十三話 まさかの聖剣士が単騎で参られた
異世界の魔王に転生したので世界を支配します
「んっ、ちゅっ、キス……キモチイ」
「あたしにも、させろよっ、えろおっ、ちゅぴっ」
「あしゅらさまぁん、ん~っ、へへっ」
「アシュラ様、ギュッ、ンフフッ」
「ご主人様ぁ、ああっ、キス、んむっ、ちゅっ」
スイートデビルにライラやブラックキャット、スカーレットにファントムとナイスなばでぇを甘く圧し着けては舌を絡めて甘え合う。
ブレイズもシャーベットもコッソリと僕に触って、その手つきがソワソワと甘くて、アッチもコッチも悪魔的に優しくてキモチイ。
そこへハワードがピシリと爽やかにも、何処か何となく焦っている容子で何事かと思わせたが、絡まった容子は何時も通り気にしていない。
「御報告が御座います、たった今猛スピードで城に向かう者が接近していると伝令が参りまして、それがまさかの聖騎士だと云うことを承りました。」
僕は基本的にトークが出来ないが、城の者たちはそれを承知でいてくれているから助かるが、今はそんなことに拘っていられない。
仮にも聖騎士となれば属性も闇を討つ聖属性なら、もしかしたらこの魔王である僕ですら、苦戦を強いられるか下手をすればやられるか。
ミカエル=テューダー=ハプスブルク、それはテューダー朝の者かまたはイタリア系とスイス系か、トキの王族や大貴族の家名まで付いてきたか。
それはまだいいとしても、猛スピードで接近しているのなら野良の戦闘員等はどうなったか、それもたった一騎で切り散らかすのか。
きっとレベルも限界突破もカンストしていて、魔王になりたてで無理無くコツコツやってきたから、その聖騎士君と比べて大して強くない気がするっ。
すこぶるマジィと流石に魔王の立場を忘れたか、メンタル最弱の僕はパニック気味に、迫り来る脅威とどう戦えば佳いかと迷ってしまった。
ハワードもそれを察してか全てを承知に、幹部の者たちで首を寄せ集めるためか、緊急召集をかけると急いで急務に向かっていった。
確かに手を打ってはいるといっても、これ程までの危険が迫るとは思ってなかったし、どちらかというと効率性重視だから結果が恐ろしい。
それにしてもいくらスキルや魔法が聖属性にして、回復も装備も充実させているだろう、その単騎で参られた聖騎士はまさに天敵だろう。
責めて少しくらいは苦戦させたいが、もう城に迫ってはリリスのメイド隊やその警備部も侵入も許すか、それなら場内で総力戦に持ち込んでみようか。
何時も神経衰弱気味に脳をパンクさせながらも、どうにかこれまでやって来れたが、もう潮時さえも迫っているのかと絶望さえ迫る。
それに消滅したのか忘却せられるか分からない、野良戦闘員はどうなるのだろうか、またクラウザーやルガウルにハワードもどれだけ闘えるか。
特に先代魔王以前から勤める幹部たちは、これまでに幾度と死線を潜り抜けて、レベルもこれでもかと上げてきたのに相違無い。
確か以前に強化アイテムを使用したお思うが、その時点で既に三人のレベルが九百を廻っていたと、そうだったと僕は思い出した。
それと同時に限界突破直後のクラウザー、その豪傑にも頼もしいヤツのお顔が、別の限界も越えたようにフワフワしていたことも思い出した。
それに幹部といえばトキのリリス様だが、これまでも切り抜けては美をも維持し続けて、どうなっているのかと謎多くも、あの最高級美女が傷んだり亡滅してしまわないか。
とにかく総力戦だと緊急会議も即決して、迎え撃つはトキの聖騎士ミカエルと、例のフォーメーションをフル活用するしか無い。
僕も覚悟を極める必要が有るところ、メンタル最弱においてそれば“至難の技”とも云うべきで、こんな魔王によく就いてきてくれたと思う。
聖騎士という“死の権化”が間もなく場内に迫るか、僕の胃は締めつけられるように、もうあとは城の全てに任せながらも僕は来る時を待つ。
一方城の外では金色で装飾された銀色の鎧を着た金髪の青年が、背中の白いビロウドのマントをはためかせては、ゴブリンやオークを五月雨に斬り抜けた。
振り切って静止したと思うとゆっくりと立ち上がって、剣に附いた油や血を払って目を閉じると、集中を高めようとしてじっとした。
「魔王城は……何処だ……」
