最強になってしまった
急激に強くなったことに戸惑ってしまうカイン。
「そういえばカイン。お前は、なぜあの森にいたんだ?」
帰り道、アイザックは、俺が森にいた理由を聞いてきた。俺は、冒険者の依頼義務規約のために、天然の薬草を採取するために森へ来ていたのだと説明した。
「なるほど。依頼義務規約ね。それでも、成長素質がオール1のお前が、単独で森へ来るなんて、自殺行為に等しい。どうして一人で来たんだ?誰かに協力してもらうとか考えなかったのか?」
アイザックの質問は最もだ。だが俺は、他の冒険者は皆に俺のことなんて相手にするわけないと勝手に思っていた。だから、一人で森へとやって来たんだ。
命の恩人であるアイザックに対して、そんなことは言えるはずがなかった。その時は、アイザックのことも信用していなかったのだから。俺は、アイザックの質問に対して、何も答えられずにいた。
「だんまりか。まあ、お前の気持ちは分かるよ。お前がこの前、冒険者ギルドに来た時、みんなでお前の事を馬鹿にしていたんだもんな。当然、俺も含めてだったのだが。
お前は、好きで成長素質がオール1になった訳じゃないのにな。あの時は辛かっただろう。なんか、悪いことをしたな。すまなかった。」
アイザックは、俺に対して頭を下げ謝ってきた。だが、アイザックは、言葉は乱暴だが、冒険者の危険性を教えてくれたり、俺の事を心配もしていたのだ。だから、アイザックのことを元々恨んでなどいなかった。ましてや、今回は俺の命を救ってくれたんだ。アイザックに対しては感謝の気持ちしかないしかない。
「謝ることなんてないさ、アイザック。あんたは、俺の命を救ってくれたんだ。俺はあんた対しては、感謝の気持ちしかないさ。」
「そうか、そう思ってくれているのなら、良かった。ところでカイン。お前は、これからどうするつもりだ?」
「どうするつもりって、アイザック、何を言っているんだ?あんたの冒険者ランクを上げる手伝いをするに決まってるじゃあないか。」
「カイン、そうじゃないよ。手伝ってくれることはありがたいが、お前は今、かなり強くなっている。おそらく、俺よりも遥かにな。だから、そこら辺にいるモンスターを倒すことなど、造作もないことだろう。それなら、冒険者職員の寮に住み込んで畑の管理をする必要は、もうないんじゃないのか?」
アイザックの言う通りだ。確かに、急激に強くなった俺は、モンスターを倒すことは、今までと比べて遥かに簡単になったと思う。それだと、危険をおかさないでレベルを2に上げるために始めた道具生成の手段である寮生活は必要なくなったんだ。
だけど、暫くは寮生活を続けようと思っている。今まで生きてこれたのは、アリアや寮長が親切にしてくれたからなんだ。二人には、本当に感謝している。感謝しているからこそ、あの畑の管理を、途中でやめようとは思っていないんだ。
「俺は、今まで通りに暫くは寮生活を続けるつもりだ。まだ、畑の管理が途中だから。あと10日くらいたてば、俺が畑の管理を始めてから、初の薬草の収穫があるんだ。それはそれで楽しみなんだ。
アイザック。あんたが依頼を受けた際に、俺に手伝ってほしい時は、いつでも寮に来てくれ。」
「お前は、すごく真面目な奴なんだな。よし、気に入った。お前がさらに強くなれるように、俺の方からも、お前を手助けしてやろう!」
そう言ってアイザックは、かなり上機嫌になり、俺の背中をバンバンと叩いてきた。なんだか、始めて仲間が出来た感じがして、嬉しくなった。
アイザックと話をしながら歩いていると、あっという間に都市に着いた。俺とアイザックはすぐに冒険者ギルドに向かい、依頼達成の処理をすることにした。
鑑定関連のフロアにて、そこの職員に、正式にボーション100本分の天然の薬草を鑑定してもらい、依頼書に依頼完了の印を押してもらった。その依頼書を、クエスト関連の窓口の職員に提出したことで、正式に依頼を達成することが出来た。
これにてようやく、冒険者になって、初の依頼達成となった。
「おめでとうございます。カイン様。依頼を達成したことにより、ランクGに昇格です。続いて、次のランクに昇格するためには、あと10回、依頼を達成することが条件となっております。引き続き頑張ってください。」
いきなり冒険者のランクが上がったことで、俺は驚いてしまった。ただ一度依頼を達成しただけなのに、どういう事だろうか?
