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受付で渡された受験票には、受付番号と名前のほか、面接の開始時刻と会場となる教室の番号が記されていた。
「俺たち、同じ組みたいだな」
受験票を見比べたカイルが言った。
「本当だ。面接の時間も一緒だな」
「五人一組か。知らない奴らと一緒っていうのは、ちょっと落ち着かないな」
アルトは受験票に記された教室番号をもう一度確かめた。
面接会場は、アカデミー構内にある教室のひとつ。校舎の一角に面接用の教室が五部屋用意され、それぞれで教師たちが面接を行っているらしい。
指定された時刻が近づいてきた。アルトとカイルは受験票を手に、面接会場となる教室の前へ向かった。
廊下には、すでに何人かの受験生が集まっており、年齢の近い少年少女たちが、それぞれ受験票を確認したり小声で話をしたりしている。緊張した面持ちで黙り込んでいる者もいれば、友人同士なのか、落ち着いた様子で談笑している者もいた。
「ここだな」
カイルが教室の扉に目を向ける。扉の横には、面接会場を示す札が掛けられていた。
「時間まで、もう少しあるな」
「五人一組だったよな。あと三人か」
二人が廊下の壁際で待っていると、見知った顔の少年が歩いてくるのが見えた。
「お、アルトにカイルじゃん」
「あ、ジル」
「おー」
初等アカデミーで同じクラスだったジルが片手を上げて声を掛けてきた。二人も同じように片手を上げて返事をする。
受験票を見せてもらうと面接が同じ組だったので、そのまま三人で時間までおしゃべりをして時間をつぶすことにした。
しばらくすると残りの二人もやって来た。どちらもアルトたちとは面識のない少年と少女だったため、互いに軽く会釈を交わしただけで特に言葉を交わすこともせず、そのまま五人は指定された時刻が来るのを待った。
やがて教室の扉が開き、前の面接グループが中から出てくる。しばらくすると、一人の男性教師が室内から姿を現した。
「受付番号56番から60番までの五名ですね。では、中へ入ってください」
教師の呼びかけに、アルトたちはそれぞれ受験票を確認してから教室へ入った。
教室の中には、前方に二つの机が並べられ、その向こう側に教師が一人座っていた。案内をしてくれた男性教師がその隣に座る。
受験者用には、少し間隔を空けて五脚の椅子が横一列に並べられていた。
「それでは番号順に、こちらから座ってください」
教師に促され、五人は順番に椅子へと腰を下ろす。アルトとカイルも、それぞれ指定された席に座った。
正面に座る二人の教師は、どちらも落ち着いた様子だった。一人は手元の書類に目を落とし、もう一人は生徒たちの顔を順に見渡している。
全員が着席したのを確認すると、進行役と思われる男性教師が口を開いた。
「それでは、これより面接を始めます。まずは簡単に説明しますので、よく聞いてください」
教師は穏やかな口調で続けた。
「これから皆さんには、いくつか質問をします。質問に対しては、順番に答えてください。ほかの人が答えている間も、きちんと話を聞くように。特別に難しいことを尋ねるつもりはありませんので、あまり緊張せず、普段どおりに答えてもらえれば結構です」
そう言って、教師は一度受験生たちを見渡した。
「それでは、始めましょう。まずは受付番号と名前、それから出身を順番にお願いします」
進行役の教師に促され、五人の受験生が順番に自己紹介を始めた。
「受付番号56番、レステル・エルディです。ロザリエル村から来ました」
「57番、ルーシー・ホルスターです。隣町のフェルデンから来ました」
「58番、アルト・フェルナードです。グレイスフィールド出身です」
「59番、カイル・ソルブレイズです。同じくグレイスフィールド出身です」
「60番、ジル・ベルナーです。同じくグレイスフィールドに住んでます」
「はい、ありがとうございます」
教師は手元の書類に目を落とし、五人分の名前を確認した。
「では次に、皆さんが当アカデミーへの進学を希望した理由を聞かせてください。これも順番にお願いします」
最初の少年は、家業である商売を継ぐために計算や読み書きをもっと勉強したいと答えた。次の少女は、将来のことはまだ決めていないものの、もっと多くのことを学びたいと話す。
それぞれの回答に教師たちは頷きながら耳を傾け、必要に応じて簡単な確認を挟んでいった。
やがて、アルトの番になった。
「将来は騎士になりたいと考えています。そのために、中等部では魔法や武術について、より深く学びたいと思い、進学を希望しました」
「騎士ですか。いい目標ですね」
進行役の教師が穏やかに頷く。
「騎士を目指そうと思ったのは、何かきっかけがあったのですか?」
「はい。父が騎士なので。人々を守るために働く姿に憧れたのが、一番の理由です」
「なるほど。お父さんの影響なのですね。では、騎士になるために今から何か取り組んでいることはありますか?」
「体力をつけるために、日頃から鍛錬をしています。まだまだ足りないことばかりですが、これからも続けていきたいと思っています」
「分かりました。目標に向かって努力することは大切です。これからも頑張ってください」
「はい。ありがとうございます」
教師は短く頷くと、手元の書類に何かを書き込んだ。
続いてカイルに視線が向けられる。
