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【第19話】レオス、現れる

武術大会の会場は、朝から熱気に包まれていた。

王族が見守る特別な大会とあって、観客席はぎっしりと埋まっている。


セレナは、ヘリオス殿下の隣に座っていた。


「緊張しているのかい?」

殿下が柔らかく微笑む。


「い、いえ……」


(どうして……こんなに胸が苦しいの)


推しのレオス様が出るかもしれない。

その期待で胸が高鳴っているはずなのに——

隣に座る殿下の存在が、なぜか落ち着かない。


開会式が終わると、殿下は立ち上がった。


「少し席を外すよ。大会運営の者に呼ばれていてね。

 すぐ戻る」


「……はい」


(殿下も忙しいのね)


そう思いながらも、胸の奥がざわついた。


——そして、準決勝。


場内アナウンスが響く。


「準決勝——レオス選手、入場!」


(……レオス様!?)


心臓が跳ねた。


闘技場の扉がゆっくりと開き、

漆黒の甲冑をまとった剣士が姿を現す。


胸元のデルフィニウム。

左手の剣。

足音のリズム。


「……レオス様……?」


思わず立ち上がりそうになる。


(でも……何かが違う……?)


隣の席は空いたまま。

ヘリオス殿下はまだ戻っていない。


その空席が、なぜか胸を締めつけた。


レオスが剣を構えた瞬間、

セレナの心は完全に奪われた。


(あの所作……あの左手……

 やっぱり……レオス様……!)


観客席が揺れるほどの歓声。

セレナは息を呑んだまま、ただその姿を見つめ続けた。


(殿下……早く戻ってきて……

 この試合を一緒に……)


そう願った自分に気づき、胸がさらに苦しくなる。


レオスが一歩踏み出す。


その瞬間、

セレナの心臓も同じように跳ねた。

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