八話 ハイエルフアイドルの秘密①
異世界美少女達とスローライフ
モーニングコールから朝食も小説作業も済んで、昼を廻る一歩手前頃に僕は不図気になって、二階の窓から例の大画面を観た。
トキのラブリエル氏が画面の中で、歌ったり踊ったりしてクローズアッブされるお顔は、弾けたり優しかったりと忙しい。
ミュージックビデオだろうと思うが、カラフルな部屋やエルフ族の里はおろか、あの新しく出来たダンジョンの第三階層にも行っている。
撮影クルーにA級ランクパーティが同行か、それとも管理者同伴なのだろうか、その場合は謝礼も弾むのだろうか。
撮影クルー自体がA級ランクパーティか、若しくはラブリエル氏の戦闘力か高いか、頭脳派の者もいるかも知れない。
あのラブリエル氏からは、特に強そうなイメージも無いが意外に強いのかも知れないし、ただ歌等の特技を活かすのだろうか。
昼に届く辺りで当のラブリエル氏が、ステージ衣装で画面に現れると、ひと通り挨拶をしたら電波ジャックライブをやると謂った。
ジャックといっても異世界一の電波塔を使用する、その許可もスタッフが管理者に取っていて、何の気遣いも必要ないらしかった。
僕は自宅にいながらそのライブを、広場に防水加工を追加されて設置された、巨大スクリーンで観れて仕舞うのは有り難い。
当日は二階の窓際に集合して、フェラ氏のツマミ料理やノンアルコール飲料等を並べて、こっそりみんなで見守る事にしよう。
フワフワしたあのラブリエル氏、その声もニコニコしたお顔も華奢な手つきも、思い出すとどれもモエモエだった。
思い出したらやはり僕には憶えが有って、高校時代に異次元の可愛さを誇った、そんな美少女がいた事実が蘇る。
身体が弱くてあまり学校には来ていなかった、その美少女は今の今まで忘れて仕舞うくらいに、存在感が無かったと記憶している。
あの当時は現実世界で全く休まらないくらい、あらゆるものに振り廻されては、自分自身すら信用していなかった。
この異世界に来てみんなが来てからは、最大限に気を遣いながら甘えさせてくれる、有意義で快適なスローライフ。
フェラ氏を中心に少しゲームをやったり、美少女や美女たちの肉感と芳香もキモチイし、声もお顔も綺麗でカワイイ。
しかしあまり過ぎるとマジィオジサンになって、敬遠されてもイケナイので、どうにか頑張って紳士的に努めてはいる。
初めて会った時からラブリエル氏には、何となく懐かしいようで苦しかったような、そんな感覚が微かに有ったと思う。
それが今になってジワジワとその感覚が強くなって、みんなも大切にしたいのに、ラブリエル氏への罪悪感も意識している。
何処かで会ったようで僅かでも一緒にいた様な、それでいていつの間にか消えて仕舞った、そんな虚無感が在った様な気がした。
でももし僕の感覚や直感が正ししければ、今更であってもまた逢えるのなら、その時には僕も本当の事を話してみよう。
そう覚悟を極めた途端に胃が絞まって来て、当日のライブ映像から逃げて仕舞いそうで、それでもラブリエル氏の正体が知りたい。
生の声が聞きたい華奢な手つきを感じたい、あの甘可愛いお顔が観たい、当時を思い出しながらこれからを知りたい。
そうだ……確か名前は……リエル……、ホシノ……星野璃依瑠がアイツの名前だ、顔も……確か……ラブリエル……あんな感じだった。
これだけ分かっても僕には行動力も無ければ、言語力だって大分怪しいし、今度のライブは画面の向こうだから無理か。
その前にひとつ分からないのが、何故か虚無感を憶えている事で、"いつの間にか忘れて仕舞うくらいの何か"が在ったのか。
僕ほどに記憶力も怪しいのに、何故か今になって思い出せるくらい、十年以上も前の殆ど接点すら無かった事を憶えていた。
いや……本当に接点が無かったのだろうか、もしかしたらもっと何か色々在って、もっともっと大切な事なのかも知れない。
フェラ氏もフィーリア氏も競うように、マリアンヌ君もイェロリス君も、何とかして甘えようとしているのが分かる。
そしてその貴重で大事な時に、僕はラブリエル氏……いや……璃依瑠の事で、もう頭がイッパイになっているのか。
みんなを置いて僕は別の美少女で忙しく、感触も体温も声も確かに感じているのに、脳が稼働しすぎてパンクするかも知れない。
キモチイし頭も上がらないし上げる気もない、食事もフェラ氏特製聖少女エッセンス配合、小説も進まないし『Aille』でも生成物を取り違える。
「璃依瑠もウチに住んでくれないかな」
何と謂う事だろうか仕事中にミスを増やしておいて、みんなの前であの名前を出すとは、万死に値すると云えば宜しいか。
「りえる? って……だれ?」
「ででっでゆっ?!」
「誰ですか、オンナノコですか、カワイイですか」
「あっあっあっ、あんいぇん」
ラブリエルが僕の知人で名前も正体もほぼ確定、それは僕にしか分からない事であって、当然にしてみんなには解せない。
パッフェの疑問に反応した直後、隠密中のフェラ氏でさえその固有名詞に食い付いて、それにもまた僕は反応した。
何か混乱が在るとマジィので黙秘とするが、あまりにミスが多いと店の負担が増えるし、その分の生成物が社会的にも問題か。
慌てて注文を確認して生成し直して、マーフィンさんには悉く負担をかけて仕舞ったが、余分な生成物は期間限定無料サービスとした。
毎日日課にしてみてください。




