第34話 猫大暴走祭
週末の**森のカフェしっぽっぽ**は、朝から妙にざわざわしていた。
今日は異世界フェアの目玉――**光る毛玉大運動会**の日。
ドアベルが鳴り、みどりが声を張り上げる。
「いらっしゃいませー! 本日も猫大暴走中ですー!」
店内に入ると、早くも猫たちの様子が違った。
イチは棚の上から監督しているのだが、目が真剣そのもの。
トラは光る毛玉を見つけ、すでに足が滑る勢いでダッシュしている。
チビは床でゴロンしていたが、何かの拍子で毛玉に気づき、一目散に追いかけ出す。
きなはのんびりソファに座っているが、目は光る毛玉に釘付け。
ジルは恐る恐る参加するつもりだったのに、トラの勢いに押されて隅っこに逃げてしまった。
ロンはいつもの通り、突っ込み役として大暴走を眺めながら吠えている。
サトルはカウンターで静かにコーヒーを淹れながら、地下倉庫の扉をチラリと見た。
「……今日も無事に終わるかな」
地下では、異世界の森猫族、魔導士族、蜥蜴人族、鉱人族たちが、今日の商品の準備をしていた。
サトルだけが異世界に行き来できるため、彼の手にかかって全ての商品が地球へと届く。
午前十時。イベント開始の合図とともに、光る毛玉が店内に散らばった。
「ころころっ!」
トラが飛びつき、毛玉が壁にぶつかる。
「きゃー!」
お客さんの女性たちが叫ぶ。
チビも追いかけ、トラとぶつかって転倒。
ジルは恐る恐る輪に入ろうとしたが、トラの勢いでさらに隅に押しやられた。
「ジル、大丈夫?」
サトルが声をかけるが、ジルは耳を伏せて目を大きく見開くばかり。
光る毛玉は床を転がり、ソファやテーブルの下に散乱。
きなはのんびり追いかけていたが、突然ジャンプして天井に飛びついた。
「ちょっ……!」
客の一人が叫ぶが、猫たちはお構いなし。
トラとチビが光る毛玉を奪い合い、きなが天井から降りる際にカップに衝突、コーヒーが飛び散った。
「うわっ、コーヒーが!」
みどりが慌ててタオルを持って走る。
そのとき、地下から持ってきた魔法ランプが一つ、床に落ちて光り始めた。
ランプの光が店内を虹色に照らすと、猫たちはさらに興奮。
「にゃーっ!」
トラとチビがランプの光を追いかけて激走。
きなも巻き込まれ、ジルは恐怖でカーテンの上へ逃げる。
ロンは吠えながら突っ込み、客のバッグの中に飛び込む始末。
「キャー!バッグの中に!」
客が叫び、笑いと悲鳴が混ざる店内。
サトルは冷静に指示を出す。
「イチ、監督!トラ、チビを止めろ!きなは安全ルートへ!ジル、落ち着け!」
イチが棚から飛び降り、猫たちを誘導しようとする。
トラはイチの指示で少し止まり、チビもつられて減速。
きなは慎重に床に降り、ジルは少し安心してカーテンから降りてきた。
しかし暴走はまだ終わらない。
光る毛玉はテーブルの上で跳ね、ランプの光がさらに反射して客のスマホに映る。
「面白すぎる!」
若い男性客が大興奮で撮影を続ける。
店内の混乱を見たみどりも笑いながら動く。
「サトルさん!どうしましょう、猫たちが制御不能です!」
「そのままでもいい……面白いから」
サトルは静かに微笑む。
「これがバズる最大の瞬間だ」
光る毛玉を追いかけ、猫たちは店内を縦横無尽に駆け回る。
トラがテーブルに飛び乗り、チビがそれに続く。
きなはソファの上で光る毛玉を見守り、ジルは慎重に近づく。
ロンは突っ込み担当として店中を駆け回る。
客たちは大笑いし、スマホで動画を撮影。
SNSは即座に反応。
「猫カフェ最高!」
「光る毛玉ヤバすぎ!」
「ジル可愛い!」
午後になると、光る毛玉は売り切れ寸前。
魔法ランプも徐々に購入され、店内は片付けと笑い声で溢れていた。
閉店後、サトルはコーヒーを一口飲み、猫たちを見渡す。
「今日も大暴走だったな……」
イチが棚の上から一声。
「にゃ」
ジルは少し怖がりながらも丸くなり、トラとチビは疲れて床でゴロン。
きなはソファで寝ている。ロンは満足そうに尻尾を振る。
地下扉の向こうでは、異世界の商人たちが動画を見て大笑い。
「地球の猫たち、やっぱり元気すぎる!」
森猫族が言う。
「サトル、今日も頼むぞ!」
魔導士族、蜥蜴人族、鉱人族も声をそろえる。
こうして、**森のカフェしっぽっぽ**は猫の大暴走と異世界の品で、笑いと驚きに包まれた一日を終えたのだった。




