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森のカフェしっぽっぽ  作者: 森のカフェしっぽっぽ


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第62話 三位一体祭

 午後の森のカフェしっぽっぽは、いつもより少し騒がしかった。

 理由は明確――サトルが「全部組み合わせる」と言い出した翌日だからだ。


 トラは床でのびをしながらも、どこか落ち着かない様子で周囲を見ている。

 チビはカウンターの上に飛び乗ろうとして、みどりに三度目の確保をされていた。

 きなは相変わらずソファに沈み込んでいるが、耳だけはしっかり反応している。

 イチは棚の上から全体を監視し、ジルは少しだけ前に出てきていた。

 ロンは入口で静かに構え、何かを察しているようだった。


 カウンターの上には、これまでの“成果”が並んでいる。


 包丁セット。

 石鹸と洗髪剤。

 そして“気分を整える泡”。


 みどりが腕を組みながら言った。


「これ全部、まとめるんですよね。」


「そうだ。」


「正気ですか?」


「正気だ。」


「いや絶対違います。」


「商品名は?」


「もう決まってる。」


「聞きたくない気もしますけど……」


「“三位一体セット”だ。」


「そのまま!」


「分かりやすい。」


「分かりやすいけど強い!」


 チビが「にゃー!」と鳴きながら袋に突撃し、再び捕まる。


「チビ、それは売り物!」


「にゃー!」


「気に入ったのか。」


「絶対違います!」


 サトルは淡々と準備を進める。


「今回はイベント形式だ。」


「イベント?」


「体験型販売だ。」


「……あ、やばい予感しかしない。」


「当たってる。」


 サトルはそのまま地下へ降りる。


 扉を開けた瞬間――


「来たぞ!!」


「三つまとめたやつだろ!?」


「噂で聞いた!!」


 すでに異世界側は“情報を掴んでいた”。


 森猫族(フォレストキャット)魔導士族(メイジ)蜥蜴人族(リザードマン)鉱人族(ドワーフ)鳥人族(ハーピー)獣人族(ビースト)――

 さらに前回の“巨大な存在”まで来ている。


 完全に祭り状態だった。


 サトルは一歩前に出る。


「静かにしろ。」


「順番だ。」


「はい!!」


 即整列。


(教育が行き届いてるな)


 サトルは箱を開ける。


 中には三つの要素が一体となったセット。


「これが“三位一体セット”だ。」


「おおおお!!」


「全部入ってる!!」


「包丁も泡も石鹸も!!」


 森猫族(フォレストキャット)が目を輝かせる。


「これ一つで全部できるにゃ!」


「そうだ。」


 魔導士族(メイジ)が分析する。


「精神、肉体、技術……」


「すべてを整える構成か。」


「そういうことだ。」


 蜥蜴人族(リザードマン)が低く唸る。


「戦闘前に泡で精神を整え。」


「戦闘後に石鹸で体を清め。」


「食事で包丁を使う……」


「完璧だな。」


「生活の流れを作った。」


 鉱人族(ドワーフ)が頷く。


「これは単なる商品じゃない。」


「“体系”だ。」


「分かるか。」


「分かる。」


 サトルは静かに言う。


「値段は金貨百枚。」


「たっか!!」


「ついに三桁!!」


「でも……」


「欲しい!!」


「知ってた。」


 だが今回は違った。


 サトルは手を上げる。


「今回は体験してから買え。」


「体験?」


「全部使え。」


「その上で決めろ。」


 一斉にざわめきが広がる。


「そんなことしていいのか!?」


「太っ腹すぎる!」


「罠では?」


「罠ではない。」


「自信だ。」


 まずは泡。


 全員が手に取り、香りを吸い込む。


「……落ち着く。」


「集中できる。」


「思考がクリアだ。」


 次に石鹸。


 水場で試し、肌触りに驚く。


「すべすべだ!」


「汚れが落ちる!」


「気持ちいい!」


 最後に包丁。


 実演用の食材を切る。


「切れる!!」


「軽い!」


「楽しい!!」


 空気が一変した。


 歓声と驚きが混ざり合う。


「これは……」


「全部必要だ。」


「どれも欠けたらダメだ!」


 魔導士族(メイジ)が静かに言う。


「これは“文化セット”だな。」


「生活そのものを変える。」


 サトルは小さく頷く。


(狙い通りだ)


「買う!!」


「俺も!!」


「予約させろ!!」


「百でも安い!!」


 完全に爆発した。


 列が一気に伸びる。


 過去最大規模の注文だった。


 その勢いは止まらない。


 数日後――


 異世界中で話題が拡散した。


「“三位一体の生活革命”」


「“魂と体を整える奇跡のセット”」


「“サトルの完全装備”」


 盛られ方も最大級だった。


 地上に戻ったサトルに、みどりが呆れた顔で言う。


「やっぱり大バズりですね。」


「したな。」


「今回は規模が違いますよ。」


「分かってる。」


「完全に“文化”になってます。」


「狙った。」


「やっぱり。」


 トラが「にゃ」と鳴く。

 チビが飛び跳ね、ジルが少し中央に出てくる。

 きなは動かず、イチは棚の上から見守る。

 ロンは入口で静かに尻尾を振る。


 サトルはコーヒーを飲みながら、静かに言う。


「次は。」


「まだあるんですか。」


「ある。」


「何ですか。」


「場所だ。」


「場所?」


「店を作る。」


「異世界に。」


「……ついに来ましたね。」


「来たな。」


 その目は、完全に次の段階を見据えていた。


 小さな猫カフェから始まった流れは、

 ついに“拠点”を持とうとしている。


 その先にあるのは――

 さらなる拡大か、それとも混乱か。


 だがサトルは迷わない。


(売れるなら、進む)


 今日もまた、

 森のカフェしっぽっぽから――

 新たな伝説が始まろうとしていた。

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