三話 アイドルハイエルフのスペシャルライブ③
異世界美少女達とスローライフ
嬉しそうにヒラヒラとニコニコしながらベンチにきて、僕の横で休憩を取るハイエルフさんは、珍しそうに僕を観ている。
ステージ衣装ではなかったとは謂え、白いジャージの様な物を着ていても、甘える様なお顔は僕を勘違いさせた。
以前マーフィンさんの店『Aille』へ来て、僕に何かを期待しているようだったが、僕には何も出来そうに無かった。
アイテムクリエイターとスーパースターでは、月に対してスッポンとなれば、珍味とは謂え足許にすら及ばない。
それをどう思うのか僕に何かを期待しては、僕個人の感覚でしかないとしても、多大なるプレッシャーが襲ってくる。
この甘可愛いハイエルフさんのお顔と美声、そして何も無い非力な僕では、まさに棲む世界がまるで違って惨めになる。
ただし、注意したいのは"エルフさんに悪意は微塵も無い"から、そうであるとすれば、憎むにはあまりに不自然窮まりない。
リハーサル中も僕とは正反対に、トライアンドエラーを何とも無しにこなしている様で、異世界人が余計にかけ離れた様な感覚が有る。
それに何故か元いたセカイで会った様な気がしたが、以前は今より格段に苦悩が濃く、それどころでは無かったから誰だかは分からない。
会ったこと自体が謎にして怪しく、ハイエルフと種族その物が違っているが、若しかしたら転生や転移の仕方は色々在るのか。
それに何故かやたらとニコニコしていたが、先方だけは知ってたからなのか、一方通行な状況が完成されて仕舞った。
まさかこのまま僕とこの人で完全犯罪が完成して、スキャンダルにまで発展する挙句、このセカイから完全に干されるのか。
何をどうしても美人可愛いのに、声もお顔もまさに天使過ぎて可愛すぎるし、何もかもすこぶる宜しいから堪らない。
甘くてカワイイ声がキモチイのも、歌う時の美声や耳許に吹きかかる声も、図っていないのなら何が目的か。
エルフ耳も特徴的で触りたいくらい気にしていると、エルフさんは触ってもいいと謂うので、僕はクシュクシュと触ってみた。
カワイク反応しながらやや紅くなっているのが、カワイクて輪郭もなぞっていると、雑魚キャラの分際で何をやっているのかと思った。
この世界のスーパースター相手に、多大なる暴挙に出て仕舞えば訴えられても仕方ないが、魔が差したとは謂えマジィもんはマジィ。
紅くなりながら横目に流して僕を見るエルフさんは、何かを期待させるように、エッチカワイイと思わせてくる。
それを自覚して益々紅くなって俯く事数秒、何かを覚悟するようにしてハイエルフさんは、脚の上できゅっとスカートを掴んだ。
「また会えるといいですね……」
ややこちらを向いては更に僕を見たその眼は、ツヤツヤと濡れながら、キラキラと落ちる夕日に照らされている。
数秒程見つめ合って仕舞ったが、あっと云って目を逸らすエルフさんに、禁断の何かを覚えそうになるのを僕は何とか抑えた。
スタッフのおねーさんが三人くらい迎えに来て、僕は釘を刺されて仕舞ったが、引っ張られるように戻って往くハイエルフさんを僕は見送った。
日が暮かかってきたのを確認した僕は、慌てて『Aille』に向かったが、まだハイエルフさんの名前すら知らない事を思い出した。
精々アイテムクリエイターらしくと、いつも通りに商品の一部をパッフェに失敬されながら、毎日の日課みたいな仕事をこなした。
ただの単純作業だが生成するだけだし、レシピが増えたりして多少なりとも有意義で、マーフィンさんはニコニコしてくれる。
この日当たりからか生成石も少し支給されて、どうしようと困っても、生活面において生成石の調達が若干困難だから非常に有り難い。
夕食にはワインと獣肉の炭火焼きにチーズと、ローソクに火を点けてから、それぞれ台の上に生成して椅子に座った。
二階のリビングからは星空が広がった空が観えて、バルコニーへ行きたいのを抑えて、食事とワインをじっくりと確認する。
因みにソースは料理雑誌のレシピを参考に、自力で作ってかけた肉を生成したが、素人の僕が作った物だから自信は無い。
ただ、ソースに柑橘系のフルーツを、適当とは謂え使用しているので、油で重い感じが大分軽くなっている気がする。
チーズは店で買った物をそのまま生成しているが、濃厚な芳香が充実しているが、ワインのお供だろうから生成した。
プラスチックのコップにワインを入れて、コルク栓をしてからバルコニーへ来ると、何時も以上に星が明るかった。
星空を観ながらワインを呑んで、昼間に会ったハイエルフさんもこの空を観ているのかと、何故か意味も無く眺めながらそう思った。
有難いことにスキルは入力式なので、時間や状況に左右されても作業自体は可能で、給金も戴きながらそれなりにやれている。
そうした事もゆっくりと思い出しては、ワインを呑んでぼんやりと星空を観て、やや重い感覚とワインにフラフラして来た。
濡れたタオルで全身を拭いて、生成しておいた衣服のうちからジャージを着直して、またワインをやりながら気がづいた。
「明日、エルフさんのライブか……」
毎日日課にしてみてください。




