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神官の救出

カイン達3人は、とてつもなく重い選択を迫られた。

 究極に近い選択を、短い時間で迫られた俺達。だが、答えは決まっていた。神官が殺されるのを、黙ってみていられる訳がない。だから俺達は、ノーランの言う、神官の救出に手を貸すことにした。


 するとノーランは、教会の地下に案内してくれた。教会の地下には、掘削中のトンネルがあったのだ。


「おい、ノーラン。このトンネルは、何だ?」


 思わず、俺はノーランに質問した。


「ああ、このトンネルは、地下牢に向けて掘り進んでいるものだ。前々から、少しずつ掘ってはいたんだが、今回、神官が捕まったことで、急いでトンネルを完成させる必要ができたんだ。だが、俺一人ではとても間に合わない。だから、お前達の協力が必要なんだ。」


「前々からと言ったな。もともと、何の目的でトンネルなんか掘っていたんだ?」


俺の再度の質問に、ノーランは得意気に答えてきた。


「それは、王城に侵入するために決まっている。俺達は、貴族の理不尽な政治に、うんざりしていたんだ。それでも、王がいなくなる前は、少しはマシだった。

 今回のように、口答えをしただけで処刑されるというような極端なことは、さすがになかった。大臣ベネットに権力が集中するようになってから、少しでも反論しただけで処刑される者を何人も見てきた。

 だから、何とか大臣ベネットの不正と、王がいなくなった理由を探るために、このトンネルを造ろうとしたわけだ。」


 俺達は、ノーランの後に続き、トンネル内を進んでいく。すると、途中で分かれ道が出てきた。


「ここは、合流地点だ。いくらなんでも、教会からのトンネルだけでは、何かあった時に、どうしようもない。もし、貴族と戦うことになれば、俺達にも、数が必要になる。実は俺達の仲間は『ウルプス』内に結構な人数がいるんだ。このトンネルは、『ウルプス』のある場所から続いている。いざとなれば、このトンネルから応援が来るんだ。」


 ノーランの説明を聞いていると、ウルプス方面から一人の男が近付いてきた。その男は、なんと、『双剣のトーマス』だった。トーマスまでもが、神官の仲間だったということになる。


「驚いたな。ここに、まさか『最強のレオナルド』がいるとは。ノーラン。ということは、レオナルドも仲間になったということでいいのか?それに、他の二人は何者だ?」


 トーマスは、合流するや直ぐに、俺達のことをノーランに聞いていた。ノーランは、俺達のことを軽く説明をした。すると、トーマスは俺達に興味ありげな表情で質問をしてきた。


「なあ、お前達。神官の依頼で、古代遺跡の調査に行ったのだろう?それは、『石板の遺跡』だったのか?」


 トーマスの質問は、神官が古代遺跡について詳しく知っている、という真実を告げているのと同じであった。でも、何故、トーマスがこのタイミングで聞いてくるのだろうか?トーマスの質問は続いた。


「無言ってことは、その通りだったというわけか。なら、『剣の舞い』のスキルは、やはり、あったのか?」


「やはり、とは、どういうことだ?ということは、お前が使う『剣の舞い』は、『石板の遺跡』で取得したとでもいうのか?

 それはおかしい。『石板の遺跡』は、俺達の目の前で姿を表したんだ。俺達の他に『石板の遺跡』に入れた者など、いるはずがない。」


 トーマスの質問に、アイザックはムキになって答えた。すると、トーマスは、冷静に答えてくれた。


「俺は、確かに『剣の舞い』のスキルを石板を使って取得した。だが、この石板は、神官ダニエル様から貰ったんだ。その石板は、かなり昔からレジースの教会に保管されていたものらしい。

 それで、神官ダニエル様は、古代遺跡の研究をすることで、石板の可能性に気付いたのだ。

 そこから、俺達の作戦は始まったんだ。俺達の仲間から、確実に王城へ侵入する方法はないか。

 その答えは、闘技大会、ということだ。俺達の仲間のうち、誰か一人でも優勝することができれば、ランクSへ昇格できる可能性がある。

 そのために、神官ダニエル様は、俺にスキルの石板をくれた、ということだ。おかげで、『怪力のハドソン』を消耗させることができた。結果として、ノーランの優勝となったわけだ。」


