周りへの想い
―――平河が打席に入った―――
個人的にライバル視しているが、相手がどう思っているかはわからない。
誰よりも多く対決し、(他の打者に対して手を抜いてきたわけではないが)誰よりも本気で闘ってきた相手。
心の底から『真剣勝負』をしてきた相手。
これが最後の、本当の意味での最後の闘いとなってしまう。
自然と悲しく感じた。
これで、今日の試合で終わる。いや、終わってしまうと言ったほうが正しいか……。
今までは、野球をやることが普通だと思ってきた。これから先もそれは変わらない。
―――ずっと、そう思ってきた―――
19年間プロを続けてきた。何よりも野球が好きだった。
家族、特に子供たちには悪いと思っている。常に野球のことばかりで遊んであげられなかった。
それに妻にも迷惑ばかりをかけた。昔から何かと日常生活がだらしないせいか、いつも身の回りの世話をしてもらっていた。
それも、今日で終わる。
―――最後の試合で完全試合を達成する―――
それが球団への、家族への、父親への、そして相手への礼儀。
それが自らへの礼儀。
マウンドのプレートを踏む。
バッターボックスの方をみる。
それをみたスタメンマスクの古田は、サインを出し始めた。
―――内角低めカットボール―――
右手で帽子のつばを直す。古田は外角低めにミットを構える。
自分は古田のサインに従う。
自分の出せる限りの力を右手に握ったボールに乗せる。
そうすることで、死んだ『モノ』から生きている『球』になる。
自然とそう思ってきた。
ボールは風きり音という名の産声を上げて、内角低めより少し打者よりのところへ進んでいく。
更新ひさびさです(^-^;)
まだ見てくれる方がいると思うと報われます。




