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宝の島は戦場でした。

 列島中央部のレア・アースと天然ガスなどの天然資源に加え、東の海洋資源と背中合わせに世界最長のロング・ビーチと云う観光資源。島民を蔑ろにした行政のせいで、第二日本列島は利権争いの戦場と化していた――


「せっかく、神様が宝の島を与えても、それが、不幸の元とはねぇ……」


「まぁ、一定数、欲の皮の突っ張った人間が居るのは、仕方ないんだよ……」


「それで?」


「現在時刻に合わせて」


「OKっ!」


 めぐみは、スマート・ウォッチの時刻をデフォルトに設定すると、ボタンを押した――



 〝 ポチっとな ″



「はい、着いたっ! って、言っても、何も変わらないねぇ……」


「出来立てホヤホヤだからね。でも、紛争は起きていないでしょう?」


「あぁ……立て看板も無ければ、島民の人達も穏やかな表情をしているね」


「めぐみちゃん、さぁ、早く」


「早くって……?」


「伊邪那岐様から授かった短刀で、呪文を唱えて、大地に突き刺すんだよ」


「はぁ? そんな事をするの……呪文って何よ? 呪文なんて知らないよ?」


「何でも良いんだよ。めぐみちゃんが『豊な島になぁ―――――――れっ!』って言えば、そうなる様になっているんだよ」


「あら? 簡単なのねぇ。呪文って云うか、お願いって感じね」


「神話が大概なのは、そのせいなんだ」


「あはは。そっか、そう云う事ね。魔法使いになった気分だね。よぉ――しっ! じゃぁ……」


 めぐみは、懐の短刀を取り出して、呪文を唱えた――


「海産物が、めっちゃ美味しくて、ビーチは最高にロマンチックな宝の島になあ――――――――れっ! えぇい――っ!」



 〝 シャキ――――――――――ンッ! ピッカ――――――――ンッ! ″



 鞘から抜かれた短刀は、眩しい程の光を放った。そして、大地に突き刺すと光が大地に吸収されて行った――



 〝 ゴォゴォゴォゴォ―――――――――――――――ッ、ゴォゴォゴォゴォ―――――――――――――――ッ! ″ 



「うわぁっ! 地震っ!」


「大丈夫だよ、直ぐに納まるから。そうしたらスマート・ウォッチの画面をタイマーに設定して回すんだよ」


「タイマーにして……回すと……」


 めぐみが無造作にタイマーを回すと、火山灰と溶岩の大地は分解して土になり、草が生え始めた――


「うわぁっ! 面白い。コレって、回せば回す程、植物が育ったりするヤツ?」


「そうだよ」


「じゃぁ、縄文杉みたいなヤツが沢山有ると良いかも」


「あまり回し過ぎると大変だから、三百年位進めるのが良いよ」


「OKっ!」


 西の海岸線にはパーム・ツリーが果てしなく並び、南限にはマングローブの林が育ち、東の海岸は松の並木が続き、南国の風情と、日本の原風景を見せていた――


「なんか、凄くない? 最高じゃないの……」


「一粒で二度美味しい感じだね」


「それにしても、あの山、デカくなってない?」


「富士山はミナナロウで3776mでしょう。あの山は7770mも有るんだ。山の形状が馬の背中に似ている事から赤馬岳って呼ばれているんだ」


「凄いなぁ……でも、万年雪で真っ白なのに、どうして赤馬なの」


「美しい稜線が夕日で真っ赤に染まるからなんだよ」


「ふーん」


「さてと、後は短刀を抜いて大地の怒りを鎮めたらお終いだよ」


「OKっ!」


 めぐみは突き刺した短刀を抜いて鞘に戻した――


「これで良しっ!」


「良かったぁ。ショーティ、じゃぁ東京に帰ろう」


「うん」


 ショーティをスマート・ウォッチに戻して撤収をしようとすると、遠くの空らから八咫烏が飛んで来た――


「お―――いっ! 俺だよ俺。八咫烏だよっ! 真ん中のは足だよ。チンコじゃねぇ――からなっ! おぁ?」


「うん、知ってるよ。やっちゃんも、此処へ遊びに来たんだ? まぁ、ごゆっくり。私はもう、帰るからね。じゃあねっ! バイバイっ!」


「待て待てっ! バイバイじゃ無いだろ? まだ、やる事が残っているだろ?」


「何でよ? もう、ミッション・コンプリートだよ?」


「馬鹿だなぁ。これで、本土の連中が乗り込んで来たら、島民は大迷惑だろ――がっ!」


「あぁ……それじゃぁ……結局、奪い合いが起きるって事?」


「決まってるじゃん」


「で?」


「その、懐の打ち出の小槌で、お金をバラ撒くのっ!」


「はぁ?」


「そうすれば、国有化した一部の土地を除き、島民が全部土地を買うから、資本家や外資の進出を阻止出来るのよ。宝の島は平和になるのっ!」


「そう云う事なのね……でも、バラ撒くって言っても、まさか……」


「乗りなよ」


「えぇっ! どうやって乗るのよ、潰れちゃうよ?」


「ほらよっ!」


 八咫烏のやっちゃんが、羽を広げて何度か羽搏くと、体長は六メートルを超え、翼長は十メートルを優に超えた――


「おぉっ! それでは、遠慮なく乗らせて頂きます」


「行くぜ、確り捕まってなっ!」



 〝 バサバサッ、バサバサッ、バサバサッ、バサァ――――――――――――――ッ ″



「いやぁ、乗り心地最高っ! 鳥になった気分だよ。絶景かな絶海かな」


「遊んでないで、バラ撒くのっ!」


「はいはい。それではと……」


 めぐみは、打ち出の小槌を振った――



 〝 シャリ――――――――――――ンッ! シャリ――――――――――――ンッ! シャリ――――――――――――ンッ! シャリ―――――――――――ンッ! ″



「うわぁっ! お金が、大量に降ってるよ」


「まだ、序の口だよ。もっと、元気良く振ってっ!」


「はいっ!」



 〝 シャリ――――――――――――ンッ! シャリ――――――――――――ンッ! シャリ――――――――――――ンッ! シャリ―――――――――――ンッ! ″



「いやぁ、凄いなぁ。流石レイン・メーカー伊邪那美様の打ち出の小槌だけの事はあるよ」


「後は小笠原だけな、一気に飛ぶから、確り捕まってなよ」


「うん」


「まぁ、島民も少ないから直ぐに終わるよんっ」



 めぐみは、八咫烏のやっちゃんと共にお金をバラ撒き終え帰路に就いた。翌朝、一夜にして大自然の宝庫になった第二日本列島は、大ニュースになり、そして、殆どの土地は強欲な資本家ではなく、島民が所有する事になり、平和は確保された――





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