三話 アイドルハイエルフのスペシャルライブ④
異世界美少女達とスローライフ
ライブは大盛況で街全てから人々が集まって、エルフらしい神秘的なやつや、
カラオケ向けなヤツなどが炸裂した。
更に当ライブが始まったのが日暮れ以降だったので、プロジェクトマッピングで、電子的な色が清彩と映えていた。
大画面モニターも在ったのは中々で、ハイエルフの後ろで二次元美少女のイメージPV等、曲のイメージに合った映像が続いた。
それにしても背景がアクティブ過ぎて、肝心のハイエルフさん自身が、ややフェードアウトするだろうか。
もうプロジェクトマッピングくらいにして、後で映像特典や可能になるなら公式サイト配信と、主役を活かす程度に工夫するもいいだろう。
いやそう思う間もなくそれはダイジェストに、徐々に切り替わりながら、ハイエルフさんのお顔や衣装及び全身カットが表示された。
それはいいとして様々なお歌が、当氏ハイエルフさんの甘可愛い美声を変化させて、当然の如くに有り難く死亡出来ている。
『Do you sckievee know, sckievee know, Ecchow why boke'in』
透き通るような甘い美声がソフトに突き抜けて、まさに天使のひと時に一声がそっと飛んでは、静かにビートを刻み出す。
あのトライアンドエラーを繰り返しながらの、転倒を祈祷に何とかしてのリハーサルが、より一層の艶と奥行きを演出する。
恐らくアガリやすい上に人前だったせいなのか、何度も間違えてはクルーの皆様に見守られて、やっとに一通り済まされたハイエルフ氏。
また女子を代表してなのか、『ヤメテと云ってもヤメテくれないから怖くて』と、益々ボケ過ぎ紳士にヴォークインだろうか。
一曲目が終わってもスベシャルライブはまだあって、二曲目に突入してはニコニコしながら、時々僕を見て勘違いさせる。
『アッチェイィェンのアッチェイィェン』と、サビに入ったと思うところへ、やはり僕に向かって片目を閉じて魅せる。
「おっおっ、おーぃぇい……」
目が合う毎に僕は見事な幻術にかかるが如く、可愛く踊り廻る天使の勇士は、僕をこれでもかと惹き込んで離さない。
ちょっと横向こうではマーフィンさんとパッフェ、反対側にはドワーフ一族が、当氏大天使様を崇高に見届けている。
それにしてもやらかしながらも立て直すような、その内容はまさに『アッチェイィェン』と、何故か僕に向けられていると錯覚さえ覚える。
やたらと僕に可愛い顔を向けてくる、あのハイエルフ氏は僕に誤解されても、全く毛先程も応えないのだろうか。
一曲目とは真逆に飛び廻るような間奏中の演出は、ワイヤーも無いだけに、裏方かエルフ氏自信の魔法スキルだろうか。
ちょっと肩で息をしては落ち着かせて、トークタイムに入ったのか、先ずはと水分補給にとスタッフが当氏に寄越す。
「これみてくださぁ~い、へへっ、『Aille』さんとコラボ、しちゃいましたァ~、アリガトーごさいますぅ~n」
後でディスクに焼くか生配信なのか、撮影クルーに向けてその容器を魅せびらかしては、ひとつのカメラに向けてアピールする。
その容子すら何時までも観ていたいが、いつの間にマーフィンさんはコラボしたのか、あるとすればあの時くらいだろう。
思う事や当氏のセキララ白書な体験談等、スーパースターらしく一通りさらしたら、三曲が始まったところで当氏の一言。
『この曲は大切なヒトの為に作りました、聞いてください、"いつか貴方へ"』
イントロの上から飛び出した一言は、"僕ではない別の誰かへ贈る曲"という事だが、案の定にして"現実的な異世界"へと僕は帰還した。
逡巡した後に思い出したのは、あのリハーサル後の『Aille』で発生したある種の事故で、あの時は信用出来なかった。
元の世界では今以上に精神や神経を蹂躙され過ぎて、神経が尖りまくる他に拷問の様な生活が、惨めな人生に僕を追いやっていた。
こちらの異世界に転移したところで、ほぼハズレ職の『アイテムクリエイター』では、大した自慢にもならないだろう。
そんな程度に何処へ行っても彷徨っては、何も確立しない様な地に足の就かない、そんな状況や状態にも根拠の無い自信すら未だに無い。
ただ、リハーサルの日に僕を見ては、それらしい様な返事をしていたのなら、まさかのまさかで一周のちのそれだろうか。
もう三十歳になった僕はこのセカイへ来て間もなく、資産力も無いうちから"エンコーマン"に成り下がって仕舞うのか。
いや、ノリと付き合いだけでの返答に期待しても、ある意味で社会的に死ぬだろうし、第一にファンの誰かに闇鍋を喰わされるリスクも在る。
せっかくのスペシャルライブなのに、愚考を芳しくしたせいもあって、その内容は半分程度しか憶えていないのは大いに遺憾だ。
しかし、あらゆるリスクや謎めく何かが在る以上、呑気に興じていられる様な、そんな豪傑にはなれそうに無い。
マーフィンさんがいるなら店の方は休業だが、どこまでも忙しい僕の頭は、惜しい事に大イベントを疎かにしている。
その割には序盤の分だけでも、当氏におけるコンセプトや活動プランは、存分に大天使としての性能をこれでもかと発揮していた。
それが分かっただけでも大いに結構だが、当氏大天使ハイエルフ氏には、今後にもしもの機会があっても会わせる顔が有るのだろうか。
毎日日課にしてみてください。




