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11話

「村まで行けと言われたが、村はどこにあるのだ」


 さっきはジャックに自信満々に任せろと言ったが、村の場所がわからず途方に暮れるマジーナ。


 ジャックに聞こうにもジャックはすでに気を失っていて聞くことはできない。ジャックを背負って見知らぬ場所をうろうろするのは危険だ。大蛇もまたどこからやってくるかわからない。かといってジャックを置いて探すわけにもいかない。


「……っ!」


 寝ているジャックが声に鳴らないうめき声をあげる。毒の影響か、ジャックの額からは脂汗が出ており相当つらそうだ。


「早くなんとかしないといけないのだ」


 自分のせいでジャックがこんな目に合わせてしまったと思い悔しさで涙が出そうになるがそれを堪え考えを巡らす。そんなマジーナの元にあの男がやってくる。


「パンツーパンツーパンツが見たーいー! しましまパンツにひらひらパンツ、真っ黒パンツはエローイ、でーもでーもやっぱパンツは白がいちーばーん!」


 マジーナの元に変な歌を歌いながらやってきた人物……もといサハギンはこの騒動のある意味原因でもあるタマオであった。


「あっ! いたギョ。お前ら俺っちを置いていくとか酷いギョ」


 タマオはマジーナを見つけるとトテトテと近付いてくる。


「げっ! お前はさっきの変態サハギンなのだ」


 タマオを見てマジーナは嫌なものでも見たかのようなリアクションをとる。実際嫌なものなのだが。


「ひどい反応だギョ。でもそれもまたたまらない快感だギョ」


「……」


 やっぱりこの生物とは仲良くできないなと確信するマジーナ。だが今はそんなことを考えてる場合じゃない。ジャックを早く村まで連れて行かないといけない。


「……そうなのだ」


 マジーナはタマオを見て閃く。


「突然手を叩いてどうしたんだギョ? スパンキングの練習かギョ?」


「お願いなのだ! 近くの村まで案内して欲しいのだ。ジャックが大変なのだ」


「ジャックがどうしたんだギョ?」


「ジャックが毒にやられて大変なのだ」


「ギョギョギョ。それは大変だギョ」


 と大袈裟に驚くタマオだがジャックのことだから毒程度では死なないと確信している。しかしタマオと違いマジーナはジャックのことが心配で仕方がない。


「そうなのだ! だからすぐにでもお医者さんに診てもらいたいのだ。ジャックに万が一のことがあったらわたしは……わたしは……」


「わかったギョ。村まで案内するギョ」


「助かるのだ」


「ただし、条件があるギョ」


「条件?」


 村まですぐに案内してもらえると思ったマジーナだがまさか条件をつけられるとは思ってもおらずやや驚く。


「当然だギョ。世の中ギブアンドテイクだギョ」


「わ、わかったのだ。わたしにできることなら何でもするからジャックを助けてほしいのだ」


「ほほう、何でもしてくれるんだギョ?」


「あ、ああ。出来る範囲でなのだ」


 下卑た笑みを浮かべるタマオにマジーナはどんな要求をされるのかと警戒する。


「ならパンツを見せてもらうギョ」


「なっ!」


 あまりにゲスな要求に唖然とするマジーナ。


「どうしたんだギョ? 何を躊躇う必要があるんだギョ? 何でもするって言ったのはお前だギョ。それとも、ジャックを助けたいという覚悟は嘘だったギョ?」


「違うのだ! 嘘ではないのだ」


 嘘ではない。嘘ではないのだがマジーナとしてはやはり目の前の変態生物に下着を見せると言うことに抵抗がいささか……いや、かなりある。


「じゃあ早くみせるギョ。ただしスカートを脱ぐんじゃなくゆっくりと焦らすようにスカートをめくりあげるんだギョ」


「……っ」


 だんだんとエスカレートするタマオの変態的要求には答えられないと思いを突っぱねようとするマジーナだが、苦しんだ表情を浮かべるジャックの顔が見え考えを改める。


 ジャックがこうなったのは自分にある。自分が油断をしなければジャックが傷つくことはなかった。自分の下着を見せるだけでジャックが助かるのだとしたら安いものだ。


「わかったのだ。下着を見せればいいのだな」


「そうだギョ。早くしないとジャックが危ないギョ。あっ、でもスカートをあげるのはゆっくりじゃなきゃダメギョ」


 よくわからないこだわりをみせるタマオの指示に従いマジーナは羞恥に悶えながらゆっくりとスカートの裾を持ち上げる。


「おお!」


 スカートの裾が持ち上げられマジーナの健康的な太ももがあらわになる。雪の様に白く陶器の様になめらかな肌、それでいて女性的なやわらかそうな太ももに思わずしゃぶりつきたくなる衝動に駆られるタマオ。


