第5章 「世界のどの作者が、女性の瞳ほどの美を教えられるだろうか?学びとは、我ら自身への付属物にすぎない。」 [Part 1 of 2]
別の場所で、同じ頃。
カテドラルの者たちが、カテドラルにて彼らの最強の騎士――ウォレスの容体を必死に回復させようとしているその時、二人の老いた司祭は、国境門の近くにある地下牢へと向かい、ぼろぼろになって監禁されているセシリアのもとへ歩み寄っていた。
独房の中で、セシリアは両手に繋がれた鎖に吊られるようにして立ったまま眠っていた。
白い肌のほとんどを、痣と傷が覆っている。傷のない残りの部分にも、泥と汚れがべっとりとこびりついていた。
そして、もともとは真っ直ぐだった赤い髪も、今では濡れて乱れ切っている。
「おお、罪人よ! 目を覚ませ! いま、神の声を伝える者として選ばれた我ら二人が、お前に会いに来たのだ。喜ぶがよい!」
二人の老司祭は、ぴたりと声を揃えて叫んだ。
その正しい呼びかけを聞き、セシリアはゆっくりと両の瞼を開いた。
セシリアはその二つの声に聞き覚えがあった。二人の声は少し歪み、こもってはいたが、それでもセシリアには分かっていた。
彼らは、かつて皇帝によって「その声を伝える者」として任じられた司祭たちなのだ、と。
彼ら二人の言葉はすべて神の言葉、彼ら二人の命令はすべて神の命令、そして彼ら二人の思考さえもまた、神の思考。
――だが、彼らが言い、崇めている神とは、一体誰なのか?
彼らの神は、そこにいる。
おそらく今ごろ、この世界で最も荘厳にして最も神聖な宮殿の中にある玉座に腰かけ、静かにそこにいるのだろう。
彼は見守り、彼は守り、そして人類を、自らを滅ぼしかねない知識から遠ざけている。
そう、彼は知っているのだ。いずれ人類は、自らの行いによって自分たちを滅ぼすのだと。
そして同時に理解している。もし彼が表へ出て、人々と並んで生きるようになれば、人々はきっと彼を、善と悪の両方の標的にしてしまうだろう、と。
だからこそ、皇帝はこれからも隠れ続ける。あまりにも高く、あまりにも大きな、聖なる天の国の中に。
「ふん。神は天にあり、世はすべて事もなし……か。」
セシリアは役に立たない呪文のように、そう小さく呟いた。
「おお、罪人よ! よく聞き、そして答えよ! 我らは、お前が真実を語っているか、それとも虚偽を述べているかを見抜いている! ゆえに、偽りなく語るがよい! その善き行いは、お前を再び生まれ変わらせ、聖なる魂として天の国へ導くであろう!」
老いた司祭の一人が、そう声高に告げた。
その宣言の最中、セシリアは、かすかな囁きを耳にした。
それは、夜明けの風のように微かで、滑らかな呪文の詠唱だった。
(……どうやら、片方の司祭が私の言葉を見抜くための魔術を使っている。もう一人は、私を尋問する役……)
セシリアはそう内心で判断した。
「かしこまりました。もちろん、私はすべての問いに正直にお答えいたします。神の声を伝える御方であるあなた方のために、私は聖なる魂として生まれ変わり、その天の国に生きるためなら、いかなることでもいたしましょう。」
セシリアはそう答えた。
司祭の一人の口元に、わずかな笑みが浮かぶ。
「その言葉が真実であることを願おう、罪人よ。――では答えよ。お前は、我らが聖騎士ウォレスに何をした?」
「わ、私は……いいえ、私たちは、ただ彼の傷を手当てし、看病していただけです。」
「“私たち”とは、誰のことだ?」
「家族と……一人の友人です。」
「ウォレス聖騎士が、この十三日もの間、跡形もなく姿を消していたことを知っているか?」
老司祭は、わずかに声を強めて問い詰めた。
「……そのことは、家族や友人も知っていました。ですが、村に混乱が広がるのを恐れて、私たちはそれを隠していました。それに、その間ずっと、彼は私たちの家で深く眠り続けていたのです。」
セシリアは、怯えるように声を落としてそう説明した。