ここのモンスター達は何を云っているのか、少なくとも親族や俺の知っているモノではないし、気が散って堪らないが魔族の言語か。
「戦いたくなんかっ、無いのにィィィっ」
ゴブリンの一人がそう叫ぶと他の者にも、悲愴感や人間の無理解に対する怒りが、種族も関係無しに伝播しては普通に生きたいと謂っていた。
しかし人間でありながら日本語は、ある種の異世界語でもある上に現代においてもやや複雑か、当時の西洋人が知っていただろうか。
時代的にもまだ大航海すら達していないだろうし、日本とも交流があったとしても、幕府の永い鎖国体制もあって日本語は薄れたかもしれない。
因ってこの場の魔族や戦闘員達がいくら訴えても、通じないどころか遅れた民族性の野蛮人として、日本が見えていたとしても不思議では無い。
現代の国際化が進んで発展した世界では、むしろ異端として扱われるとしても、当時はまだ或る意味で偏見自在だったのは実に遺憾だろう。
僕が魔王に転生した影響によるだろう、現代の科学や価値観を一部持ち込んでいるようなモノで、青年としては想像も出来ないのに相違無い。
尚も聖剣『クルス・オブ・セイバー』は、青年の剣技に同調して魔界戦闘員を斬り伏せては、次々に血を流す魔族を青年と揃って一瞥する。
世界の時期的にもイエスの殉職後か、西洋世界をキリスト教が支配して帝政ローマの国教となったが、その使者が今度は魔界に参られたのか。
無双を究めては閑にも素早く的確に処理をすると、青年は剣を天にかざして少し詠唱を始めたが、実力的にクイックキャストくらいは覚えている。
魔界戦闘員たちは塞がらない口を開けたまま、立ち尽くすままにその眩しくも目に刺さる、詠唱の光に恐怖しながら絶望した。
ーー究極の大技だ、もう終わったーー
誰もが悟り抜いて諦めきったまま立ち尽くして、閑に滅ぶ瞬間を待つ容子を青年は、楽に済むとそのエクスバーストスキルの名を叫んだ。
「滅びてしまえ、魔族ども! ブライトス! デ! エクスカリバロス!」
「ぐぎゃああぁぁぁっ!」
「アシュラ……様あぁぁぁ……」
「ドゥルヴォエレロリェヴォアイエ」
魔界戦闘員たちは口々に様々なもの、苦痛や絶望に魔王への希望などを叫んでは、城の下層域のインテリア以外全てを消し去ってまって、誰一人としてその場にいなかった。
聖騎士はキリスト教徒にとっては救済主と謂えるが、魔族にとっては破滅を呼ぶ破壊王だと、遠隔的に監視魔法で視ていた僕は悟った。
下層の戦闘員達が一人残らず消えてしまって、これから魔界を改革の道へ進めて来たのに、その完成を視ずして消滅してしまったのか。
正当な教育を受けて文化も知りながら、まだ普及していなかった日本語はおろか、魔族への偏見と憎しみが下層戦闘員達を消してしまった。
まだ魔界の改革も健全化も完了すらしていないのに、僕たちは何も分からないままに、魔界ごと滅びるしかないのだろうか。
現代の現実世界でも迫害や五感への脅威に苦しんで、神経も精神も振り廻されては衰弱して、そのままに破滅を待つしかなかった。
何時だってそうだったと思い出したが、毎日必ず何かしらに怯えたままに内蔵の違和感も覚えて、どんなに足掻いても報われなかった。
この異世界でも魔界の魔王に転生した瞬間は、確かにショックを覚えて辛かったが、段々と城の者達が魔王だと思って僕に善くしてくれた。
それがアッサリと吹き飛ばされてまた破滅するのか、意外に幹部たちは頑張るかもしれないが、それでもアレを視てしまえば恐怖する。
城の者達や幹部達を信用していないわけではないが、万に一の兄弟なリスクが迫って、思ったよりゆっくりか聖騎士は中層へ上がってくるだろう。
そして監視魔法で視る聖騎士の青年は、天井を睨みながらきっと怨みの詰まった言葉を、閑に唱えているように僕には見えた。
「必ずコロス……、待っていろ……、魔王……」
いよいよ階段から騎士アーマーのブーツを軋ませる音が、ゆっくりと上がって来るのか、城の戦闘員達が階段を恐れ始めた。
破滅を呼ぶ“恐怖の災禍”とも謂えるその青年は、家宝と見える聖剣は青年を主として認めて、イエスの加護を受けるように輝いていた。
階段を上りきった青年騎士は中層域においても、また充分に聖力も回復させて、それても限界突破もそこそことは謂えそれなりの者達を、聖属性の利いた剣で華麗にも斬り続ける。
