八話 魔界で農業をやってます
異世界の魔王に転生したので世界を支配します
本格的に魔界の改革が始まっているが、いよいよ農作業が可能になったので、先ずは症気のクリーニング装置が正常かを一応確かめる。
魔界に爽やかな空間が出来たからか、重労働にして過酷な農作業が苦にもソワソワして、思ったよりも爽快な空間がすこぶる佳い。
研究部の努力が割りと早く開花したので、カミーユの指導の下に作業員を集めて、限界突破したワーウルフあたりを番犬に作業が始まった。
当初はやはり農村から都会へ逃げる要領で、重労働から逃げようとする者がいるかと思ったが、意外にこれもクリーナーの影響か。
僕に重労働が不可能なところが痛いところで、その割りには勇者軍団を圧倒したりするが、脳がパンクしたような状態では剣呑だろうか。
なんと謂ってもまだ開墾段階でまだ土地は無いが、教育目的よりも作物の普及による安泰化に向けて、まいしんしている最中に在る。
薄暗い中にも比較的明るい快適な空間が、これから何時だって在るのに相違無いし、クリーナーの燃料も症気なら幾らでも機能しそうだった。
種は科学の発展がまだ無いのか生きていて、その種を畝に蒔けば作物の芽も頭を出すか、あと肥料と水の問題もあったがそれも対処している。
研究部や建設関係などには負担を強いるが、どうにか開発しなければこの異世界や魔界にも、どうやったって期待することは出来ない。
令和の時代から転移しても今になって御一新後のような、明治の近代化や再開発を思わせるか、その割りには症気クリーナーが稼働したりする。
まさか漫画やゲームでは在るまいに、今僕の目の前で開墾作業を黙々とやっているのは、モンスターや魔物とされる者達だ。
リアルかどうか判然としないままに、魔界開発に参加してくれているそれは、普通に労働者としてゆっくりではあっても確実に作業は進捗を示す。
初見ではゴブリンも凶悪至極に見えていたが、今では僕の手足として尽力してくれる作業員として、慣れないことをしてくれている。
この光景を目の当たりにするだけでも、幾らかはイメージも払拭されたり印象が変ったりと、魔族を見る目も変わるのではないだろうか。
魔素を有する魔族であったとしても、そのほとんどは通常の自然に生ける生態系と何ら変わらない、種族によっては温厚だったりもするだろう。
それが魔素や症気によって理性が崩壊したり、凶暴化しては町や人間を襲ったりして、不祥事の片棒を担ぐ様な暴挙に見えるのかも知れない。
ゲームなどの場合ならスポーツバトルか、そのような類いの物として興じても、人間の言語を解したり対話が可能になればまた違う。
それが一切の事情も解さない偏見主義や人間に、これでもかとじゅうりんされては苦しんで、体質と現状に挟まれて絶望させられるか。
魔界の者達や魔物はゲームであれば、討ち倒されるべき対象としてよく扱われるが、それならば尚の事弱者に相当すると謂える。
少数派や弱者を尊重しなくても佳いなら、その逆に”弱者を脅かす者達”を滅ぼしたとして、何ら問題は無くなって仕舞うだろう。
精神や神経を振り廻したり雑に扱って、誰より苦しんでいたとしても構わないと、見向きもしないどころか潰れるまで責め立てる。
現代の時代でさえそれが未だに機能して、何時また苦痛と恐怖にさらされるか、生き甲斐も亡くしてはその価値さえ無意味と化す。
こんな中世期以前のような異世界で、その偏見主義やらに貶められたり、自ら破滅を許容しなければならない人生は一切にして必要無い。
絶望しないためにも農作物から有り難い栄養も貰いたいし、快適なライフスタイルを確立するためにも、まだまだ止まるわけにはいかない。
フルーツも栽培して酒の原料として活かしたいし、サワーやワインも生産することが出来れば、クドイとしてもそれを僕や城の者達に支給出来る。
このしばらくで大分慣れてきたのだろうか、農作業は重労働でありながらも運動機能を有して、クリーナーも在ってか実に爽快と見える。
サキュバス達と経過を観に来てみれば、一部の作業員は閑にも快活に農作業に励んで、コツコツと確実に進捗を魅せていた。
「野菜って、結構カワイーんだよな」
「こないだみたやつ?」
「うん、いろんな色があってなんかいいなって……」
「ん、たしかに……」
この二人はゴブリン族のヤキチ君とロウタだが、まだ開墾段階であるにも関わらず、もう既に野菜の長所を表面的にも覚えているのは素晴らしい。
「それにしてもオンナがいねーんだよな、ゴブリンでもいいからいいやついねーのかな」
「まあ、ちょっとだけ気になるね」
「そりゃあ、美人でスタイルよければって、おまえは慾とか無さすぎる」
早速本能に因ってそれらしい意見が交換されたが、少し気配をさらしてみようかと、僕は作業員達の前に現れてみる事にした。
「あっ、魔王様」
「魔王様、おはようございます」
