三話 アイドルハイエルフのスペシャルライブ①
異世界美少女達とスローライフ
ノーム側から寄越されたスマホによって、アプリを使い込んでは暇つぶしもまあまあに、そこそこ自宅での生活に慣れてきた。
夜は出来るだけゆっくりしたいので、敢えてローソクに頼った生活を続けているが、そこでの酒は格別だった。
ビールや地酒もいいかも知れないが、ワインやチーズの他に健全なモンスター肉と、それなりに控えた内容ながら時間が溶ける。
異世界文字も多少は読めるようになったし、マーフィンさんもケーキをたまにくれるし、酒も安めな割に充実していた。
またモンスターといっても、街の外やダンジョンの瘴気で凶暴化した者で、狼や鳥等を中心に一部は家畜化されていた。
瘴気もそれを除去する方法があるらしく、具体的には分からないにしても、腐食防止加工も充実しているのだろう。
だから酒のつまみや料理等にも向いていて、それすらもトレース済みなので、意外にも割と質のいい生成食材でも充分だった。
朝になって洗濯や買い出しも済ませて、家でゴロゴロしたりと何とかやっているが、元来の引きこもり体質が帰ってきていた。
そこそこに慣れて居ついて仕舞えば、どうしても緩んできて外へ出るのも苦になって来て、もうずっと引きこもっていたい。
それでも恩人のマーフィンさんにも、また家屋建築の件や快適な活動環境が充実していて、無理にでも外に出ようと思う。
午後になって仕事の為に店へ向かうが、その途中に誰かがいたので見てみると、やたらフリフリしたハイエルフの美少女がいた。
僕はあの天使の様なハイエルフをみて、どうしようかと通りすぎようとしたが、フワフワした声が僕に突き刺さった。
天使の様にフワフワしたハイエルフは、衣装のパーツを無くして慌てながら、その場で辺りを見廻して困っているらしかった。
何故かその場から離れようとすらしない当氏に、僕は然りげ無く来た道を戻ってみたり、当氏の向こうを見たりした。
なんかそれらしい物が落ちていたので、駆け寄ってから拾ってよく見たあと、僕はそれを当氏にお返ししていた。
「これですか」
「そーですぅ」
言葉のひとつひとつが甘フワい声でキモチイが、ヒラヒラした格好といい、ツヤツヤとキラキラした眼が僕を見つめる。
「おっ、おおぅぃぇい……」
観ても聞いても何処までもキモチイ当氏は、僕が観ても厭がるどころか、ツヤツヤとフワフワしたままに辞儀をした。
「見つけて戴いて有り難う御座いました」
「あっ、いいっ、いえ」
やはり普通に口をききたくとも、すんなりと発する事すら困難にして、どうやっても相手の反応が恐怖で堪らない。
先方の当氏は そんなことは無さそうだが、誰にしても僕の言葉を丁寧に聞く人が多く、苦にしながらも頭が上がらない。
こんな事すら困難にして苦になるくらいだから、対人環境からはどうしても離れようとして、それが元の世界で足掻いた要因のひとつだった。
丁寧な辞儀をしたと思うと、近いうちにライブをやるからと宣伝して去っていく、名も知らないハイエルフの美少女。
これが当氏美少女ハイエルフとの、一番最初の記念すべきはずだった、初対面のイベントにして全ての始まりでもあった。
少し遅れるようにして『Aille』に、裏口から所定の位置に来るとパッフェがいて、やはり猫のように擦り寄って、僕にマーキングしているのか。
マーフィンさんが気づいて参られると、やはり多忙な中に在って、パッフェのイレギュラー的な行動には目もくれなかった。
更にこれから僕の生成したオヤツ達が、更にマーフィンさんを忙殺するのかと思っても、指定された商品をクリエイトするだけだった。
僕が生成出来るものから曜日別に出す物を一部極めて、定休日以外の土日祝に当たる日は、かき入れで更に忙しくなる。
また僕の発案で季節があると確認したら、それに合わせた限定商品も出すことになって、僕やパッフェも新商品のアイデアを出してみた。
因みに今は春風が吹いているから、桃を使ったパフェの案を献上したが、生クリームが桃味で桃の切り身も盛っている。
これなら一度トレースさえすれば、生成石の有無次第でいくらでも、ほんの数秒程で生成出来るからレベル次第ではもっと早いだろう。
家でも僕一人で作れるし、直ぐにホールへ提供する事も可能でありながら、マーフィンさんの作業も軽くなるかも知れない。
いや、もう既にそうなっているから、僕は客が来る限り生成石が在る限り、生成しまくる覚悟でいたが定時にはあがるしかない。
パッフェのパフェは生クリームに魚肉ソーセージと、独創的でありながら、細かくしたソーセージがアクセントになっていて面白い。
これもパッフェに云ってトレースさせて貰ったから、これも直ぐに出せるのみならず、一人でも家で創れてより充実してゆく。
このふたつも看板商品として機能するし、僕がいる間は店が負担してくれれば、何時でも幾らだって創りまくった。
その合間に僕はここへ来る途中に逢った、美少女ハイエルフとそのお顔を思い出しては、作業に集中し直しながら仕事を終えた。
毎日日課にしてみてください。