その両手で持つ聖剣を振り廻しながら、防御すら必要としないスピードや身体能力で、ひたすら圧倒し続けたのには震撼した。
下層域程に楽ではないのだとしても、背中とマントに隠れながら鎧の重量を感じさせない、それだけの実力者にしてレベルもほぼカンストか。
時折ダメージが効いたかと思われたが、それすらも鋭い眼光で戦闘員を刺すと、圧倒的なレベルの差があると悟り抜くしかなかったと見える。
戦いたくなんかないと城の警備だけで済むような、そんな世界を期待して配置に就いた、その戦闘員がジリジリと後にすり去る。
低層と同様にして全てのパーティも倒れて、空中戦力ですらまともにダメージを与えられないのは、スキルか何かで機動性も強化しているのか。
「ブライトネスミネルヴァ」
またしても何かのスキルを発動したか、圧倒去れながらも何とか持ちこたえる、その魔族達にまたひとつノーマルスキルで一個小隊を倒した。
各パーティ同士が更に連携を強めたのは、指揮官の信頼性に期待できると思われるが、そもそも当の聖騎士よりかは文化的に教育している。
そのせいも在るかもしれないが、若干程度にも積極性が欠けては一部の攻撃性も低下して、次々に倒される状況に戦慄するのだろう。
僕やブリトニーの教育体制は必要で、魔界も未来に向けて徐々にスマート化していきそうな、そんな期待をしたくなるくらいだ。
それをこれほどにもアッサリと粉々に、スマートにも粉砕するがごとく剣に倒されては、青年の眼光は冷たく流れて舞っていた。
そしてやはりまた例のエスクバーストスキル、『ブライトス・デ・エクスカリバロス』が、中層域の魔族戦闘員達を消し去ってしまった。
表出される映像から鑑定スキルを発動したが、やはりレベルは九千九百ナンチャラと、ステータスも全てにおいて冷徹な程だった。
スキルやそのレベルも判明したが、魔王の僕ですらソワソワして胃が苦るしくなるような、それ程の脅威が迫ってきている。
僕や幹部達も消してその青年に劣るわけではないが、しかし打ち消し合うような聖と闇は、相互に脅威となるかまさにどうなるか判然としない。
ただでさえも有志で集まっては訓練も乗り越えて、強化も限界突破も何度か済ませて、いくら中層域にしてもそれはあまりに非情だった。
インベントリから取り出したのか、いつの間にか青年はオレンジジュースと見えるそれを、壁沿いに座ってゆっくりと飲んでいる。
そのフレッシュにも弾けるような飲み物は、青年には似合っていながらも緩そうで、それもよく見たら炭酸まで効いているのか。
先までの冷徹なまでの容子は何処へ往かれたか、その風景は隅々にまで排他的に浄化を強制して、魔族の事情は一切加味されていなかった。
そして何かを思い出しているのか、もし親族や青年の関係者に何か在ったとしても、魔界を怨まれたって魔王は僕だからどうしよう。
ただし青年の腹事情や先代までの魔王への苦情は、文化的に化体系化されてきている、そんな魔界やこの社会で福祉を講じてもいい。
城の兵力として消えていった者達の関係者は、これでもかと怨むかも知れないが、それはまだ改革中で発展途上だからだ。
魔族と人間との間に戦いが有る限り、それは連鎖を続けて際限も無いから、世代が替わってもそれを意味も無く継承され続けた来た。
青年を理解しようと牙を向けられようと、どのみちにしても青年に劣らない幹部や、サキュバス軍団とセットに魔王の僕もいる。
ーーやむを得ん、受けて立つしかないかーー
遂に上層にまで中層到達と同様に現れた、やはりその聖騎士は冷たく斬り衝けるような眼で、その階層を観廻しては炭酸オレンジを飲む。
ーー飲みながら上がってきたのかゆ?!ーー
その容子をモニターしていた僕は、やや拍子抜けにも神々しいような青年を見て、惹き込まれながらも中層まで蹴散らしたヤツだと思い直した。
城の上層ともなると幹部ほどではなくとも、限界突破はマックスにレベルもかなり高めで、それも上級魔族のみで編成している。
どうにかこの階層から本格的な準備ができて、戦闘員達も相当の自信を以て、フォーメーションや戦術で倒してくれれば善い。
上級だけに中層までとは数において少々減少するも、質は可能な限り高めてあるので、流石の聖騎士でも堪らないのに相違無い。
