一話 さまようアイテムクリエイター②
異世界美少女達とスローライフ
朝になっても腹が減りすぎて痛くなって、ある店の前にあるベンチでずくまったまま、いつの間にか寝ていたらしい。
店の従業員だろうか女の声がすると、朦朧としたまま無理やり起きると、目の前にベンチがあって視界の横からお顔が見えた。
昨日の昼間から転移されたままに彷徨って、アレから何も飲まず喰わずでいたが、何とか立ち上がってみたらバランスを崩した。
「おっおっおおぅいぇ……」
脚を振って何事も無く立てた僕は、やはり異世界人からすれば僕は異世界人で、この世界からしたら珍妙なのかも知れなかった。
よく見たら小柄な獣人がほぼゼロ距離で、僕の顔を覗き見ては隅々まで匂うのを、優しそうなおねーさんが観ていた。
確かに転移して以来から僕は半日以上はこのままで、獣人にはすこぶる気になるのか、その割には猫のように甘えている。
ただ立ってられない僕は無理にも押し切る形で、元のベンチに座っては失敬したが、おねーさんだけが奥へ引き込んだ。
開店一時間前という事でテイクアウト形式で、紙袋になにか入っているのか、僕に持たせてくれたが持ち合わせが一切無い。
そんな事は構わないと云われても、このまま引き下がるには忍びないと、ちょっぴり腰が引けてもどうにもならない。
コーヒーが冷めて仕舞うとオススメになって、袋を開けたら元の世界にもあった、紙コップとブラスチックなふたでひとつだった。
あとベーグルもあってそれも食べながらでいいと、あっちぇあっちぇとコーヒーを呑みながら、そのまま昨日からの現状を思い切って話した。
もう少しお時間をと思いながら、僕が転生者である事やアイテムクリエイターの事、所持金が一切無くて原料の調達も出来ない事も話した。
それを聞きながら僕の横でニコニコと、二人並んで静かに聞いてくれたので、その神対応に頭が上がらない。
ならばとおねーさんは宿代と食費を前払いで、僕に渡したかと思うと例の如くに、それで準備出来ると謂って続けた。
「明日の同じ時間にここのベンチまで来てね、原料は生成石かな、用意して待ってるわね、今のは前払い、DA・KA・RA」
アクセントまで強調しながら、闇に僕をこの店で雇うと云いたかったのだろうか、メス猫獣人も明日待っていると謂った。
「明日またこいよ~、また甘えてやるからな~」
翌日のまた同じ時間にベンチで、バッテリーが半分以下のスマホをいじりながら、いじり始めた瞬間にメス猫さんが出てきた。
僕を匂っては擦りついて一通り甘えると、僕に店内へと中へ入っていったので、僕もソワソワとそれに続いた。
裏口に案内されるままに中へ入ると、大量の生成石が積まれていて、どれだけの経費がかかったのかが気になった。
そこへおねーさんが参られると、それぞれ名前を表明しては、僕も名前を提示しない訳にはいかなくなった。
「わたしは店長のマーフィン、こっちはパッフェ」
次は僕の番だと思った瞬間に、こっちに来てからの僕のネーム表記はどうなっているのか、ステータス画面を表示して確認する。
しかし、ぼくが極めた訳ではないその名前は、表明するにはちょっぴり引けて、一瞬だけとは謂え迷って仕舞った。
「ぼっ、僕は……、アッチェルニェン……で……す……n……」
お口に出すのも恥ずかしいが、眼前に待機する変なモノを見る目が、容赦なく刺さって僕は変な意味で無事に死亡を遂げる。
――なんでだぁぁぁぁぁぁぁっ、このクソ女神ぃぃぃー―
いや呪ったところでどうにもならないし、仮にも『転生の女神』だから、ある意味でも不謹慎極まりないだろうか。
それはそれとして一通り話すと、主にパッフェの癖や習性的な事をお話になって、生成石を使ってくれと頼まれる。
汚名返上と名誉挽回の機会だと有難くも、一度も使った事が無いので、その生成石の使い方がイマイチよく分からない。
どうぞどうぞと迫るお二方を待たせては、やり方が分からなくて時間を浪費する大罪は、少なからず僕の行動を阻害した。
ただし、誰かに罪が有るのでは無いことは明白で、再度のステータス画面から、僕は何か無いのかと探ろうとした。
「あぁいぇん、ひらくんだあぁん」
ステータス画面が勝手に開いては、当女神様のチュートリアルが開始されたが、一方的でシステム的なやつが始まった。
それによると、アイテムインベントリから生成石を使用して、魔力残量を確認してから、小麦粉を選択して生成を選択。
「おほほっ、小麦粉さんが出来まそたよぉ……?」
僕は初体験にもアイテム生成に成功して、小麦粉を何とか増やす事が出来たと思うと、生成可能アイテム欄に『小麦粉』が鎮座する。
「あと足りない物はなん……ds……」
云い終わる前にメモの紙を寄越されて、そのスピード感にやや焦りながら、ひとつずつアイテムを出しては地道に増やした。
スタート時点ではレベルが"1"だったが、やってる内にレベルが上がって、職業レベルも上がっては数量を増やした。
そうして一通り指定数をクリアすると、先程から近くで観ていたパッフェが、そのうちのひとつを拝借した。
「どぅゆっ?! 喰っちゃう?」
ダッシュで逃げていくパッフェと入れ替わりに、店長のおねーさんが参られて、いつもの事だと呆れて仕舞われた。
慌てて足りないひとつを生成してから、次は商品生成のチュートリアルが、また同じ要領でコーヒーやサンドイッチを生成。
可能欄に登録されたのを確認して、今度は牛乳とサンドイッチを生成して、お二方に試食が必要だろうと頼んでみた。
二人揃って一口ずつ食べたが、商品用の作り置きも持ち込んで貰って、僕と店長で食べ比べてみたがそん色無しと見える。
だが僕個人としては魔力生成モデルの商品は、話題性はありそうだが、何となく天然物より物足りないような気がした。
まあしかし、幾分も不足は無さそうだから、店長は僕の生成物を商品化すると申されて、気圧されながらも感謝した。
この世界へ来てからは既に詰んだかと覚悟もしたが、先程から奇跡の連続で脳がフル回転して、オーバーロード気味になっている。
結局閉店までフル稼働して仕舞ったが、転移前に在った極度の疲労感も無しに、有難くお給金まで受け取って仕舞った。
更に店長はこのまま月給制にするか、必要な時に手伝うか自由にしていいと、出来ることなら従業員になってみないかと勧められた。
毎日日課にしてみてください。




