺されたのを確認してマジーナがジャックの元へと駆け寄ってきた。


「ああ、おかげで助かった。でもどうしてもお前がここにいるんだ? 今日は休みだったはずだが?」


 ジャックとしてはどうしてマジーナがここにいるのかわからず訊ねる。今日はジャックがエレノアについて調べるために休みとしてはずだ。


「それは……」


 マジーナは自分がここにいる理由を思い返し言葉に詰まるのだった。


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