「では、なぜその件を我らに報告しなかった!?当然、我らは直ちに兵を派遣し、迎えに向かったはずだ!」
司祭は怒声を張り上げた。
「お金……」
「……実は、私たちは皆、ウォレス様をお救いすれば、感謝され、その治療の対価をいただけるのではないかと考えていたのです……」
セシリアはか細い声でそう答えた。
その言葉を聞いた瞬間、老司祭の顔は怒りで真っ赤に染まる。
彼はすぐさま、部屋の隅で詠唱を続けているもう一人へと視線を向けた。
「……兄弟よ。この者は嘘をついている。」
低く詠唱を続けていたもう一人の司祭が、静かにそう告げた。
「この下劣な罪人め! 看守! 左手に、用意しておいた熱湯を浴びせろ!」
尋問していた司祭が命じた。
「やめて! 待ってください!」
セシリアは鎖から逃れようともがきながら叫んだ。
だが、その叫びはその場の誰にも届かなかった。
看守の一人が、何のためらいもなく、桶一杯の熱湯を、鎖に繋がれたセシリアの左手へと浴びせる。
「――あああああっ! 痛い! どうしてこんなことをするのですか!?」
鋭い臭いが、その場に一気に立ち込めた。
それはあまりにも強烈で、鼻腔を焼き、喉と肺の奥まで侵してくるような匂いだった。
「くそっ……くそっ……くそっ! どうしてこんなことをするの!? くそっ!! 痛い……あまりにも、痛い……っ!」
セシリアは地面を踏みつけるようにして叫んだ。
「知るがいい! これはすべて、お前のためなのだ! 覚えておけ、この程度の熱は地獄の炎にも劣る! ゆえに真実を語れ! さもなくば、この熱よりもはるかに激しい地獄の業火に焼かれることになるぞ!」
老司祭はそう言い放った。
その言葉を聞き、セシリアは俯いたまま、歯を強く食いしばった。
左手に走る激痛は鋭く、やがて一部は感覚が鈍くなり始めている。
「……っ、旦那様……私は、嘘をつきました。隠すつもりがあったのは事実です……今の私の迷いも、きっとご理解いただけるかと……」
「もし、彼が傷を負っていると申し上げれば、あなた方は武装した使者を村へ差し向けたでしょう……そしてご存じの通り、我が村には、聖騎士や兵、そして聖都の者たちを妬み、憎む者も多くおります……」
「だからこそ、私は……耐えることを選びました……」
「……一人を守るために、すべてを失うよりは、ましだと思ったのです……」
セシリアは、次第に弱まる声でそう答えた。
尋問していた老司祭は、セシリアの言葉に嘘がないかを見極めている兄弟へと視線を向けた。
だが、その司祭はただ静かに首を横に振るだけだった。嘘は見当たらない、という合図だった。
「……よかろう。その意図は理解した。では話せ。お前は、いかにして我らが騎士ウォレスを見つけたのだ?」
老司祭は問いを続けた。
セシリアは深く息を吸い込んだ。
胸は締め付けられるように痛み、呼吸すら苦しい。それでも、声だけは静かに保とうとする。
「……不毛な山の谷で、疲れ果てていた時のことです……一人の男の、助けを求める叫びが聞こえました……私はすぐにその場へ向かいました……すると、一人の騎士が、オークに追われていたのです……」
「ですが……その騎士は強そうに見えましたので、何か策があるのだと思い……私は遠くから様子を見ていました……戦いの邪魔も、そして彼の誇りを傷つけることも、したくなかったのです……」
「……ですが、その騎士は本当に追い詰められていて……私は助けに入りました……その時に出会ったのです……予言の英雄、ウォレス様に……」
そう言って、セシリアは再び息を整えた。
「……オークだと? なぜ我らの騎士が、その程度の魔物に手こずる?」
老司祭は、隣の司祭へと視線を向ける。
だが返ってきたのは、再びの無言の首振りだった。
「……その後、私は気を失っていた彼を見つけ、夜のうちに自宅へと運びました……だからこそ、彼を看病していたことは、誰にも知られていないのです……」
セシリアは静かに説明を続ける。
二人の司祭は沈黙したまま、何か理屈を探るように思考を巡らせている。
