第40話 本音の再会
午後の**森のカフェしっぽっぽ**は、いつも通り穏やかな空気に包まれていた。
窓から入る光が店内をやわらかく照らし、猫たちはのんびりと過ごしている。
トラは床で転がり、チビはテーブルの脚で遊び、きなはソファで丸くなる。
イチは棚の上から店内を見守り、ジルはカーテンの陰から顔を出す。
ロンは入口でのびをしてから再び寝転んだ。
カウンターではサトルがコーヒーを淹れている。
みどりはカップを並べながら小さくつぶやいた。
「この前の女性、うまくいくといいですね。」
「本音のお茶の人か。」
「はい。」
「友達と喧嘩したって言ってました。」
「人間関係は面倒だな。」
「猫は楽ですね。」
「トラ見てみろ。」
「完全に何も考えてない顔です。」
「それが強い。」
その時、ドアベルが鳴った。
カラン。
入ってきたのは、先日相談に来た若い女性だった。
少し緊張した顔だが、どこか決意したような表情をしている。
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。」
女性は席へ向かう。
チビがすぐに膝に飛び乗る。
「また来てくれたのが分かるんですね。」
「チビは常連を覚える。」
「すごいですね。」
トラも足元に来てゴロン。
きなは椅子の横に座る。
ジルは少し離れて様子を見ている。
サトルがコーヒーを持ってくる。
「どうだった。」
女性はカップを両手で持ち、少し深呼吸した。
「使いました。」
「お茶か。」
「はい。」
「友達と会って。」
「一緒に飲みました。」
みどりが身を乗り出す。
「どうなりました?」
女性は苦笑した。
「すごかったです。」
「お互い、止まらなくなって。」
「本音が全部出ました。」
「ほう。」
「私が思ってたより……」
「相手も悩んでました。」
チビが膝の上で丸くなる。
女性はその背中を撫でながら話す。
「喧嘩の原因は本当に小さなことでした。」
「でも。」
「お互いに我慢してたことが溜まってたんです。」
「あるあるだな。」
「最初は言い合いになりました。」
「でも途中から。」
「なんでこんなことで我慢してたんだろうって。」
サトルは静かに頷く。
「本音は面倒だが。」
「役に立つ時もある。」
「はい。」
「最後は……」
「ちゃんと謝れました。」
「向こうも謝ってくれました。」
みどりが笑顔になる。
「よかったですね。」
「はい。」
「前より仲良くなれた気がします。」
その時、ジルがそっと近づいてきた。
そして女性の膝の端に乗る。
「えっ。」
「ジルが乗りました。」
「珍しい。」
女性は驚きながら撫でる。
「この子、やっぱり優しいですね。」
「人を見る。」
「そうなんですね。」
女性は少し安心した顔をした。
「実は。」
「もう一つ変わったことがあります。」
「なんだ。」
「ちゃんと自分の気持ちも言えるようになりました。」
「いい変化だ。」
「前は我慢ばかりしてました。」
「でも今は少しだけ。」
「正直に話せます。」
トラが「にゃ」と鳴く。
ロンが尻尾を振る。
女性はコーヒーを飲み終え、立ち上がった。
「ありがとうございました。」
「また来ます。」
「いつでもどうぞ。」
「猫たちにもありがとう。」
チビが名残惜しそうに降りる。
ジルもゆっくり離れた。
ドアベルが鳴る。
カラン。
女性は外へ出ていった。
みどりがサトルを見る。
「うまくいきましたね。」
「そうだな。」
「お茶も効果ありましたね。」
「きっかけに過ぎない。」
「猫も同じですか。」
「猫は本体だ。」
「そこ大事なんですね。」
イチが棚の上から「にゃ」と鳴いた。
店内には再び静かな時間が流れる。
猫たちはそれぞれの場所でくつろぎ、
コーヒーの香りがゆっくりと広がっていく。
今日もまた、**森のカフェしっぽっぽ**は、誰かの心を少し軽くする場所であり続けていた。