アン始まっちゃったと思った瞬間に剣戟を試す青年は、立ちはだかったシャドーナイト達が、それを楯で止めて反撃しては次々に攻撃が飛ぶ。
それを見事な脚さばきと空中技を駆使して、着地を早めながら徐々に距離を詰めては、ヒットアンドアウェイして青年は攻めあぐねる。
もしかしたら倒せるかと期待しながら、上手くやってくれればロカク出来ると、僕は自案の戦術と頑張って戦ってくれる戦闘員に感謝した。
回避も可能な空中での斬戟による射撃や、聖属性魔法や回避モーションも駆使して、青年の機動力は更に高まって熾烈を究めた。
「シャイン・デ・ブリッタ、ホゥリィライトゥ、オゥィエィ、アァヴォゥネエェィ」
ーーブリった社員? つーか今あぶねぇって云ったじゃえ?ーー
まさに空耳として聞こえてきたのはスキルネームか、“ホーリーライト”はただのネイティブでも、“ブリった社員”には何故かニタニタする。
何をやっているのか今はそれどころでは無いが、ヤツは今確かに“あぶねぇ”って云ったか、そう云って回避しまくってたのは気のせいか。
同様な疾走的なムービングが炸裂するが、少し前の段階で僕の周りは従業員のご尽力で、一寸した擬似的なシアターと化していた。
更にはヤツの言葉もほとんど外国語か、おそらくラテン語か英語が既に世界の公用語か、そのうちに翻訳されて聞こえるかもしれないが、今はそれどころでは無い。
軸の全く変わらない青年の姿勢が闇に威圧して、それでも回復魔法やバフの支援効果での戦況維持、若しくは戦術的なアプローチを可能にしていた。
長期戦と化した上層での戦闘は、やや青年のスピードを鈍くさせるも直線的ながら繰り出す、剣戟や魔法は魔族の脅威に変わりは無い。
デバフスキルを全く使用しない代わりに、デバフは直ぐにパージするが如く無意味にして、スキルや魔法によるバフと回復魔法でしのぎ合う。
階層を上がるごとにエクスバーストスキルを使用しない、その理由として入城前に見た物、畑や田んぼが青年にとって何を意味しているのか。
聖騎士として魔王や魔族の殲滅の命を受けた青年は、畑や田んぼの意味が何であろうと、“殲滅任務”から逃れることは出来なかった。
「ヤルシカ……ナイノカッ……」
今発した言葉はラテン語だろうか、知らぬうちに翻訳されて聞こえたそれは、何を思うか不明にしても僕や幹部達からしたら大いに謎だった。
そしてやはり無理にも小技で突破するのが不可能と、流石に悟った青年はまたしても、あの冷徹にも眩しいアレを発動した。
「ブライ……トス……デ……エクス……カリ……バ……ロス……」
聖騎士として任務に準じる青年は、薄々と畑や田んぼの存在する意味を吟味しながら、もしかするとそれで謎ムーヴになったのか。
僕は農業を魔界に持ち込んだり、近くに街や町を増築して貰ってはそれを感謝しながら、それを城から眺めたりもしている。
青年は街町も視ているかもしれないと、咄嗟に魔族だけを回収するために瞬間移動で往復して、救済しながらもしかすることをみんなに、少しだけと途切れ途切れ話してみた。
クラウザーもルガウルも唸っては染々と、僕の不快活な言葉を真剣に受けて、同じく真正面から受けてくれるサキュバスとリリス。
「では、あの者はもう戦う積もりは無いの?」
しっとりと体温の籠ったように優しく云ったリリスに、暗黒騎士を勤めるクラウザーはやや否定して、青年には任務が在ることを謂った。
ルガウルも総力戦なら少なくとも負けぬと、ゆっくり鼓舞してはスコーンを丁寧に食べて、その欠片が黒い蝶ネクタイや襟周りにこぼしていた。
ダークネスバトラーとしても暗黒騎士と組めば、何者も魔王に通さない位の自負は有るし、ミスだってほとんど無いくらいに働いている。
楽園を追放されているリリスも倫理的な人間に近く、僕をアダムのように弄ぶとしても、それが悪意によるものでは無い事を僕は知っている。
サキュバス達だって最期の魔王ステージで一緒に戦ってくれるしその間もキスや挑発的なスキルで、何時も僕を戦わせてくれている。
だから負かるわけにはいかないし、出来ることなら魔族側に附くか魔族化して貰って、魔界でのご尽力を期待したい。
もしそうなれば消された魔族達への謝罪と追悼を、どうか捧げてやって戴きたいが、眼前の課題としては聖騎士の青年をどうするかだ。
毎日日課にしてみてください。




