小原川凛
――本日はお時間を取ってくださりありがとうございます。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
――まずはお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。
小原川凛と申します。
――小原川さんですね、ありがとうございます。小原川さんは以前、魔法少女としてご活躍されていたそうですね。
はい、中高生の頃に一時期魔法少女をしていたことがあります。
――どうして魔法少女になろうと思ったのですか?
誰かの役に立ちたいと思ったからです。
――役に立ちたい、ですか。なぜそう思われるようになったのですか?
結構踏み込まれるんですね。
――インタビューですので気になったところはつい……。不快に思われたのなら申し訳ございません。
いいえ、そういうところもあるとわかった上で受けていますので大丈夫です。こちらこそ余計なことを言ってしまいました。申し訳ございません。
――失礼いたしました。ありがとうございます。では改めてなぜ役に立ちたいと思われるようになったのですか?
そうですね…………私は三姉妹の長女で、親が不在の時などに代わりに妹たちの面倒を見たりしていたんです。自分ではできる限りやっていたつもりなのですが親にとっては不十分だったようで、よく役立たずと言われた記憶があります。お守りも家事もどうしても親の理想には届かずよく怒られていました。その頃からどうにかして親の役に立ちたいと思うようになりました。色々と考えて工夫を凝らして、効率よくやろうと努めていました。でも結局いつまで経っても親の思うような長女になることはできませんでしたが。
それがあって小学生の頃は委員会や係などを積極的にやっていました。誰でもいいから誰かしらから「ありがとう」や「役に立った」と言ってもらいたくて、誰もやりたがらないようなものでも自分から立候補して仕事を引き受けていました。頼まれたことも断らず、休み時間の大半は何かしらの仕事に割いていた気がします。
それでも足りず、もっと役に立たなければいけない、もっとすごいことをしなければいけないと思い始めた頃に知ったのが魔法少女でした。
魔獣と戦いこれを倒し、人々の生活を守る。これなら多くの人の役に立てると思い、十三歳になれば誰でも魔法少女になれると聞いた私は十三歳の誕生日当日に魔法少女になりました。
――話してくださりありがとうございます。そのようなご経験をされていたんですね。魔法少女になって「人の役に立つ」という目標は達成できたと思いますか。
…………今思い返せば誰かしらの役には立てていたのかもしれないとは思います。ですが当時は役に立っているという認識はありませんでした。役に立つこととお礼を言われることを同じことだと考えていた節があり、ただひたすらに「お礼を言われること」を追い求めてがむしゃらに戦い続けていました。
――なるほど、そうでしたか……。ちなみに中学生になって以降、委員会などはされていたのですか?
いえ、それはやっていませんでした。とにかく魔法少女として戦いたいと思っていてそれを最優先にしていたので、委員会や係の仕事をやるほんの少しの時間ですら惜しかったんです。場合によっては授業ですらも休んで一日中魔獣と戦っていました。
――そうだったんですね。それでは高校は……。
高校には進学しませんでした。ずっと魔獣を追い求めて倒してを繰り返し、たまに思い出したように最低限のお金だけ稼いでという日々を過ごしていました。
――そうなんですね。それだけ自分の時間を捧げてやっていらっしゃった魔法少女をやめてしまったのは何故なのですか?
………………ああそっか、記者さんはご存知ないんですね。そりゃ魔法少女やってなきゃ知らないか。魔法少女って任期があるんですよ。終わりと言った方がいいのかな。
――終わり、ですか?
そうです。魔法少女をやれるのは十三歳以上十八歳未満の女子だけなんです。十八歳の誕生日を迎えると変身出来なくなるんです。まぁ私も十八の誕生日が来るまでそんなことは知りませんでしたが。その日も普段通り変身して戦おうと思ったら変身出来なくなってて。私を魔法少女にしてくれた人を訪ねて変身できないことを伝えたら年齢のせいだと。
――そんなに大事な情報を事前に知らされていなかった……?
そうですね、初耳でした。魔法「少女」ですからね、少し考えれば終わりがあるなんて想像出来たはずなんですけど、当時の私にとっては魔法少女として戦うことそのものが生きる意味だったのでそんなことには考えが至らなかったんだろうと思います。
――……そう、なんですね。もしそうだとしても生きる意味だと思っていたものがいきなり無くなるのはとても辛いですね……。
……………………そうですね。もう魔法少女にはなれないとわかった時はその場にへたりこんでただただ呆然としてしまったことだけは覚えています。
――……そうですか……。インタビューとはいえ辛い記憶まで思い返して話して下さりありがとうございます……。
いえ、こちらこそ聞いていただきありがとうございます。私もずっと誰かに話したいと思っていたのかもしれません。
――あの、一つ訊ねてもいいですか?
なんでしょうか。
――魔獣と戦う時、どんな風に戦っていらっしゃいましたか?
どんな風に……?ステッキを弓に変化させて矢を放って戦っていました。
――なるほど、ありがとうございます。それでは最後に、今魔法少女として活動している方、これから魔法少女になりたいと思っている方へ一言いただけますでしょうか。
わかりました。………………魔法少女として戦える時間というのは長いようでいてとても短いものです。そして、人生における「青春」の時間というのも同じです。皆さんがどちらの時間を取るのかについて口出しするつもりはありませんが、今一度本当にその選択でいいのかどうか考えてみてもいいのではないでしょうか。私は「人の役に立ちたい」というだけでまともに学校にも行かず魔法少女として戦っていた事を今になって後悔しています。「やれば良かった」であれ「やらなければ良かった」であれ、取り返しのつかない後悔だけはして欲しくないです。ですから、自分が一番大切にしたいものはなんなのかを考えてみてもらえたら嬉しいです。
――それでは、本日は貴重なお時間をいただきまして、また、魔法少女としてたくさんの人々の生活を守っていただき本当にありがとうございました。
…………こちらこそありがとうございました。
読んでいただきありがとうございます!この作品では誤字・脱字報告、感想、レビュー等を募集しております。何かしら書いていただけると作者としてはかなり励みになります。お忙しいこととは思いますが、ぜひぜひお願い致します。




