八話 ハイエルフアイドルの秘密②
異世界美少女達とスローライフ
遂に生放映ライブ開始直前だが、開始の夜までは時間がまだまだ在るので、ほぼ一日分をいつも通りに済ませていた。
モーニングコールから食事後の小説作業、それから昼食後のオンラインゲーム、そして星野璃依瑠に何が在ったのか。
一日中とろけきったままに、前回のライブ後に貰ったシングルをまとめたCD、それを購入したコンポで垂れ流していたい。
一日に一度はお目にかかる巨大スクリーン、その中で踊って歌うラブリエルは、この『THE☆快適』な世界に生きている。
当の『Lovely@EL』は僕の記憶が正しければ、『星野璃依瑠』のお顔や萌声等、その全てが記憶のそれと一致している。
僅かに微かな記憶の先にはリエルがいて、きっと僕は一番大事な事を忘れていて、更にそれが思い出せないでいる。
僕にとって星野璃依瑠は夢と希望その物で、何処へ行っても苦しみしか無かった、そんな僕にあんなに可愛いくいてくれていた。
「もうすぐですね」
「む、その様で御座るな……」
「ぬおっ、らぶにゃんモエーっ」
「カワイーな、ラブちゃん……」
みんなでのオンラインゲームをやった後、ラブリエルの寄せ集めCDを聴いたまま、僕は開始直前までリエルな逡巡していた。
いよいよラブリエルが画面に現れて、ギャラリーも揉みくちゃなくらい集まっていて、突如始まるライブに熱狂した。
当の許可済電波ジャックライブは、許可取りが済んでいて全く問題は無いが、ギャラリーがやや喧しいかも知れなかった。
それでもそれすらコミコミでライブだろうから、僕に水を指す勇気は無いか、爆音だからそれが鼓膜に刺さるのはやや閉口する。
数曲済むとトークパートが始まって、気になっている人がいるとの質問に、なんの抵抗もなしに「ハイ」と答えるラブリエル。
おにいさん達などは「だれだそいつは」と、ゾワゾワとうごめくようだったが、その対象は無論僕だからどうにもならない。
おそらくカンペでの質問だろうと推理するが、それが済むと新曲が出来ていると、早速始めたそれは非常に聞き取り易かった。
『聴いてください、"貴方に伝えたい"』
明らかに僕に宛てたと思えるくらい、実にシンプルで分かり易い内容だったが、あるフレーズに僕は反応していた。
"貴方の亡くした想い人の魂は 今でも貴方を思い待ち望んでいます"
いち芸能活動の一環として発表するには、レクイエムを思わせる様で、何処か暗い印象を覚えながらも幽美な感覚がある。
"わたしはもうすぐあなたの前で 本当の事を語りたい"
後半部に挙がったフレーズによって、"幽美"だった物が"悠観"に変化すると、鎮魂から夢想にシフトしたようだった。
ラブリエルが自身の正体を僕に明かす、その時はもうすぐに迫っているのか、僕の胃腸はまた少し重くなりかけた。
それでも何を歌おうがモエモエで、何もかもが可愛いくてキモチイラブリエルを、星野璃依瑠の勇姿だけは見届ける。
新曲の後も鉄板な曲やライブ用の新鮮な新曲は、どうやったってモエモエで、先程までCDを垂れ流していたくらいだ。
僕には『Lovely@EL』が『星野璃依瑠』だと、ますます確信して激カワ天使を、全ての曲は僕のために歌っていたとさえ思う。
今一緒にいるみんなだって大切にしたいが、リエルは僕が高校時代にいつだって、気にしてはソワソワしていたのか。
僕はスクリーンを観ながら聴いて、当時を少しずつ思い出しては、そのスクリーンから全く一時も目が離せないでいた。
厳密には高校時代に僕の意識がトリップして、リエルがずっと好きだった事、付き合っていた事も思い出しては目から何かが垂れた。
高校三年目の夏以降は二人揃って、進路に向けて集中しようと会うのを中断して、そのまま会うことが無くなった。
進路の事は何故か確認しなかったし、若しかしたら他の奴と付き合い始めたのかと、少なくとも当時の僕はそう思っていた。
だからリエルにさえ苦しみ抜くならと、忘却した上で益々人間が信用出来なくなったのか、現実世界での僕はこの世から消えて仕舞いたかった。
それが今スクリーンの向こうで、リエルが歌って踊っていると思うと、今の異世界生活環境も併せて生きた甲斐が在ったと思う。
時折画面の正面を向いてアップになる時、僕とリエルが繋がっている気がして、肘を立てた手に頭を乗せたまま黙っていた。
ただもし新曲の内容と僕のイメージが合っているなら、高校三年の夏以降に何が在って、僕に一言も無しに消えたのか。
こんなに可愛いくてキモチイ超絶美少女天使を、星野璃依瑠を二度と失くしたくないが、リエルがどうしたいか次第だろう。
今のみんなもリエルも全部が、僕には頭が上がらないくらいに充実して、これからも一緒にいたいとはやはり贅沢だろうか。
僕の異世界スローライフにリエルもいて、それでいてやっと完成したと云えるし、星空を観れてやっと一日が終わるんだ。
ライブは最期の最期まで夢が在って、それを完壁にやり切るリエルは、僕に相応しいのかと思いながら終演の虚無感もまた苦しかった。
毎日日課にしてみてください。




