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13話

 それから数時間後。マジーナとサハギン族の戦士達は大蛇(サーペント)を迎え撃つために村の入り口に集結していた。その数五〇。


 タマオ以外のサハギン族がマジーナを見つけるなりセクハラ発言をしてきたがマジーナはそいつら全員に目潰しをお見舞いしてやった。たった数時間でサハギン族の扱いには手馴れてきたマジーナであった。


 マジーナとしてはこんな状況でセクハラをしようとするサハギン族にあきれていたが、おかげで緊張がほぐれていた。


 そしてそうこうしているうちに大蛇が村へやってきた。


 ズルリズルリと地面を這う音が聞こえてきたかと思うと道一杯に広がる大蛇の群れ。マジーナがざっと見た限り三〇〇はいるだろうか。大蛇は速度を落とすことなく真っ直ぐ村へと攻めてきている。


「爬虫類が魚類なめんじゃねーギョ!」


 タマオのその号令によってサハギン族は大蛇に向けて突進を開始する。彼らは手に二股の槍を携え果敢に突進する。


 サハギン族にはどうやら陣形という概念がないようでただひたすら目の前の敵を攻撃するというシンプルな、悪く言えば戦術もクソもない行き当たりばったりな戦い方だ。個々の個性が強いサハギン族には連携と言う概念は薄いためそれは仕方のないことだった。


 マジーナはそんな前線で戦うサハギン族から少し後ろに離れたところでフォルスによる援護を行う。脅威の生命力と回復力を持つサハギン族とは違いマジーナは大蛇に噛まれただけで致命傷になってしまうための配慮だ。


 そして戦いが始まり数十分が経ち、戦況はサハギン族が有利といったところだった。


 元々大蛇はそこまで強くはない。ジャックの場合は毒にやられたが大蛇は本来なら毒など持たない魔物なのだ。単純な戦闘力でいえば少し大きな蛇でしかない。成人した大人ならフォルスを使わず武器があれば倒せるほどだ。


 だからちょっとした毒ならものともしないサハギン族ならば大した脅威ではないのだ。数が多いのが厄介だったがちゃんと対策をとって戦えば何の問題もない。マジーナのフォルスによる援護もあり順調に敵の数を減らすことに成功していた。


「このままいけばなんとかなりそうなのだ」


 戦況を見てマジーナはそう判断する。


「ギョギョ! それはマズイフラグだギョ」


 マジーナの呟きにタマオは嫌なものを感じる。


 そしてその予感は的中する。


 大蛇の数がだいぶ減り残り数十匹になった時にそれが現れた。


 大蛇の群れをかき分けてやってきたのは一匹の蛇。


 大きさは大蛇とあまり変わらないが、その見た目は大蛇よりも禍々しい。闇を思わせる真っ黒な体躯に頭の辺りには王冠のようなトサカに真紅の眼。


「あれは……」


 マジーナはその存在を目にして自分の目を疑う。あれはこんなところで出くわすような魔物ではない。未開拓地(フロンティア)の奥地や迷宮(ダンジョン)の奥底にいるA級ランクの危険モンスターなのだから。間違ってもこんな森に現れる存在ではない危険種。


「……バジリスク」


 現れてのは蛇の王者と呼ばれるバジリスク。


「最悪ギョ」


 バジリスクの登場にタマオはこれまでにないくらい顔をしかめる。


 しかしそんなタマオの心中など知る由もないバジリスクは近くにいた若いサハギン族へ襲い掛かる。


「なんだギョ? 見たことのない蛇だギョ?」


 若いサハギン族はバジリスクのことを知らずに撃退しようと槍を振るう。


「やめろギョ!」


 若いサハギン族の行動に声を荒げるタマオ。


 だがタマオの声は遅く、若いサハギン族はバジリスクに向けて槍を繰り出していた。


 バジリスクへと真っ直ぐ突き出された槍だったが、それはバジリスクへは届かない。バジリスクの身体に触れる前に槍の先端が溶けたのだ。


「ギョ?」


 槍が溶ける。あまりに不可解な出来事に若いサハギン族は目を見開いて驚く。


「さっさと槍から手を離すギョ」


 切迫したようなタマオの声に若いサハギン族は慌てて槍から手を離そうとするが、一足遅かった。


 溶けた槍の先端がどんどん侵食していき柄の方まで溶けてきたのだ。そして握っていた手にまでそれが及ぶと若いサハギン族は悲鳴をあげて苦痛に悶え出した。これまでのマジーナが攻撃して悶えるのとは違いふざけた様子はなく本気で悶えている。


「どうしたのだ?」


「バジリスクの毒だギョ! やつは攻撃されると周囲に侵食する猛毒をまき散らして防ぐギョ。やつの毒に触れたものは全て溶かされるギョ」


「噂には聞いていたがあそこまで瞬時に溶かされるほど強力だったなんて知らなかったのだ。あのサハギン族は大丈夫なのだ?」


「普通の人間なら触れた瞬間に即死だギョ。サハギン族でもあの毒を克服する三日はかかるギョ。……いや、あの程度なら数時間程度で済むかもしれないギョ。もっともそれまで死んだ方が幸せだと思うほどの激痛に襲われるギョ」


 その痛みを知っているのかタマオは苦々しい表情を浮かべる。


 そんな痛みを味わっている若いサハギン族にバジリスクがゆっくりと近づこうとするがその前に別のサハギン族が回収して後ろに下げる。


「じゃあどうするのだ? バジリスクを倒すにはバジリスクが猛毒を発する前に倒すか氷のフォルスで無効化させるしか方法がないって聞いたのだ」


 マジーナの言う通りバジリスクの猛毒は脅威だが討伐の仕方は確立されている。


 完全に不意打ちでバジリスクが毒を周囲に発する前に倒す方法がその一つだ。バジリスクもいつも猛毒を発しているわけではない。でなければ食事もろくにとれないからだ。しかしバジリスクが毒を発する現在では意味がない。


 となるともう一つの氷のフォルスで無効化させるしかない。変温動物であるバジリスクは体温が下がると冬眠状態になるため毒も一切機能しなくなる。この方法が確立されてからはバジリスクの脅威もだいぶ落ちてきて危険度もAランクからBランクになるのではないかと言われている。ちなみにこの無効化状態で倒したバジリスクの肉は毒がないので食べることも可能になる。一部の好事家には人気があり珍味として食される。


「打つ手なんてないギョ。でもこの先に村がある以上こいつを野放しに出来ないギョ。こいつが村まで来たら俺っちがせっせと集めた盗撮コレクションが溶けてしまうギョ」


「そこは村の仲間を心配するところじゃないのだ!?」


 戦う理由がゲス過ぎて思わずマジーナは突っ込む。


「村の連中はバジリスクの毒じゃ死なないから別にいいギョ。でも俺っちの撮りためたコレクションは失ったらもう二度と戻ってこないギョ」


 クッと悔しそうに拳を握り締めるタマオ。他のサハギン族もタマオの意見に同意しているのかそうだと頷く。


「よく言ったギョタマオ! それでこそ私の息子だギョ! ジャック殿の盟約のせいで人間の街にはいけない以上我々にはもう盗撮する機会はあまりないギョ。あれを失ったらパンツを拝む機会がなくなるギョ。皆の者、こうなったら意地でもこいつをここで仕留めるギョ!」


 族長であるタマギンが声を荒げ宣言すると他のサハギン達も決死の覚悟を決める。


「動機が不純なのだ」


「全員で一斉にかかるギョ!」


 お宝を守るために一丸となったサハギン族達はバジリスクへ一斉に攻撃を仕掛ける。


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