その戸惑いを察したかのように、セシリアは冷や汗を流しながら、さらに言葉を重ねた。
「……そして十三日後、彼は目を覚ましました……ですが、自分の居場所が分からないと言い……私に、自分の住まいまで案内してほしいと頼んできたのです……」
「……なぜ断らなかった? 罪人であるお前たちが、我らの許可なく聖都へ入ることは禁じられているはずだが?」
嘘を見抜く術を用いていた司祭が問いかける。
「……最初はお断りしました……ですが、彼は命を救われた礼として、報酬を払うと約束したのです……それで私は、深く考えずに引き受けてしまいました……」
「ですが、今は後悔しています……なぜなら――」
「……私は、彼に騙されたのだと感じているからです……私の敬意も、犠牲も、すべて弄ばれただけ……まさか、あのウォレス様が……私が彼のために罪を犯すことになるなど、理解していなかったとでも言うのですか!?」
セシリアは涙を滲ませ、司祭たちを見据えて叫んだ。
その叫びを受け、二人の司祭は言葉を失い、ただ俯いたセシリアを見つめていた。
「痛い……苦しい……! 私は、彼が傷つき、無力だった時、その身を守るために必死だったのに……! それなのに、あの人は私に何を返したというのですか!? ただ弄ばれただけではありませんか!」
セシリアはなおも顔を伏せたまま、叫び続ける。
「私はただ、静かに生きたかっただけ……そして聖なる魂として生まれ変わり、この都で、あるいは天の国で――皇帝と共に在りたかっただけなのに……! それなのに、ご覧なさい……聖騎士ですら、この私の敬意を欺き、弄んだのです!」
セシリアの声は震えながら、空気を切り裂いた。
焼けるように痛む涙が、地面を濡らす。
その嗚咽は、そこにいる「清き者」たちの胸を締め付け、そして、その焼け爛れた傷は――まるで罪人そのものを焼き尽くすかのようだった。
必要な情報を得た二人の司祭は、無言のまま踵を返し、外へと向かう。
「看守よ! その罪人の女を解放せよ! この試練が、彼女の罪を削ぎ、神へと近づけることを願う!」
そう言い放ち、二人の司祭は、疲弊しきったセシリアを残して去っていった。
彼らの足音が遠ざかっていくのを確認した瞬間――不意に、汚れたその顔に、小さな笑みが浮かぶ。
「……ふん。案外、容易いものね。」
先ほどの熱湯の痛みなど、まるで感じていないかのように、セシリアはそう呟いた。
KK:やっほー! ここまで読み続けてくれて、本当にありがとう! (≧∇≦)/
???:はい、皆様がこのライトノベルを読んでくださったこと、心より感謝申し上げます。 m(_ _)m
KK:あっ、そうだ! 追加のお知らせがあるんだ…… (^▽^)/
???:その“追加”っていうのは、お前の不用意さと無駄話のせいで生まれたものだろ…… (¬_¬)
KK:そんなに怒らないでよ……今ちょうど、それをみんなに伝えようとしてたところなんだから。
???:はいはい……それと、ちゃんと謝るのも忘れるなよ。
KK:わかった、わかった……この度は私たちの不手際を、どうかお許しください…… m(_ _)m
???:(ん? “私たち”?) (¬_¬)
KK:嬉しさのあまり、読者の皆様にとっても私たちにとっても大事なことを、うっかり忘れてしまっていたんだ……
???:(どうでもいい……)
KK:それでは、お知らせです! +。:.゜ヽ(≧∇≦)ノ゜.:。+
『本作の更新は、毎週日曜日と水曜日、夜七時に行います!』
『また、“Part X”と表記されている章(例:Part 1)は、その続き(Part 2)を翌日に公開します!』
『どうかご理解いただき、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします!』
『本当にありがとうございます。そして、どうか生き続けて、自分の幸せを見つけてください!』
(¬‿¬) (๑˃̵ᴗ˂̵)و やった!