「ん、作業の方はどうなっている」
「まあ、こんな作業はめったにやらなかったので、ボチボチって感じで……、なんかスミマセン」
「いや、気にするところでは無い、早いに越したことは無いけども」
もうこれ程までにあいさつや礼節を表現して、互いに円満な作業風景を形成していたので、僕はもう少し観察してみることにした。
「それよりも聞いてくださいよぉ~、こいつオンナに興味無さすぎて、ちょっとやばくないすか?」
「どういうことか?」
「なんかヤロウばかりで少し萎えそうですね、あっ、失礼しましたっ、やる気はあるんです、ハイ」
ロウタの取り繕うような態度は、僕を魔王として認識させるのに充分な効果が在ったが、今はまだ多少なりとも威厳は必要か。
「たまにはオンナと会いたいですね、聞くところによると、人間のオンナは柔らかくて玉のようだって、そのように聞いたことが有ります」
まあゴブリンなどの場合だと分かりづらいのか、やはり同族よりも人間のように丸味や柔らかさの分かりやすい、そんな対象を尊望しているのだろうか。
人間からすれば恐怖の対象として認知されていそうだし、場合によってはゴブリンも無双出来たりと、この場合の対象としてはどう思うか。
「人間のオンナですかぁ、いいですねぇ、キュッとしてたり柔らかかったりして……」
オークのセーゴゥが割って入っては、人間のオンナ談義に参加して評価を現したが、急に暴走したか邪悪ではない本能的な何かが吹き出した。
「オンナっ、オンナっ、人間のオンナアァァァァ~~~っ」
すこぶるマジィと思ってどうしようかとなったが、この開墾地のチーフだろうか、どうにかしてくれそうな気配がして有り難い。
「オレのを触れよ、ほら、力抜いてやるから」
「あぁ、助かるぜぇ」
「ん」
チーフだろうと何だろうと何でもいいが、このトロールは自分の胸部をセーゴゥに触らせたが、一応は揉み込めるくらいだった。
特に声が出るとか何かしら反応を示すも無しに、ただひたすらセーゴゥに胸部を触らせては、誤魔化すように対処するトロールのパイル。
一時はどうなるかとソワソワしては、パイルのちょっぴり変則的なご厚意感謝して、僕は何かしら振興イベントを開催した方がいいかと思った。
せめて昼にはゴブリンか誰かの食事でも出させるか、美女や美少女なら僕が大切にお世話を、いっそのこともっと増やして女子オンリーで……。
我ながら卑怯にもゴブリンやオークには、美女や美少女を提供するには勿体無いと、何故かそのように思って仕舞うなら政治家失格か。
ーー見た限りはイイ奴らなんだよなーー
それでも何かの催し事の際に健全な見世物とか、何かしら観て貰う分には構わないか、あとは城のみんな次第だがどうなることか。
こんな調子で酷なことに振興イベントも無いまま、今では田んぼも畑も出来ていて、畑を耕したり田んぼが出来上がっている。
ゴブリンやオークに番兵にワーウルフなど、それ意外にもいたと認識しているが、とにかく準備が出来た事にはみんなに感謝したい。
あれから変わったことをひとつ思い出したが、チーフを改めて任せたパイルさんには奥様がいて、休憩時にはお茶や弁当を用意してくれていた。
魔王の僕やサキュバスたちは長居をしないが、弁当箱や皿などが休憩室に残っているのを、この眼で確認が済んでいるしパイルの説明もあった。
農耕具は木製のものを作って城から支給した物だが、それを使ってコツコツと作業を続ける、その作業員達には近いうちにイベントでもやるか。
城から支給している肥料も使用して、それも混ぜるようにまた耕してはまた例のごとくに、談議が始まって城に戻るには少し惜しくなった。
「あぁ~、やっぱ責めて観るだけでもイイから、オンナいねえかなぁ~」
「今は仕事中だよ?」
「んん、オレもオンナ……、コヅクリ……したい、いっぱいしたい……」
「またオレの、さわるか?」
「今はまだイイ、でもスタイルがよくて顔もよくて、少し反抗的なオンナでもいいかぬ」
セーゴゥの発言がやや乱暴な路線に突入してきたが、それを許すとなると人間でなくても、やはり怖くなるか”オンナの敵”に廻って仕舞うか。
サキュバス達も魔王の僕以外だと、セーゴゥの意見を聞いた瞬間にヤバイお顔へと、さっとエクスチェンジして仕舞われた。
流石にいくら魔族同士やちょっとした悪魔でも、巨漢のオークと一日中頑張って仕舞っては、最早ひとたまりもないのだろう。
作業員のみんなは魔王の側近に手を出すような、そんな暴挙には出ないと思うが、もし何かあっても魔王の僕なら何もさせない。
「丸味が有ってスタイルのイイ、そう、あのサキュバスみたいな美女とか、へへ……」
やはりマジィお顔になって手を出そうとしたライラを、スカーレットがそっと止めてあげて、見下すような眼でセーゴゥを見た。
どちらも本気では無いにしても、空気的にはすこぶる悪化したように一触即発に近い、そんな状況になって仕舞ってはどうするか。
