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予言が語らなかった「英雄」の意味  作者: クリームコーラ


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第11.5章 「汝の友たちよ、その忠誠を試した者たちよ、鋼の輪で魂に縛り付けよ。」[Part 2 of 2]

やがて――マリーの魔法による治療が終わってから、三分が経過した。


今、疲れ切った二人の女は、セシリアの家の木の床に横たわり、部屋の天井をぼんやりと見つめていた。


「ねえ、セシリア……まだ生きてる?」

マリーは隣に横たわるセシリアへ問いかけた。


「……ああ、まだ生きてる」

わずかな間を置いて、セシリアは答える。


「よかった……正直言って、さっきは自分が殺しちゃうんじゃないかって、ちょっと怖かったのよ」

マリーはそう呟いた。


「……あんた、私をどれだけ弱いと思ってるの? さっきも言ったでしょ。あんたの魔法なんて、もう何千回も見て、何千回も味わってるって」

セシリアは力なく言い返す。


「またその無駄に高いプライド……ほんと、ヨボヨボのくせに」

マリーはそう言って、隣に横たわるセシリアの顔を見やる。


「少なくとも、あんたよりは綺麗よ」

セシリアは弱々しくも、どこか挑発的な笑みを浮かべて返した。


「へぇ? 本当に? もしかして、私の顔、もう忘れちゃったんじゃない?」

マリーはからかうように、目の前の銀の瞳を覗き込む。


「たった数日で忘れるわけないでしょ」

セシリアは短く答えた。


魔法のランタンの灯りの下、セシリアの瞳の奥をじっと見つめながら、

マリーはゆっくりと、その頬に手を伸ばし、優しく触れた。


「ねえ……それ、治してみようか?」

マリーは静かに問いかける。


その言葉を聞き、セシリアは小さく息を吐いた。


「言ったはずよ。あんたの魔法じゃ無理。これは“神様”への捧げもの……正確には、私の魔法儀式の代償よ。

 私が差し出したのは、腕や足じゃない。“感覚”そのもの。だから、体は今もちゃんと残ってる。……つまり、あんたには治せない」


セシリアはそう説明した。


「でも……まだ分かってないでしょ? 私の治癒魔法が、どこまで通用するのか」

マリーは問い返す。


「必要ないわ。――もう、分かってるもの」


その返答の直後、

マリーの手のひらが触れている頬から、微かな脈動が伝わってきた。


「……マリー。もし失望したくないなら、これから言う二つのことを、ちゃんと聞きなさい」


「一つ目。確か、あんたは前にも一度、私の“感覚”を治そうとして――失敗してる」


「二つ目。あんた、自分の病気の母親を治そうともしたでしょ……」


「――そして、あの人は死んだ」

セシリアはそう言った。


その二つの言葉を聞いて、マリーは一瞬だけ沈黙した。


「……母は、本当に病気が原因で死んだの?」

マリーは問いかける。


「いいえ。心臓発作よ。あの人の身体と心は脆すぎた……何年も積み重なった痛みに、耐えきれなかったの」

セシリアは答えた。


「……そっか」

マリーは短くそう返した。


否定はない。

それどころか、その冷たい答えに対して、驚いた様子すら見せなかった。


だが――


マリーという女は、再び身体を寝返らせ、

二人はまた、天井を見上げる姿勢に戻る。


「……それで。あの“青年”はどうしてるの? もう学校に行き始めてる?」

セシリアは尋ねた。


「ああ、あの子ね! ははっ、危うく忘れるところだったわ。今ね、あの子、完全に全校生徒の笑いものになってるのよ。はははっ。聞いた話だと、もう何人かの生徒は調子に乗って、あの子をいじめ始めてるみたい」

マリーは大きく笑いながら言った。


その話を聞き、セシリアは眉をひそめ、視線だけをマリーの方へと向ける。


「……ねえ、分かってるでしょ。その青年、“ウォレス”じゃないわよ?」

セシリアは確認するように言う。


「もちろん。でもさ、ああやって苦しんでるのを見ると、すごく気分がいいのよね。正直に言うと、私も含めて、多くの生徒があの子の不幸を見て喜んでるわよ? はははっ」

マリーは笑いながら答えた。


「……はぁ。どうでもいい。どうせウォレスは、昔からずっと敵を作り続けてきた人間なんだから……」


セシリアは、不意に言葉を途中で止め、そのまましばらく黙り込んだ。


「……なんだか、あいつのこと……少し可哀想に思えてきたわ」


「……決めた。明日、学校に行く」

セシリアはそう言った。


「え、本気? その身体の状態で、本当に学校に行くつもりなの?」


「ああ、本当に行く」

セシリアは答える。


「でも、その……今が昼か夜かも分からないんでしょ? それに、明日の朝、ちゃんと起きられる自信あるの?」

なぜか疑うような口調で、マリーは問いかけた。


「……そうね。たぶん無理。正直に言えば、これから先も、ずっと区別なんてできないと思う。でも――」


「心配いらないわ。だって、“歩く目覚まし”があるもの」

セシリアは続けた。


「歩く目覚まし?」


「ああ。あんた、今夜はここに泊まりなさい。朝が近づいたら、あんたと一緒にあの母親の家に行くついでに、朝食も持っていく。どう?」

セシリアはそう提案する。


それを聞き、マリーはセシリアの方へ視線を向け、ため息をついた。


「……ほんと、面倒なババアね。いいわよ、あんたの“歩く目覚まし”になってあげる。でも、その分、報酬は上乗せだからね。いい?」


「当然よ。でなきゃ、どうして今まであのアルケミストのために働いてきたと思うの? あいつが欲しがる素材は、ほとんど“禁忌の森”でしか手に入らない。だから誰も依頼を受けたがらない。でも、そのおかげで――今は、私だけがそれを取ってこられる。だから、それなりの報酬を得られているのよ」

セシリアは説明した。


「へぇ……じゃあ、お金持ちってこと?」


「……いいえ、そうでもないわね。もし全部が終わったら、その時は……喜んで全部、あんたに渡してあげる」


「本当に!?」

マリーは嬉しそうに声を上げる。


「ええ、もちろん。だから――」


「……絶対に、私を裏切るなんて考えないで。これは、私にとって最後の機会なの」

セシリアはそう言いながら、傍らに置かれていた刀の一本を強く握りしめた。

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