八話 ハイエルフアイドルの秘密④
異世界美少女達とスローライフ
――アッチェルニェンとかっ、すんげえハズイっ!――
僕の名前にリエルが吹いたと思うと、そのお顔がビショビショになって、濡れたお顔で嬉しそうに僕を見て云った。
「やっと話せた……、やっと……やっとまた……逢えた……」
ギュッて……ギュッて華奢な手つきで、きっとこれで力いっぱいだろうと、僕も同じようにしていいかリエルに聴いてみた。
「僕もいい? ギュッてして……いい?」
「うんっ……、ギュッて……して……」
「イイコイイコってしたりとかは?」
「うん……イイヨっ、……えへへ……」
「ホントに……リエル……?」
「うん、リエルだよ……」
「……リエル……」
甘可愛い天使の全てがまた僕の許に帰って来たと、もう終わったと思っていたのに再会出来て、匂いも声も感触もリエル自身が存在している証拠だった。
僕たちは二人揃って甘苦しいのを我慢して、実態の在る実感を共有し合って、それを確かめ合うのに言葉は必要としなかった。
リエルの口から直接聴いた限り、"転移者"の僕と違って一度死んでから生まれ変わった、最強天使の"転生者"だった。
高校二年目の秋辺りから学校にも来なくなった、あの大人しい美少女が実は病弱で、僕とリエルの事も親達が勝手に極めた。
自然消滅していたと思い込んでいた、その僕が卒業する1年前に病気で死んでいた事を、リエル自身のお口か、今になって知らされた。
すっかり大人になって仕舞っていた僕は、人生三十周年を迎えていて、リエルはおそらくまだ十四歳とか十七歳くらいだろうか。
老化しているのかしていないのか判然としないが、少なくとも違和感の正体が判明したようで、改めて再会とも云える今が有り難い。
当時アレだけ気になっていた僕は、あまりのショックに生きたいと思えない境地に在って、更に親の間接的な八つ当たりも受けていた。
「またイッショだよ? ……ね……っ」
泣くのを我慢していた僕に甘くしがみついて、天使の甘可愛い美声が事実を証明する様に、あの当時に在ったはずの物が帰ってきた。
そこで台無しにも僕は二点ほど気になったが、ひとつはこの状況が援交に間違えられるか、軽率にも冷静な状況判断が閃いた。
もう一点は"転移者"の場合だと、"生きたまま異世界に来ている"から、"生まれ変わってこの世界に来ている"リエルとは違うのか。
要は転生者なら寿命もろうかも無いにしても、転移者の僕には老化も寿命も有って、善くてこのまま老衰するかも知れない。
せっかく一番重要な事を取り戻したのに、今度は僕がリエルの前から消える如く、ほぼ確実に死んで仕舞うのだろうか。
「リエル?」
「fん?」
「僕は転移者だから……」
再会出来てニコニコしてくれている、その最強美少女ハイエルフに、水を差すようなことを云うのかと思うと怯んだ。
何でもないと云って僕は今在る"真実のリエル"と、何時までもこのままでいようと、僕の事はまだ早いとリエルと密着する。
リエルはイヤな顔をしないどころか、お顔をジャージの下に着ている僕の白Tに、擦り付ける様に圧し込んで離さない。
リエルの甘えきったとろけ顔を見た僕は、ゆっくりと口許をそっと圧し付けて、舌を入れようとするとそれを受け入れてくれる。
「何処で覚えたの?」
「ナイショ? んひひっ」
「……」
「あっ、今イヤラシいオンナだとおもったんだ、……んむぅ~~~~~っ」
膨れても可愛いと手練の如く可愛いリエルは、少なくとも僕をないがしろにはしないし、これからもずっといてくれる。
むくれたお顔も声も可愛いと油断した僕に、猛烈な舌遣いで強襲しては、一度離して艶顔を魅せてまた舌を絡めた。
それを受けて可愛くて甘い綺麗な舌を感じながら、幾つかの事実が脳裏に浮かんで、それを整理してみたら当たり前だった。
リエルは僕と学年が同じだったから、生きていたならもう三十を廻っていて、それなりのキスが出来たって変じゃない。
「リエル?」
「fん?」
「また、今から僕の家に来る?」
「fんっ、イクっ、んひひっ」
そうして家で待っているはずのみんなが、コッソリ観ていた事を確認して、僕とリエルは絶句しない訳にはいかなかった。
「いやっ、違うぞコレはっ」
「イェロリスちゃんが行こうって……」
「ちょっと、アタシのせいにすんなし」
「もういいから、家に帰ろう、帰ってこれからの事……」
「fんっ、わたしの棲む場所、あるかなぁ……」
「棲んでくれるの?」
「あっ、でもマネージャーさんがダメって云うかも……」
実はその奥で看ていたおねーさん、マネージャーの人が閑に現れて、自分もと今後の事を僕んちで話し合う事になった。
所要時間はそんなにかからなかったが、マネ女史は事務作業が有ると、僕たちを信頼して後日迎えに来ると帰っていった。
「よかったぁ~~~っ、ダメかと思ってた……」
「でも誓約書でしょうか、あまり過度なことは控えておきましょうか……」
「今度あのマネージャーさんに色々確認してみましょう」
そーしまえせうという事でまとまったところで、ライブ前に少し食事はしてあったので、遅い夕食を軽く済ませた。
二階の窓から月明かりとこれでもかと照らす星々が、何時ものように少し明るい夜は、これからの夢のような時間を照らしていた。
毎日日課にしてみてください。