「なんで、俺のランクが上がったんだ?俺は今回初めて依頼を達成したんだ。一回しか依頼を達成していないんだ。どうしてだ?」
俺の質問を受けて、職員は簡単に説明をしてくれた。以前は、冒険者のランクはGからスタートしていたとのこと。だが、冒険者の依頼義務規約のペナルティである、『ただの一度も依頼を達成できずに1ヶ月が過ぎてしまうと、二度と冒険者になることが出来ない』という決まりの管理を分かりやすくするために、ランクHが出来たというのだ。これだと、確かに分かりやすくなる。過去の記録を見て、ランク昇格が一度もなく、冒険者の資格を剥奪されたのであれば、と一発で確認できるのだ。なるほど、良くできたシステムだ。
どちらにしても、これから1ヶ月何もしなければ、ランクはHに戻ってしまい、さらにそこから1ヶ月何もしないと、冒険者をクビになってしまうことには代わりはない。そのことは、常に頭に入れておく必要があるな。
俺は一旦、寮に戻り、寮長に依頼を達成できたことを伝えることにした。
「寮長、なんとか、依頼を達成することが出来たよ。また、畑の管理に戻るよ。ありがとう。」
「それは良かった。その装備はお前にやるよ。これからも使っていくといい。それにしてもお前は運がいいようだな。無事に依頼を達成することができたということは、モンスターと遭遇しなかったんだな。」
「いや、モンスターに襲われたんだが、アイザックという冒険者が助けてくれたんだ。」
「なに、アイザックが?なるほど、なら、あいつに感謝することだな。でも、カイン。これからどうするんだ?また1ヶ月以内に依頼を達成しないと、ランクが下がってしまうんだ。毎回毎回誰かが助けてくれるとは限らないんだ。今回助かったのは、たまたまだと思う。本来なら、命を落としていたかもしれないんだぞ。」
寮長は、俺が急激に強くなったことを知らないんだ。だから、心配するのは当然だ。だが、どうやって説明をしようか。先程、アイザックと別れる前に、言われた事がある。
『裏スキルのことは他の者に言わないほうがいい。お前は、その裏スキルのお陰で、これからも際限なく強くなっていく。それこそ、誰もが想像もつかないくらいにな。
そんな存在を、危険と思う奴は、これからどんどん出てくるはずだ。もしくは、お前を戦争の道具として使おうとする国だって出てくるかもしれない。
お前は、もう、そういう存在になってしまっているんだ。いいか、今はまだ、俺の言うことが分からないかもしれないが、とりあえず気を付けろ。安易に裏スキルのことを言うんじゃないぞ。』
そう言っていたアイザックの表情は、かなり真剣だった。だから、裏スキルで強くなったから大丈夫だと、寮長に説明することが出来ない。だから、適当に何か言ってごまかすしかない。
「とりあえず、冒険者ギルドに、依頼を手伝ってもらえる冒険者がいないか手配するようにするよ。だから、これからは、単独で都市の外は出ないようにするから安心してくれ。」
「そうか、それなら、確かに危険は少なくなるかもしれないな。まあ、無理だけはするんじゃあないぞ。」
寮長は何とか納得してくれたようだ。報告を終えた俺は、自分の部屋に戻り、体を休めることにした。
部屋に入ることで安心したのか、俺は疲れが一気に出たのかベッドに倒れこんだ。暫くベッドの上で横になっていると、先程の冒険者ギルドのことで、不思議に思うことがあった。
鑑定関連のフロアにいた職員は、どのようにして、俺が持ち込んだ薬草を、全て天然物だと鑑定出来たのだろうか?