 トーマスの説明に対して、レオナルドは納得がいっていないようであった。


「しかし、その答えでは、納得できない。もし俺が闘技大会で失格とならなければ、結果は変わっていたのではないか?準決勝で俺とノーランが戦っていたら、どうなっていた?アイザック大師匠も、そう思いますよね?」


 ああ、レオナルドの奴、まだ、ノーランに勝てなかったことを悔しがっているのか。まあ、仕方ない。レオナルドだもんな。アイザックも呆れているよ。

 ノーランとトーマスも、レオナルドのキャラクターに、意外そうな表情をしている。


 俺達は、レオナルドの興奮を押さえるのに、時間をかけてしまった。まったく、緊張感のない奴だ。だが、レオナルドのおかげで、皆の気持ちに少しは余裕ができたみたいだ。この点は、レオナルドに感謝するとしよう。


 トンネルをさらに進んでいくと、少しずつではあるが、下り坂になっていく。これは、城の周りの堀のさらに下を進みつつ、地下牢へ直結させるためだという。このトンネルを造るために、神官は、できる限りの地質調査をして、設計図を作成したのだという。


 トンネルの行き止まりまで来ると、ノーランは行き止まりの壁を指差しながら、再び俺達に説明を始めた。


「今は、トンネルはここで終わりだ。ちょうど、堀の真下にいる。もう少しだとは思うんだが、ここら辺の地盤はなかなか頑丈なんでな。作業がうまくはかどらない。強引に掘ることもできるが、大きな音をたててしまうと、貴族達にばれてしまう。だから、慎重に音を立てずに作業しなければならない。でも、それだと、この頑丈な地盤は、なかなか掘ることができないんだ。

 そこで、お前達の出番というわけだ。とくに、カイン。お前の裏スキルが、神官の言う通りであれば、かなり素早くトンネルを掘ることが可能なはず。期待しているぞ。」


 説明を終えたノーランは、俺の肩を軽く叩き、俺のことを懇願する表情で見つめ、軽く首を縦に振った。これは、俺のことをかなり期待しているようだ。


 俺達は、クーデターの加担をするつもりはないが、神官の命は助けたい。だが、神官を助けるためにトンネルを完成させてしまえば、クーデターが始まる可能性が一気に高くなってしまう。


「まあ、とりあえずは、神官を助けてから考えるとするか。」


 アイザックが言ってくれた一言で、俺も、余計な心配は吹き飛んだ。その通りだ。まずは、神官の命を救うことだけ考えればいいんだ。何も難しいことではない。


 そう決断した俺は、全力でトンネルを掘ることにした。


 今の俺は、レベル40万。腕力2倍と、全能力値2倍で、腕力は160万、速力は80万ある。そこに、『腕力アップ』と『速力アップ』を使用して、腕力が320万、速力が160万。この状態で、『エクスカリバー』でトンネルを掘ってみると、どうなる?

 

 この状態で『エクスカリバー』を出すと、俺の攻撃力は、1280万だ。この『エクスカリバー』で地盤を全力のスピードで掘ると、どうなるだろうか?


 結果は、なんと、30秒でトンネルが開通してしまった。開通した先は、ちょうど神官がいる牢屋だった。


 あまりの早さに、俺を含めた全員が呆然としていた。一番驚いていたのは、神官だった。神官は、トンネルの進捗状況を知っている。当然、トンネルの建設スピードも頭に入っている。だから、このタイミングでトンネルが完成するなど、考えてもいなかったのだ。


 あまりのスピードで、全員が固まっていたが、何とか我に返った神官は、俺達も元にやって来るために、完成されたトンネルに入ってきた。


「どうして、急にトンネルが完成したんだ?」


 神官はトンネルに入るなり質問してきたが、俺の姿を見て、直ぐに納得したようだった。


「ああ、なるほど。カインがいたのか。それなら納得だ。やはり、カイン。相当な強さを手にしたのだな。」


「さあ、神官様。ここでモタモタしていると危ない。ひとまず教会まで戻りましょう。」


「いや、教会は危険だ。王都『レジース』内にいることは

、敵陣の中に残ることと同じた。今は、ウルプスの冒険者ギルドに行くんだ。」


 神官の指示を聞いて、俺達は驚愕した。なんと、トンネルのもうひとつの入り口は、ウルプスの冒険者ギルドにあるのだ。ということは、冒険者ギルドが、クーデターの本部になるということになる。


 話は、どんどん複雑になってきているような気がする。


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