二話 スマホすら無くて暇すぐる②
文字も読めない人脈も大したスキルも無いが、元いた世界での一週間で、まあまあなくらいに生成可能になった物が増えた。
有り難い事にいい歳こいたナンカが、まさに子犬のように拾われて以来、今の店でとにかく生成石をオヤツの材料に変えている。
マーフィンさんの店『Aille』で、あらゆる原料をトレースしながらストックして、生成可能アイテムと各レベルが増えた。
しかし、家が建つと僕は暇だったから、それっぽい店に入って日用品等を物色したが、その割に洒落たものが多かった。
一度幾つか必要最小限に支出をコントロールして、それでも中級コストで手を打てるし、一度買って仕舞えばトレース出来る。
物価に対してバイトでたりる経済レべルは、元いたセカイでは非常にロマンチックで、僕の場合は手間が若干省ける。
特に自宅での食事や消耗品はトレース済で、レベルがそれなりになっているから、完成品をダイレクトに生成可能だった。
ただ、生成石の購入がやや面倒で、もっと大きな街へ出ないと買えないし、コストもそれなりにかかってそれ程持ち帰れない。
いつも通りに出勤前後は微妙な時間で、スマホの充電くらいは多少でも出来そうだったが、特にやることも無くなって仕舞った。
元いた現実世界の様な時計が一切無いし、ゲームは出来ても漫画も無い上に、この世界の文字が一切読めないのは少々不便だった。
そして店の裏では食材やらなんやら、スキルデータに無い物をひたすらトレースしては、とにかく生成しまくっていた。
終わる頃には十五レベルまで上がっていて、作業中はスキルポイントが回復したから、何とか在庫分を補充出来た。
店長から報酬を受け取ったが、千モッフン程の通貨分を獲得して、頭の上がらない僕はまだ手渡し支給で受けていた。
店長も店員も美人と美少女猫なので、
用が済んで仕舞うとちと惜しいが、スキルで出来ることが増えたのは頼もしい。
家に帰った僕は封筒の中身をあらためて、毎度のように確認しては神に捧げるようにしては、適当に夕飯を生成した。
敢えて電気を買わなかったからライトが一切ないが、買っておいたロウソクやマッチで代用して、被災地のような生活を何とか凌いでいる。
上がる直前にマーフィンさんが持たしてくれた、ケーキとマカロンをやって水出しのコーヒーも出しては内容を確認する。
ロウソクの火は紅く灯ったまま、炎の形状を一切変えないその容子は、月明かりと宵闇のコントラストに僕を彷徨わせた。
少し疲れていた僕は窓の方に移動さて、二階の窓から観えた夜空は、抉るようでありながら閑散と星が光出すのを待っていた。
少し街の向こうではブロジェクトマッピングだろうか、あの『ギミックノーマ』の開発部か、それらしい実験を繰り返しているのだろう。
光っては消えて消えては別の色になって、カラフルな映像が映写機からか、建物に向けてライトが踊っている様で有意義だった。
酒場の密集エリアもまだ営業中で明るく、あの老夫ドワーフ氏と呑んだのを、僕は思い出さずにはいられなかった。
思えばあの御方のお陰でこの家が建って、ノーム族の人々ものをスマホを解析しては、新たな技術を開発している。
このセカイは僕のスマホによって、アナログ環境からデジタル環境へと、少しずつだがあっという間に変化して往く。
僕はあの粗暴にも思えたセカイから、この世界に転移して良かったのだろうし、若干窮屈でも変化の速さには期待している。
それと僕が持っていたスマホをあずけてから、僅か三日くらいだっただろうか、例の営業さんが似たようなスマホを持ってきた。
「インターネットでしたか、その関連でもう少しお借りいたしますので、良かったらこちらを……あっはい、お使いいただければ……あっはい、はい、では……」
去る直前に営業氏は二階を見上げては、あのカァーヌボォーゥなあいさつなのか、僕の名前を叫んで営業車でお帰りになった。
その時に受け取って以来の今持っているスマホに、気になるアプリが入っていたが、今までスルーして仕舞っていて見向きもしなかった。
どうせ文字も読めないしスパイウェアにも見えて、どうしても起動出来ないでいたが、興味本位で間違えてタップして仕舞った。
なんだか音声が聞こえる様なので、ボリュームを上げてみたら、何度も同じ事を云っている。
どうやら翻訳アプリらしかったが、文字にカメラを向けろと謂うので、僕はまた外へ出て何処か看板に向けてみた。
もう暗くなっていてあまり良く見えないのに、数秒向けただけでその言葉自体と、それを日本語で説明された文がずらりと並んだ。
「おーぃえ? イッパイよ? 」
カメラ機能を利用した翻訳アプリで、ノーム製のそれは現代科学を軽く越えて、より便利になっていたから声が出ちゃうw。
更にもうひとつあった方のアプリは、開けて見ればなんということはない、この世界の言葉を学習出来るものだった。
それに分かりやすく直観的な操作で、文字の個別な読み方が分かるし、成長段階に別れてレベル分けもされていた。
言語問題で他も足も出せない状態の僕には、喉からでが出そうなくらいに、大変有り難い物に見えたから助かった。
「おーぃえ? まんずで?」
どうやって日本語が繰り出されるのか、"技術的"と謂うよりも"文化的"に、別世界のうちにあるひとつの言語を知ったのか。
自宅が建った時点で異常に早いが、スマホの試作やアプリ開発に 日本語表記と、聞き取り可能なのに読み書き不可の謎も在る。
こちらのアプリでもやはりどうしても、僕は我慢を忘れてはニヤニヤして、ちょっぴり恥ずかしいけど声が出ちゃうっ。
ノーマの開発部からの有り難い贈り物であるのは、間違いがないどころか、一応は使用した上で少しでも慣れようと思った。
おそらくメモ帳も簡易のものがあるだろうと、スワイプしてみたら見つかったので、それに解説内容などをコピペしてみた。
家にはいってもニタニタしたまま、どうにもとまらない僕は、明日からあまり困らないかも知れないと安直な事を考えた。