「いや! 挟まれるのも魅力的だギョ」


 あの太ももに自分が挟まれるのを想像して興奮するタマオ。


「……くっ」


 マジーナはそんなタマオに見られて屈辱的な表情を浮かべる。


 そしてゆっくりとゆっくりとスカートの裾が上に持ち上げられていく。もう少しで下着が見えてしまう。そんな時、タマオから制止がかかる。


「もう十分だギョ」


「え?」


 タマオの予想外な台詞にマジーナは驚きスカートの裾から手を離す。


「どういうことなのだ」


「こう見えても俺っちは誇り高いローアングラーだギョ。パンチラを脅してみるなんてローアングラーの矜持に関わるギョ」


 ローアングラーの時点で矜持もクソもないのだがタマオなりにこだわりがあるようだ。


「だったらどうしてこんなことを」


 もっともなことをマジーナが訊ねるとタマオはドヤ顔で答える。


「お前の覚悟を試すためギョ」


「試す?」


「俺っちサハギン族にはこういった言葉があるギョ。パンツ見てせざるは勇なきなり」


「なんなのだその変な格言は」


「ぶっちゃっけサハギン族は人間族のことを信用していないギョ。なぜ俺っちサハギン族は全裸なのに対して人間族は服を着ているのか? それはやましいことを隠しているからだギョ。俺っちっちは自分の気持ちを素直に言葉に出すけど人間族は嘘をついて誤魔化そうとするギョ。だからパンツという人間族が見せられるぎりぎりのラインを見せてくれないと信用しないギョ」


「……な、なるほど」


 思っていた以上にまともなことを言うのでマジーナはほんの少しだけ感心する。


「お前のジャックを助けたいと言う言葉は本物だったギョ。村に案内するからついてくるギョ」


「わかったのだ」


 ということでマジーナはジャックを背負いタマオのあとについて行く。


 それから歩くこと一〇分ほどで村についた。正確には村というよりも集落と表現した方がしっくりくる。湖に隣接するようにあるその村は建物といった建物はあまりなくあるのはテントがほとんどだ。まるで遊牧民の集落に近い。


