表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/30

【第11話】翌朝のざわつき

朝の光がカーテン越しに差し込んでいるのに、

セレナの体はまだ夜の余韻に包まれていた。


(……レオス様……)


名前を思い浮かべただけで、胸が熱くなる。

昨夜の光景が、まぶたの裏に焼きついて離れない。


漆黒の甲冑。

左手の剣。

青い紋章。

そして――

自分の方向を向いた、あの一瞬。


(……夢みたい)


ぼんやりと鏡の前に座っていると、

侍女ミーナがくすりと笑った。


「お嬢様、なんだか……恋する乙女みたいですよ?」


「っ……!?」


セレナは思わず背筋を伸ばした。


「こ、恋なんて……そんな……!」


「だって、顔がずっと赤いんですもの」


(赤い……? そんなはず……)


鏡を見ると、確かに頬がほんのり染まっている。


(これは……違う。違うはず……)


レオスのことを思い出すと胸が高鳴る。

でも、ヘリオス殿下を見ると胸が苦しくなる。


(どうして……こんなに心がざわつくの)


自分でも分からない感情に、胸が落ち着かない。


ミーナが髪を整えていると、

ノックの音が響いた。


「お嬢様、王城より使者が参りました。

 ……第二王子殿下がお越しです」


「っ……!?」


胸が跳ねる。

理由は分からない。

ただ、ざわつきが一気に広がった。


急いで身支度を整え、

セレナは応接室へ向かった。


扉を開けると、

朝の光を受けた金の髪が目に入る。


ヘリオスが立っていた。


穏やかな微笑み。

けれど、セレナの胸は――

なぜか苦しくなる。


「おはよう、セレナ嬢」


「お、おはようございます……殿下」


ヘリオスは少しだけ眉を寄せた。


「顔色が……良くないように見えるが?」


「い、いえ……大丈夫ですわ。

 ただ、少し寝不足で……」


ヘリオスは心配そうに近づいた。


「寝不足……? 熱はないか?」


すっと手が伸びる。

セレナの額に触れようとしたその瞬間――


胸がぎゅっと締めつけられた。


(……どうして、あなたを見ると苦しくなるの)


レオスを見たときの高鳴りとは違う。

もっと複雑で、もっと痛い。


セレナは思わず一歩下がった。


「だ、大丈夫です……!

 風邪ではありませんから……!」


ヘリオスの手が空中で止まる。


「……そうか。

 無理をしないでほしい」


その声は優しいのに、

セレナの胸はさらにざわついた。


(どうして……こんな気持ちになるの……?)


理由が分からない。

分かりたくもない。


ただひとつだけ確かなのは――

昨夜のレオスの姿が、まだ胸の奥で輝いているということ。


ヘリオスは少し息を整え、

静かに言葉を続けた。


「ちょうど近くへ来る予定があったんだ。

 急ではあったが……様子を見に寄らせてもらった。

 もしよければ――少し、散歩でもしないか?」


その誘いに、

セレナの胸がまたざわつく。


けれど、断る理由も見つからない。


「……はい。少しだけなら」


小さくうなずくと、

ヘリオスはほっとしたように微笑んだ。


その笑顔に、

セレナの胸はまた苦しくなる。


(……どうして)


自分でも分からない感情が、

静かに、しかし確実に膨らんでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