「進学を希望した理由は?」
「できるだけいい就職先に付きたいと思ったからです。たくさんのことを学んで、自分にできることを増やしていきたいと思っています」
「ふむ。先程のホルスターさんと、少し似たような理由ですね」
「はい。うちは母子家庭なので、将来的に母に苦労をかけないようにしたいと思っています。そのためにも、今のうちにしっかり勉強しておきたいと思ってます」
「なるほど。お母さんのことを考えての進学なのですね」
教師は感心したように頷いた。
「立派な考えだと思います。将来のことをしっかり考えているのですね」
「いえ、まあ…できれば楽に暮らしたいっていうのもありますけど」
「それも大切なことですね」
少し照れ臭そうに答えたカイルに、教師が口元に微かな笑みを浮かべた。
「では、ベルナー君。進学を希望した理由を聞かせてください」
「初等部を卒業したら、そのまま中等部に進むものだと思っていたので」
「…それだけですか?」
「はい」
あまりにもあっさりした返答に、教師は一瞬だけ言葉を止めた。
「何か、将来やってみたいことはありませんか?」
「今のところは特に決まっていません。これからいろいろ学んでいくうちに、見つかればいいと思っています」
「そうですか。確かに、まだこれからですからね」
教師はそれ以上追及することなく、手元の書類に目を落とした。これで五人全員の志望動機を聞き終えたことになる。
それを確認すると、もう一人の教師が口を開いた。
「それでは、ここからは一人ずつ、個別に質問をさせてもらいます。難しく考えず、素直に答えてください」
そう言って、教師は左端に座っている生徒へと視線を向けた。
「では、エルディ君。初等部で最も興味を持った授業は何ですか?」
「算術です。家の手伝いで商品の値段や売上を計算することがあるので、授業で習ったことが実際に役立つのが面白かったです」
「なるほど。学んだことを実生活に生かせているのですね」
教師は頷きながら、手元の書類に目を落とした。
「では、次にホルスターさん。初等部で最も得意だった科目は何ですか?」
「読み書きです。小さい頃から本を読むのが好きだったので、文章を読んだり書いたりするのは得意です」
「そうですか。本を読むのが好きなのですね。中等部でも、ぜひその力を伸ばしてください」
「はい」
続いて、教師はアルトへと視線を向けた。
「フェルナード君は、中等部で特に学んでみたいことはありますか?」
「はい。魔法と武術です。騎士を目指しているので、どちらも今まで以上にしっかり学びたいと思っています」
「なるほど。騎士になるために必要なことを、幅広く学びたいということですね」
「はい」
「分かりました。目標を持って学ぶ姿勢は大切にしてください」
教師が頷き、今度はカイルへと視線を移す。
「ソルブレイズ君は、苦手なことや、これから努力したいと思っていることはありますか?」
「体力をもっとつけて、もう少し鍛えたいと思っています。あとは、勉強も苦手なものをなくして、全体的にそつなくできるようになりたいです」
「なるほど。苦手なことにもきちんと向き合おうとしているのですね」
「はい。できることは多い方が、将来の仕事を選ぶときにも役立つと思うので」
「確かに、それは一理ありますね」
教師は感心したように頷くと、最後にジルへと視線を向けた。
「では、ベルナー君。将来の目標はまだ決まっていないとのことでしたが、何か興味のあることはありますか?」
「興味のあることですか?」
ジルは少し考えるように視線を上げた。
「そうですね…。強いて言えば、魔法には興味があります。初等部では基礎的なことしか習わなかったので、もっといろいろなことを知りたいです」
「魔法ですか。何か、特に気になることがあるのですか?」
「いえ、まだそこまでは。どんなことができるのか、実際に学んでみたいと思っています」
「そうですか。中等部では学べることも増えますから、興味のある分野を見つけていけるといいですね」
「はい」
ジルの回答を最後に、五人への質問はひと通り終わり、このグループの面談は終了となった。
五人が退室して教室の扉が閉まると、進行役を務めていた男性教師が手元の書類をまとめる。そうしてもう一人の教師に話しかけた。
「どうでしたか?」
隣に座っていた教師が、生徒たちの記録に目を通しながら答える。
「全体的に素直で、受け答えもしっかりしてましたね。特に問題のある子はいなかったと思いますよ」
「そうですね。志望動機もそれぞれでしたけど、年齢を考えれば十分でしょう」
「フェルナード君は騎士志望でしたね。父親の影響もあるみたいですが、目標がはっきりしているのは好印象ですね」
「ええ。日頃から鍛錬もしていると言っていましたし、向上心もありそうです」
そうして書類を一枚めくる。
「ソルブレイズ君は、なかなか現実的な考え方をしていますね。家族のことを考えて進学を決めたなんて、しっかりした子です」
「一方で、ベルナー君はずいぶん気楽な様子でしたけど」
「ははっ。まあ、あれくらいの年齢なら珍しくないですよ。これから興味のあることを見つけていけばいいでしょう」
「確かに。魔法に興味があると言っていましたし、入学してからどう変わるか楽しみですね」
「そうですね。では、次の組を呼びましょうか」
二人は書類を整えると、次の受験生たちを迎える準備を始めた。