「俺っちサハギン族は基本的に湖の中で生活するから家を建てないんだギョ」


 村を見て本当に村なのか疑わしそうにしているところにタマオが説明する。


「あのテントは周囲を警備する兵士が休む場所だギョ。あとはたまにやってくる人間族が使うギョ」


「ふーん。なんだか慌ただしい雰囲気なのはいつものことなのだ?」


 村に入るとさっきからサハギン族が慌ただしく右へ左へと動き回り落ち着きがない。初めて村にやってくるマジーナとしてはいつもこんなのかと思い質問した。


「おかしいギョ。いつもは下ネタの話しかしてないのに今日は騒がしいギョ」


「……」


 それはそれで嫌だなと思うマジーナだがこういう種族なのだと諦める。


「あっ! 親父、どうかしたんだギョ」


 タマオが近くを通りかかった髭面のサハギンを呼び止めた。


「ん? タマオギョ。帰ってきていたのかギョ」


「さっき帰ってきたギョ。それよりバタバタしているようだけどどうしたんだギョ?」


「うむ、少々問題が起きたギョ」


 と深刻そうに顎に手を当てるタマオの父。そしてタマオの父はマジーナの存在に気が付く。


「おや? ところでそちらの可愛らしいお嬢さんは誰ギョ?」


「ジャックの連れだギョ」


「なんと、ジャックさんのお連れさんだと」


「どうも、マジーナです」


 話題にあがり自己紹介するマジーナ。


「これはこれは、わたしはタマオの父であり族長のタマギンですギョ。さっそくで悪いのですがお嬢さん、パンツを見せてもらってもいいですギョ?」


「キーンエッジ」


 いきなりのセクハラ発言にフォルスを発動させるマジーナ。


「ギョえー」


 ブスリと白銀の刃が身体を貫くがもちろんタマギンも大したダメージではないようで数秒としないうちにコロッと起き上がる。


「うーむ、やっぱり美少女に串刺しにされるのはたまらんギョ」


 そうコメントを残すタマギン。


「それよりも早くジャックをお医者さんに診せたいのだ。お医者さんはどこにいるのだ」


「残念ながらうちの村には医者なんていないですギョ。我々は怪我や病気もすぐに治ってしまうからギョ」


「そんな……」


「けどその代わりに特効薬の研究をしている研究者が一人滞在しているギョ」


「研究者!? お願いなのだ。その人にジャックを診て欲しいのだ」


「ふむ、お願いをするのならそれ相応の覚悟をみせてもらうギョ。例えばパンツを――」


「あっ、親父。それはもうやったギョ」


「なんと! うらやましい」


「いい表情だったギョ」


「わたしも見て見たかったギョ」


 とそんな会話を続ける親子にマジーナは少し苛立ち混じりに言う。


「そんなことよりも早くジャックを診て欲しいのだ」


「そうでしたギョ。ではあそこのテントで休んで待っているといいですギョ。研究者の先生を連れてきてますギョ」


「助かるのだ」


 そう礼を言ってテントで待つことにするマジーナ。


 テントの中は広くジャックとマジーナ、それとタマオの三人が入っても十分にスペースに余裕がある。


 マジーナはジャックをテントの真ん中に寝かせ研究者が来るのを待つことにした。


「つまらんギョ」


 テントに入ってまだ一分も経たずタマオがそうぼやく。


「……そうだギョ」


 タマオは何か思いついたようでマジーナに近づき方をちょんちょんと叩く。


「何なのだ?」


「ジャックは喉が渇いているかもしれなから水を飲ましてやるといいギョ」


「水? 確かに汗もかいているいたし水分はとった方がいいのだ。水はどこにあるのだ?」


「あそこの瓶の中にあるギョ」


 テントの片隅に置いてある瓶を指差すタマオ。


 マジーナはタマオの指差した瓶から水を手ですくいジャックに飲ませようとするが……。


「あれっ? どうやって飲ませたらいいのだ?」


 水を飲ませようと思ったが、ジャックの口は塞がっており水を飲ませることができない。水差しのようなものない。どうしようかと悩んでいるとタマオがマジーナの耳元で囁く。


「口移しで飲ませればいいギョ」


「なっ! く、くちゅうつゅちでだと!?」


「動揺しすぎギョ」


「動揺なんかしてないギョ!」


「口調がうつってるギョ」


「……うぐっ」


 図星を突かれて反論できないマジーナ。


「別に恥ずかしがることじゃないギョ。これは立派な医療行為ギョ。何も悪いことではないし変なことではないギョ」


「医療行為……」


 確かにそうだ。喉が渇いている患者に水を与えるだけのこと。別にこれはキスとかそういうのではない。ではないのだが……。


 葛藤するマジーナに悪魔はさらにささやく。


「そうだギョ。ジャックは自分で水分を取ることのできない状況なのだから口移しで飲ませても仕方のないことだギョ。溺れた人間に人工呼吸をするのと変わらないことだギョ」


「仕方のないこと……人工呼吸と変わらない……」


 そうだ。これは仕方のないことなのだ。このままではジャックが脱水症状になってしまう。自分がキスをしたいとかそういったやましい気持ちは一切ない。


「……よし」


 マジーナはそう決意し、水を口に含みジャックの唇へと自身の唇を近づけようとする。顔を近づけた際に垂れた髪がジャックの顔にかかり髪をかきあげる。


「うギョー!」


 必死に声を抑えながらタマオはなんとも言えないシチュエーションに興奮する。


 もうすぐマジーナの唇がジャックの唇へ差し掛かったところで、テントの中に誰かが入ってくる。


「あら? お邪魔だったかしら」


 やってきたのは群青色の髪を後ろに束ね白衣を身に纏った二〇代前半ぐらいの妖艶な女性。上は谷間を強調するようなタンクトップのような格好で下は黒タイツという姿にタマオの目は釘付けになる。


「ぶふっ!」


 一方のマジーナは突然の来客に思いっきり吹き出し口の中にあった水をジャックの顔面に吹きかけたのであった。

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