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Vol.77

 テスト1日目が終了した。

「はい、郵便です」

 それだけ言うと帰る準備をしている未散の机の上に衣は聖から預かっていた例の手紙を置いた。

「……え、なに」

 未散は不思議そうに衣と紙を1回ずつ見た。

「ちょっとぉ、なによその感動薄いのは」

 やっぱりあげない、と衣は手紙を取り上げた。

「ありがとありがと、すっごい嬉しいですっ!」

 ちょうだいよぉ!と未散は衣の袖を掴んだ。

「やっぱりダメじゃん、未散はこのデジタルの時代にアナログにこだわる男の気持ちがわかってない」

 優太も未散の席に寄って来て、全然その言葉の意味をわかってないで聖の受け売りそのままで未散に嫌味を言った。

「じゃ、ミッション終了なのであたし達は帰るね」

 いつになく素っ気ない感じで衣は未散の席から離れた。

「……あ」

 自分の背中をなんだかとても不思議そうな顔をして見ていた未散に衣は振り向いた。

「今日はもう泣いちゃっても自分でなんとかするか西倉くんになんとかしてもらってよ?!あたしはもうやらないからね!」

「ちょ、ちょっとなによそれ!」

 衣がこれまた未散を突き放すような言い方をするので未散は慌てふためいた。

「そうそう、今日は俺たち見て泣き崩れんじゃねーぞ、1人でとぼとぼ歩いてんなよ!」

 優太も未散に振り返るとこれまたわけのわからないことを言い散らした。

「大丈夫かなぁ」

 優太まで何なのよ?!と大声を張り上げる未散を完全に無視して、教室を出て優太と昇降口に向かいながら衣はすでに心配していた。

「聖が回りくどいことを言わず、未散が早とちりしなければ」

 優太は『大丈夫なための条件』を述べた。

「そこが心配なんじゃない」

 やっぱりそうよねぇ、とため息をつきながら衣は上履きを脱いだ。

「ま、俺たちは勉強でもして待ってるしかないからなぁ。……あ、そうだ、衣さ数学の問題で……」

 優太の心配はすでに明日の自分の数学の点数に変わっていた。

「……それ、前にあたしも教えて西倉くんに教えてもらった問題じゃないのよ。もう!何聞いてんのよ?!」

 ほんっと信じらんない!と衣は優太の腕をバシッと叩いた。

「優太は人の恋路を心配してる場合じゃないよ……あたしは優太の進級のほうが心配になってきたわ」

 言いながら衣は靴を履いた。

「進級は大丈夫だけど赤点が心配かな」

「そういう問題じゃないでしょ?!」

 どこまでも呑気な優太に衣はまた怒って優太の腕をはたいた。

「なんだよ……俺だって頑張ってるんだからさぁ、ちょっとくらい助けてくれよ。本当はこんな高校に来れる頭なんか俺にはなかったのに……」

 2度も衣に叩かれた腕を「痛い……」と優太は口を尖らして自分でさすった。

――またそうやってかわいいこと言うんだから。

 そんな優太を横目で見ながら衣は優太に気づかれないように優しく微笑んだ。

 自分と一緒にいたくてバスケで高校に行くのをやめてまで苦手な勉強を頑張ってくれた優太に衣はやっぱり敵わないのだ。

「わかりましたわかりました。じゃあ今からやりましょう、優太くんに個人指導」

 はい行くよ、と衣は優太の手を引いた。

「衣先生、できるようになったらごほうびありますか?」

 とっても嬉しそうな優太はすでに生徒、いや……児童になりきって衣に引っ張られるままついてきていた。

「勉強は自分のためにやるものです、そんな不純なことではいけませんよ」

 しかし真面目な衣はおふざけ優太を許さない。

 実に当たり前のことを優太に言っていた。

「えー!……じゃあやんない」

 急に優太は立ち止まると全くもって無意味な駄々をこね出した。

「あのねぇ」

 この男は……っと思いながら衣は優太に振り向いた。

「なんだよ、衣は先生って前に俺の彼女じゃねーのかよ」

 小学生の膨れっ面みたいな顔をして優太は衣に文句をつけた。

 どうやら優太は『ごほうび』ということにかこつけて衣としたいことがあるらしい。

「だって……勉強どころじゃなくなるじゃん……」

 優太の言動にようやくなにが言いたかったのかわかった衣はもじもじと反論した。

「そんなことない、俺はもっと頑張れるぞ」

 何がそんなに偉いのか優太は胸を張り腕を組んだ。

「じゃあ優太くんの頑張り次第ということで。……これでいいんでしょ?!」

 衣は顔を真っ赤にして優太にキレぎみに言った。

「わかった、俺頑張るわ。衣、行くぞ」

 言うや否や今度は優太が強引に衣の手を引いて前を歩き出した。

「……決断早っ」

 そんな優太に衣は突っ込みを入れつつついていく――。


 未散がいなかったら話すことさえできない2人だった。

 でも今はもう未散の手をはなれてちゃんと2人で歩み出している。

 こんにちは、愛梨です。


 珍しく昼間にアップしてみました。


 前回予告したとおり、今回は優太と衣のラストパフォーマンスでお送りしました。

 いかがでしたでしょうか。

 多分この2人っていつまでも夫婦漫才やり続けるんだろうなぁ……と思いながら書いてました(笑)。

 ちなみにこの2人が再登場するのは、前々からお話させている佳佑&理コンビが主人公の話の中で比較的話が進んでからになるかと思います。

 どこで出てくるかをよかったら楽しみにしてくださればと思います。

 とはいっても……特に部活の後輩ってわけでもない衣の方は恐らくほとんど、いやもしかしたら全く出てこないかもしれません。

 もし読んでくださっている人の中で衣ファンの方がいれば……すんません(汗)。


 ということで、次回が最終回になります。

 多分アップは年明けになると思います。

 というのも……例によって手直しをしてたんですがなんか私の頭の中で泥沼化してしまい、今はにっちもさっちもいかない状況に追い込んでしまったので(汗)。

 なので実はまるっきり書き直そうかとまで考えています。

 なので……すみませんがしばしご猶予を頂きたく思います。


 それでは年明けにお会いできればと思います。

 みなさんよいお年を!

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