一話 さまようアイテムクリエイター③
異世界美少女達とスローライフ
足りなくなりそうな分を備蓄出来そうなくらいに、原料や素材を大量生成して、充分と謂う事で僕は店を出た。
しばらく落ち着くまでは日払いにして貰って、まだ明るいがもう既に夕日がお休みになるか、僕は一度ベンチに腰を下ろした。
幾分か時間が経ってどうしようかと、僕は家も無ければやる事もないままに、ただ夕日が照らす木々を見つめていた。
そこへどこからか声が聞こえたが、そこには誰もいなかった……ように見えて、小人の様な老夫が僕の隣に座った。
「おうぃえぃ」
あまりにも小さい老夫がちょこんと、僕の横に座る容子が僕には新鮮だったが、このエキセントリックな状況をどうするか。
この小さな老夫さんはマーフィンさんのお店へ、たまにケーキを買いに来たところへ、僕の事を聞いて来たらしかった。
「家が無いようじゃな、ワシが建ててやろうかの……」
ケーキは一旦置いて二人分の容器を取り出して、まあ呑みなさいと、僕の分のコーヒーを寄越して下さった。
空気がこじれるのが怖くて断れない僕は、そのまま有難く頂くことにしたが、この小老夫さんもブラック派らしかった。
やはりブラックコーヒーに何かを混ぜるのは、繊細な甘味や旨味がぼやけて仕舞ったり、強い味に潰されるのは許せない。
全く同じ事を小老夫さんも申されては、そうそうと首を縦に振っては、物静かに緑を眺めながらコーヒーの旨味を確認する。
僕も全く同じ事を癖のようにやっては、アッチェアッチェと火傷に怯えながら、旨香を確認しては僕も緑に目を向ける。
はっとなって何となく聞こえたことを思い出して、思い切って小老夫さんに、その事を確認したくて僕は聞いてみた。
「あの……お家を建てて頂けるので――」
僕が云い終わる前にそうそうそれなと、割り込むようにして早々に、打ち合わせのような確認作業に突入している。
僕は割って入るような無粋は厭で、いっその事ならこのまま展開して仕舞おうと、小老夫さんのご厚意を受けることにした。
ただ、予算規模が気になった僕は、無理にでも割り込んで聞きながら、先の如くにコーヒーの旨味を逐一確認している。
「大体一万くらいかの……」
そう云いながら暮れゆく景色を眺めては、静かにコーヒーを呑んではしみじみと、この日が終わって往く事を惜しんでいた。
因みに、一万モッフンは日本円で僅か十五万円程で、リーズナブルどころか、最低規模でも二桁程足りない位だと後で分かった。
僕もコーヒーを呑み終わると、小老夫さんは勝手にスタスタと歩いて行って仕舞ったが、僕に振り返ってまた歩き出した。
「ついてった方がええんかぬ?」
ソワソワしながら僕は小老夫さんを追うと、人数分のケーキが入ったケースを、当氏宅の奥様に渡してまた歩き出した。
寡黙な小老夫さんは何の説明も無く、或る店へ入っては手を挙げて挨拶をして、奥のテーブルへさっさと陣取って仕舞った。
まるで普通のレストランのようで、メニューは居酒屋その物だったが、僕はこの世界の文字が全く読めないままだった。
若しかしたらステータス画面とかで、何かしら分かるかも知れないとしても、この小老夫のムービングが読みづらい。
メニューを見て固まっている僕を察して、近くにいたウェイトレスにサッと注文して、小老夫さんはゆっくりとお話になった。
僕が転生者である事や当日の僕は辛かった事、マーリンさんの店もまだ日が浅く、所持金や貯金がほとんど無い事。
また昨日も僕が上がるより遅く店のケーキを買いに来て、パッフェや店長のマーフィンさんから、僕の事を相談された事。
話し切るあたりでご注文になった酒やツマミ料理がテーブルの上にさらさらと、皿が乗っては実に旨そうだった。
この手のボトルはおそらく地酒だろうと推理したが、二人分の小さいグラスコップを並べて、実に器用な手つきで酒をつぐ。
「まあ呑みなさい……」
「あっ、はい、失礼します」
僕はやや慌てながらチビりチビりと舐めてみたが、苦味が強めだか辛口だろうか、その割には何故か呑みやすかった。
「平屋? 二階建て?」
唐突に質問されて仕舞ったので、鶏肉の串焼きみたいなやつをモゴモゴさせて、僕は頑張って飲み込もうとした。
しかし、あまりにも思うところがあったのか、小老夫さんはゆっくりとニコニコしながら、僕をなだめては看ていた。
そして小老夫さんが再度聞き直したので、僕は一度平屋と云って二階建てと訂正したが、その理由は幾つかある。
先ずは転移前の"性質的な事情"から、平屋の方が暮らしやすそうと思ったが、二階建ての家屋で暮らしてみようと思った事。
まだこちらへ来て日が浅いので、"女神効果"があるか未だに判然としないから、出来るだけ閑に暮らそうと思った。
二つ目は二階で生活をして一階の内装を改装して、何か出来るかも知れないと思って、一階を温存しようと思った事。
この辺りをベースに建てて貰える事になって、この小さな老夫さんにも感謝し切れないが、どうやって作業するのか想像出来ない。
ボトルを空にして料理も全て食べた後、今日はウチに泊まっていきなさいと、オススメになった通りに僕は従った。
空いている部屋を借りて一晩過ごす事になったが、建設作業が一日そこらで終わるとか、そんな事は有り得なかった。
この日は有難くもカライような酒もあって、もうフラフラしていたらしくて、その日は早めに休ませて頂いた。
毎日日課にしてみてください。




