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転生先にマカロンがないからどうにかこうにか作ってみたよ  作者: 櫻木サヱ
真似される甘さ

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23/25

城の中の反発

城の厨房は、相変わらず忙しい。


だが、空気が少し違った。


視線が、刺さる。

声が、減る。


「……分かりやすいな」


窯の前に立つと、ひそひそとした声が聞こえる。


「市場上がりだろ」

「王の気まぐれだ」


「専属のくせに」

「外にも出てるらしいぞ」


聞こえないふりをするには、少し多い。


「……来たか」


料理長が、低い声で言った。


「何か、ありましたか」

「ある」


奥の作業台を示す。


そこには、別の菓子が並んでいた。


白く、整った形。

城の職人が作ったものだ。


「……似てますね」

「似せたんだ」


料理長は、隠さなかった。


「城専属の菓子だ」

「お前だけに、任せるわけにはいかん」


「……当然です」


「だがな」

「不満が出ている」


「……俺に?」


「お前が、王に近い」

「それが、気に入らん者もいる」


不器用な俺でも、分かる。


妬みだ。

立場だ。

縄張りだ。


「……どうすれば」


料理長は、しばらく黙っていた。


「味で、黙らせろ」

「それだけだ」


分かりやすい。


作業に戻る。


卵を割る。

砂糖を量る。


だが、背中に視線が集まる。


「……なあ」


声をかけてきたのは、年配の菓子職人だった。


「お前の菓子」

「軽すぎる」


「……そうですか」


「城の菓子は」

「満足させるものだ」


「……俺のは」

「……日常の菓子です」


「王城に、日常を持ち込むな」


強い言葉だった。


一瞬、手が止まる。


だが、深呼吸して続ける。


「……王が」

「……それを、望みました」


「……っ」


言葉は、事実だ。


年配の職人は、何も言わず去った。


昼過ぎ。


試食の時間。


城の職人の菓子と、しぶ甘菓が並ぶ。


見た目は、向こうが上。

揃っていて、美しい。


だが。


「……重い」

「……一つで、十分だ」


そんな声が、漏れる。


しぶ甘菓の方。


「……もう一つ」

「……手が、止まらない」


小さな声。

だが、確かだ。


ルークが、横でぼそっと言う。


「……勝ったな」

「……勝ってない」


「……負けても、いない」


「……そうだ」


料理長が、静かに言った。


「城の中は、面倒だ」

「だが」

「結果は、嘘をつかん」


その日の終わり。


年配の職人が、近づいてきた。


「……名前は」

「……しぶ甘菓、です」


「……覚えておく」


それだけ言って、去った。


完全な和解じゃない。

だが、拒絶でもない。


厨房を出る。


夕方の風が、少し冷たい。


「……城の中も」

「……市場と、同じだな」


「……売れるか」

「……残るか」


不器用でも、やることは変わらない。


作って、出す。


それだけだ。

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