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転生先にマカロンがないからどうにかこうにか作ってみたよ  作者: 櫻木サヱ
真似される甘さ

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本物を選ぶ人たち

朝の市場は、少しだけ静かだった。


いつもなら聞こえる呼び声が、間を空けて響く。

屋台の数も、少ない。


「……今日は、静かだな」

「噂が回ったんだろ」


ガルドが、短く言う。


「……噂?」

「本物と、そうじゃないやつのな」


しぶ甘菓を並べる。


形は、相変わらず揃っていない。

焼き色も、少しずつ違う。


だが、匂いは、はっきりしている。


最初に足を止めたのは、あの女だった。


「……やっぱり、ここよね」


籠を抱えた、最初の客。


「……他で、買いましたか」

「ええ」


少し、困ったように笑う。


「名前が同じで」

「……でも、違った」


一つ、買っていく。


「……これ」

「家で、分かるのよ」


それだけ言って、去った。


次は、少年だった。


「……半分、ください」

「……今日は、一つ分、あるか」


硬貨を差し出す。


「……全部、払えるようになった」


少し、背が伸びている気がした。


昼前。


売れる速度は、早くない。

だが、止まらない。


「……これ、前と同じ?」

「……城のやつだよな」


そんな声が、ぽつぽつ聞こえる。


偽物の屋台。


値段は、さらに下がっていた。


「……売れてないな」


ガルドが、視線を向ける。


「……名前だけじゃ」

「……足りないんだ」


昼過ぎ。


年配の男が、黙って一つ買った。


一口。


何も言わない。


二口。


「……変わらん」


それだけ言って、二つ目を置いた。


「……持って帰る」


言葉は少ない。

だが、確かだった。


夕方。


箱の中は、ほとんど空。


残りは、二つ。


「……全部は、売れたな」


「……ああ」


派手な勝ちじゃない。

拍手もない。


だが。


「……覚えられた」


それが、分かった。


片付けの途中。


若い職人が、近づいてきた。


「あの」

「……名前、使って、すみませんでした」


「……もう、作ってないのか」

「……味が、続かなかった」


頭を下げて、去っていく。


城へ戻る道。


夕焼けが、穏やかだった。


「……勝った、とは言えないな」

「……でも」

「……選ばれた」


ガルドが、頷く。


「それで、十分だ」


厨房に戻る。


ルークが、窯の前にいた。


「……市場、どうだった」

「……悪くない」


「……名前」

「……戻ったか」


「……育った」


ルークは、少しだけ笑った。


「……面倒な道だな」

「……不器用だからな」


窯に、火を入れる。


いつもの匂い。


「……しぶ甘菓は」

「……もう、俺だけのものじゃない」


だが。


「……俺が、作り続ける限り」

「……俺の味だ」


それでいい。

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