あの職員は、全て天然物だと鑑定するのに、それほど時間はかからなかったんだ。実際、あの森に行って薬草を探す時、俺は薬師だから、数ある野草の中から薬草を選別するのにはさほど時間はかからなかった。だが、あの職員ほど早く選別できたわけではない。
薬師である俺よりも遥かに短い時間で鑑定できることなんて、どう考えても不自然だ。
そこで俺は、あの職員の鑑定技術は、スキルなのではないかと、仮説を立ててみた。あの職員は、俺の目の前で天然の薬草を鑑定したのだ。ということは、今、この俺も『鑑定』というスキルを使えるのではないだろうか。何故なら、俺の裏スキルには、『スキルラーニング』があるからだ。このスキルラーニングは、見ただけで、そのスキルを使えるようになるというものだから。
その仮説が正しいか確認するために、俺は寮長からもらった剣を鑑定してみることにした。
鉄の剣 攻撃力プラス20
俺の目の前に、バソコン画面でよく見るようなウインドウがいきなり現れて、剣の情報が出てきた。いきなりウインドウが出て来た時には驚いたが、間違いなく、あの職員の鑑定技術は、スキルだったということが分かった。
本当見ただけで、このスキルが使えるようになっているとは、ふざけた反則のような裏スキルだ。自分自身、驚きを通り越して呆れてしまっている。
鑑定のスキルが確認できたことで、次に気になることが出てきた。それは、この鑑定というスキルは、人間をも鑑定できるのか、ということだ。
もし、人間の鑑定が出来るのならば、今の俺は、どれくらいのステータスなのか確認することが出来る。自分の今の強さを知りたい俺はすぐさま自分自身を鑑定してみた。
カイン
レベル 400
HP 400
MP 400
WP 400
攻撃力 420
防御力 420
素早さ 400
魔法力 400
魔法防御 400
得意属性 なし
弱点属性 なし
取得スキル
『道具生成の知識』
『道具生成のコツ』
『道具効果アップ特大』
『鑑定』
裏スキル
『自分自身の裏スキル診断』
『レベル上限なし』
『モンスター撃破時経験値取得100万倍』
『スキルラーニング』
『視界良好』
『事務作業』
『綺麗な声』
『リズム感』
『取得経験値1.2倍』
自分自身の鑑定も出来たということは、人物の鑑定も出来るということだ。なんと、今の俺はレベルが400にもなっていたのだ。成長素質がオール1だとしても、レベルが400にもなればとんでもなく強くなっているのだ。
力自慢の者ても、腕力の成長素質は5ぐらい。つまり、今の俺は、力自慢のレベル80相当の腕力を持っているのだ。実際、今この世界には、レベル80ある者なんて聞いたことがない。ということは、今のこの俺は、すでに世界最強クラスの腕力を持っているのだ。たった一頭のブルーウルフを倒しただけなのに。
驚いたのはそれだけではない。裏スキルのスキルラーニングのお陰で、今日目視した者全ての裏スキルを取得してしまっているのだ。あまりにも取得出来た裏スキルが多いものだから、俺は途中で見るのを止めた。
裏スキルは、戦闘に関係ないものも多数ある。だが、そんな裏スキルで非常に気になった物が一つあった。それは、『取得経験値1.2倍』というものだ。これと、俺の裏スキルを掛け合わせると、モンスター撃破時の取得経験値が120万倍となり、さらに強くなっていくペースが上がってしまっている。
俺は、自分自身が怖くなってきた。どこまでも強くなっていく自分に。他人の裏スキルを全て取得してしまうことで、さらに強くなってしまう自分に。
アイザックが言うように、あまりにも強すぎる力は、他人にとっては脅威でしかないのだ。俺は、自分の力を他人にバレないようにするための方法も考える必要があると気付いた。下手にバレたら、国際戦争にまでなりかねないのだから。