サキュバス達を連れてくれば空気は荒れて、連れてこなければ作業員達への慰礼もないか、悩ましいことこの上ないから堪らない。
それにサキュバスを連れて来るのを辞めようかと、僕が急に言い出すと作業員達は大いに落胆か、作業に影響しそうでソワソワした。
サキュバス達は作業員達に会うのは厭だが、魔王といられないのはもっと厭だと、そのような意見が挙がったならまた連れてくるか。
どのみちにしても魔王の僕だけは職務的に、進捗状況の確認に見参しなければならないし、何だかスースーしそうで物足りないだろう。
何だか収まりが着かないとセーゴゥがパイルに、両手で触りたいとその胸筋を揉み込んで、その手つきが何時もと違って優しそうだった。
セーゴゥの甘い手つきに少しムズムズしたのか、パイルから太くも甘えるような声が、一瞬だけ漏れてそれを繕いながらまた忍し黙った。
それを見届けて僕とサキュバス達は、閑にそっとその場を後にして城へ戻ることにしたが、なんとシュールにも滑稽だっただろうか。
あれからまた数ヶ月経ってまた向かってみると、既に水田ができあがっていて苗を植えていたが、やはり生理的な諸事情から議論が始まった。
「はあ」
「ん?」
「あっ、いや、やっぱりメスすらいないのはなぁ、人間のオンナなら尚イイが……」
「いつも魔王様付のサキュバスが来るのでは?」
テンドンがキマって仕舞うのかどうか、こちらの班でもほぼ作業員の構成は同様か、一応のご紹介くらいはしておこうと思う。
ゴブリンのサンシローとゴブロクに、オークのナカダとトロールのメグロと、主だったメンバーはこの通りにひとつひとつ苗を植えている。
野良作業にしてもいくら魔族にして、いくら症気クリーナーによって快適であっても、やはり美女などにシーキングしたくなるらしかった。
魔王付として僕の傍にいつもいるサキュバス達は、小悪魔にも暗黒のリアリスティックな者も在って、僕にとっては切って離せないくらいに大切になっている。
本当はリリスやブリトニーもいるが、敢えて内緒にしておきながらも何か興業は出来ないか、サキュバス達に聞いてみることにした。
しかし何も意見が無かったのでまた謹聴したが、どぉ~しても生理的諸事情から、こちらの班でもオークが悩ましくなって仕舞った。
「ニィンゲェンノォオンナァ……」
まだまだ暗黒なお空の下で眼を紅く光らせては、重く力強いダークネスな声が響いて、またこちらでもトロールが対処するのか。
いやこちらの班の場合は少し違っていて、ナカダのナカダ氏には奥様がいるので、サンシローが呼びに行くと見参戴けるらしかった。
「またなのね、わたしで我慢して……」
中々艶っぽくも種族のうちではそれなりに美人か、しかしそれでもオーク同士だから、元人間の僕にはややシュールにも新鮮だった。
我慢と云うくらいだから種族的なコンプレックスか、ついこの名で呼んで仕舞うナカダ氏は、しっかりと揉み込んではお顔がやや紅いか。
「オマエら、観んなよ……」
「いやっ、出来れば僕たちにもと、……ダメっすよね……」
この瞬間にやや沈黙が訪れてナカダ氏は固まったが、自分の嫁だしなオークだしなと、煮え切らないこの時はナカダ氏が気の毒に見えた。
「うん、イイよ」
それだけ云ってまた奥様に触ろうとしたが、奥様のトメはそれを厭がって押し退けると、さっさと家の中に引きこもって仕舞った。
「うぅぅん、またやって仕舞った……」
『また』と云うからにはこの様な些細なる惨劇は、一度や二度ならずと日課の如くに在って、ナカダ氏も思うところが在るのだろうか。
以下の”些細なる惨劇”は単なる夫婦漫才では無く、実は”自慢の嫁なのだから”と、何時ものみんなにも貴重な時間を共有したかったのだろう。
しかしそれにしても人間の物とは遥かに違う、その生理現象がわずか一瞬のうちに飛び抜けて、どこかへ去って仕舞っていたりする。
呼称時のイントネーションさえ気を付ければ、これ程にもユニークな要員が不要に非ず、ご夫婦揃ってのちょっとした催しが発生するだけに、不用意に失くすのは勿体無いのか。
やや広い河のせせらぎが鋭くも突き抜けた空間に在って、快晴の空に少し煩い陽光も有り難く、ゲーム等では録な目に遭わない者達が、ゆっくりと流れる時間の中で生活して戴きたい。
改革はまだこれからだが閑にも緑や空が劫在するような、例え擬似的にでも遠い未来に在っても、出来れば早いうちに魔界を拓きたい。
種も食べたり調理したあと菜種を洗浄して、研究部や科学班等に提出して分析して貰い、その種を実用的なレベルにまで引き上げる。
今はまだ不可能だから出来るだけ大切に、人間界から魔界の鉱石などと交換して貰った種を、何度も植えて育てては栄養を接種させている。
「米はそのうち日本のものを採用したいよな、炊き方も研究させたらええのんな」
毎日日課にしてみてください。




