球威と回転と
そして投げられたボールは少しだけ手の内の方に変化し、キャッチャーミットに納まる。
主審は右手を横に出し、声高らかに宣告した
「ットライク」
―――初球ストライク―――
平戸は知っている。
平河は必ず初球を打たずに見送る。
プロに入りたてのころは、逃げ腰と馬鹿にされていた。
一部の分かる人間には、化けるといわれたスタンス。たった一度、球を見るだけで、投手のことを分かりきる。まさにしたたかさを最初から発揮していた。
だが、抑える自身は自然とある。
強気でいかなければならない。ひしひしと肌で感じる闘志。
これこそが「闘い」だと。
古田はゆっくりとサインを出す。
―――真ん中高めストレート―――
帽子のつばを左右にゆすりながら、軽く頷く。
『闘い』をしているのならば、隠し事は無用。
ゆったりと足をあげ、軸足に全身の重みを感じながら左足で強く踏み込む。
軽く上体を捻っていた分の力を上乗せしながら、しならせながら、腕を振る。
普通、ボールは回転が多ければ多いほど揚力を得てあまり下がらない。しかし、それでもボールは一直線に進めるわけではない。
だから、極限まで回転のかけられたボールは、他の投手と比べて浮き上がるような錯覚を受ける。
平戸のストレートはまさにこれだ。
指示されたコースに本当の意味で「真っ直ぐ」に突き進む。
平河の動きがゆっくりと目に映る。
それに合わせるかのようにミットまで直進していたボールの動きがコマ送りにされたかのようになる。
何よりの特徴であるボールの多い回転だけが異質な気を放っている。
その回転数に見合うように縫い目と空気の摩擦する音が、「呼吸」が聞こえてくる。
それに合わせて、平河の持つバットが着実にボールに近づいていく。
1ヶ月ぶりの更新……(´・ω・`) 遅くなってしまいました(^^ゞ 大方、あと3話でこの辺は終わりになると思います(^_^;




