Vol.65
未散は部室に向かって廊下を歩いていた。
彼女が歩く足音以外は何ひとつ聞こえない。
――やっぱりもう部室出ちゃってるかなぁ。
人のいる気配が全くしないので戻ろうかと足を止めた。
でも、「あと少しで部室だから」とも思って未散はまた右足を前に出す。
角を曲がり男子バスケ部の部室のドアが見えてきた。
だが人の影は、ない。
未散はまた立ち止まっていた。
――ドアの前まで行っていなさそうだったら戻ろうかな。
そうしようそうしよう、と1人頷き未散はまた歩き出した。
そしてほどなくして部室ドアの前に来た。
――なんかやけに静かだなぁ……。
どこかですれ違ったかな、と思い未散は昇降口に戻ろうとした。
だがその時、なぜか部室のドアのノブに目がいってしまった。
――一応回してみようかな……。
未散は手でドアのノブを掴みひねってみた。
――え、う、嘘っ。
てっきりカギがかかっているとばかり思っていたので、ドアのノブが勢いよく回ったことに焦った。
――おっと。
未散は少しだけバランスを崩した。
ドアのノブが回ったついでにドアが開いてしまったのだ。
「聖くんごめん、かってに開けちゃ……」
それが、未散の笑顔が凍りついた瞬間だった。
着替え中だったら悪いなと思い、未散は謝ろうと言葉を発しながらドアを開けた。
だが途中でやめてしまった。
自分の目に入っきたものに未散は言葉を失った。
目の前に見えているのは、未散の声が全く聞こえていない様子で横顔が衣によく似ている彼女を愛おしそうに抱きしめている聖の姿だった。
聖の腕で少し隠れているけれど間違いなく2人はただ抱き合っているわけではないのは容易に理解できた。
そしてさらに見えたのは、彼女の左手に小さく輝く指輪――。
――どういうこと?なんなのこれ……?
自分の手が冷たくなっていくのを未散は感じていた。
目の当たりにしているこの現実に未散は目を逸らすことも逃げ出すこともできない。
なにかで固められたかのように足も動かない。
「……なにしてるの?」
それを言うのがやっとだった。
未散の声に最初に気がついたのは彼女の方だった。
幾度と唇を重ねてもまだ足りなくて名残惜しそうに彼女は聖からはなれると「……あなた誰?」という顔で未散を見た。
「日和先輩どうしたんですか……?」
まるで過去にも何度もしていたかのように自分の指に彼女の髪を絡ませながら聖も彼女の視線を追うようにこちらを見た。
「吉岡……!」
聖の表情は驚愕へと急変していた。
未散は1歩、また1歩とあとずさる。
すぐに背中が壁にぶつかった。
「…………っ!」
声が出なかった。
未散は腰が抜けそうになりながら壁づたいに右に歩き出していた。
「吉岡っ!」
聖の自分の名前を叫ぶ声を聞いたのと同時に未散は走り始めていた。
なにも考えられないままただただ走った。
足をもつれさせながらも必死で足を動かした。
何度も何度も「吉岡待って!」という聖の追いかけてくる声に止まりそうになりながらも、聞こえないフリをしてひたすら走った。
昇降口に着き、上履きを脱ぎ、右手で下駄箱に上履きを押し込み、シューズを取り出して床に叩きつけるように置いて、履いたかどうかの状態でまた走り出す。
だが、相手は優太とコンビを組める男。
未散がもたついている間に追いつかれた。
「吉岡、お願いだから待って……!」
聖は走りながら精一杯手を伸ばし未散の左手首を捉えた。
未散は聖に背を向け、そして聖は未散の背中を見ながら、その場で大きく肩で深呼吸を繰り返していた。
こんばんは、愛梨です。
ぎゃあ~!!
で、出たっ!!(汗)
……って感じでしょうか(笑)。
未散にとってのラスボス、日和。
かなりの強敵でございます。
だって未散の存在を聖から抹殺しちゃいましたからね(汗)。
で……勇者未散(?)は今回は……逃げてしまいました(苦笑)。
でも聖が追いかけてきて未散は捕まった!
さぁどうなる?!
……って、本文はシリアスなのにここはこんなにおちゃらけでいいのか?(汗)
さぁさぁ未散はどうするのか、聖は何を言ってくるのか、気になる人は次行ってくださいね!
ということで、またです。




