一話 さまようアイテムクリエイター①
異世界美少女達とスローライフ
死んだら生まれ変われるのだろうかと、もしそうならどんな世界だろうかと、何時しかそう思うようになっていた。
現実世界は生きづらいだけでなく、一分一秒単位で悉く苦しみ抜いて、この世の全てに恐怖しては絶望していた。
あまり良くないとしても、自殺によって自己解放が可能ならと科学的には不可能な事を、何時でも期待するようになっている。
幼少期より社会環境では神経が削ぎ堕ちたように、衰弱したまま家に帰れば、親の八つ当たりや嫌がらせが待っている。
そんな状態で授業があるなら板書も取れないし、親どころか人間そのものが、信用出来ない上に恐怖で堪らない。
その要因のひとつはおそらく、長年に及ぶピーキーな精神状態を無理に続けて、末期状態による言語障害もあるだろうと思う。
また、生まれついた性質を恨まれたり、否定されては攻撃され過ぎて、最早どうにもならない状況に閉口している。
しかし、どれ程死のうと思ったところで、失敗へのリスクや痛み苦痛への敬遠意識が、どうやっても僕を死なせてくれない。
資産構築も赦されなければ、音や感覚も秒単位に迫る程のストレスと恐怖に、一日中苦しみ抜くしかない状況が長年続いている。
視覚的にも電気や日光すら敵に廻る上に、力を込めた人の動作も恐怖と苦痛を強要して、僕にはどうする事も出来ない。
いつの間にか寝落ちしていたのか、眼前には長身美女が神々しく煌めくが、目に刺さるようではあっても何故か何うと謂う事は無かった。
転生の女神らしいそれは篤盛に、僕を異世界へ転移させると云っては、神経過敏や負の状態をリセットするような事を悠然と語る。
ややボケたように聞こえたものが、忽ちにクリアになっては恐怖感も薄れて、女神の説明が全て呑み込めた。
"転生"なのに"転移"となっているが、おそらく死亡していない者を"転移"させる事が、この"転生の女神"には可能だと見える。
そして碌に礼も出来ないうちに、判然としない状態のままに何処へ往くかも分からない僕は、異世界へ飛ばされて仕舞った。
気がつけば僕はある街に突っ立っていて、見渡せば獣人やモンスターの様な動物すら、街中を闊歩しているから異世界だと理解した。
モンスターを連れ歩くのはテイマーか、他にはレストランや商業施設も充実しているのか、その割には人の質はすこぶる良さそうだった。
ただ、何が何う在ろうと苦しんでは、どんな時でも潰れて来た僕には、たとえ本当に状態が改善されていたとしても苦になるだろう。
確かに音や感覚に過剰反応する感じが無く、割と快適で街の景色も色が良く、以前の世界よりも楽になるかもしれない。
それでもやはりまだまだハードルが高い上に、所持金も無ければ通貨も分からないし、僕にはやや不便を極めている。
そういえば大抵この手のヤツは、ステータス画面を開けるかも知れなかったから、何となくと手を前に少し挙げてみた。
「おうぃえい……」
ブンとその画面が現れたので、"マジに出た"のと"急に出てきた"のとが融合して、覚えぬうちに何か口に出して仕舞ったかも知れない。
折角出たのでと寄ってみたら引っ込んで、再度同じ要領で「おーぃえぃ」をやって、改めてよく見てみた。
職業の欄に『アイテムクリエイター』と在ったが、明らかにハズレ職にあたるようで、若干ショッキングでもあった。
その反面ではパーティ非加入を前提に、"無理に変なモンスターと戦わなくて済みそうだ"と、愚行が働いて仕舞った。
それであればむしろ厭でもなければ、遣り用に因っては却って楽かも知れないが、戦闘向きとは謂え無いだろう。
有難い事に詳細まであったが、『アイテムを分解したり組み合わせて生成可能』と有って、街の隅でちょっぴり試した。
「んむぅぅん、んむぬっ、ふぅんッ、あはん」
いくら何を何うやっても何も起きないから、街の外へちょっぴりだけ出ようと思ったが、気になる事が頭に浮かんだ。
"ログボ的なやつは……?"
例えばMMORPG等の場合なら、ログインボーナスとしてアイテムや通貨を支給されたりするが、何も無かったので仕方なく広場のベンチに陣取った。
アイテム生成も出来なければ資産もないし、人脈もコネクションも無い上に、この異世界に来たところで立ち往生。
自分自身の運命も性質も呪うだけ呪って、結局のところは女神の加護も無しに、ただ時間を無駄にするしかないのか。
段々腹が減って来て日が暮れてくると、夜風や他人の眼線が僕をチクチク刺して、どうにもならないからと立ち上がってみた。
無闇に刻々と僕を追い詰める現状に、歩行者のフリをしてグルグルと、夜空や閉店作業を観ては誤魔化して乗り切る。
一部の店はまだ営業中だろうか、金も無いのに無謀にも意識しては諦めて、ただただ街を徘徊しているに過ぎなかった。
街灯はやや虚しくも酒場や一部カッフェは、まだ営業中と見えてまだ明るく、それでもたとえ金が有ったところで入れない。
まるで右も左も分からないし、言語も通じるかさえ判然としない呑みならず、痛い程に腹が減ったまま僕はベンチで気を失って仕舞った。
今度こそはもう助からないと、夜空すら視界に入らない状態になってまで、何の意味が有って異世界に転移したのだろうか。
毎日日課にしてみてください。




