Vol.63
11月17日、午後6時――。
未散は昇降口で腕をこすりながら聖が来るのを待っていた。
――今日はマフラーだけじゃ寒いなー。
うぅ寒いーっ、と言いながら壁に寄りかかりしゃがんだ。
そしてジャージのポケットから少しよれよれの4つ折りされた紙切れを取り出した。
その紙切れは今朝優太から貰ったものだ。
「未散、はい」
その紙切れを貰う前、未散はバッグに強引に入れていたせいで潰れてしまった袋を目の前に出された。
「……なにその袋」
未散はその袋を寄こそうとする優太にしかめ面をした。
「なんだよいらねーのかよ、誕生日だからせっかく衣と買ったのにさ。……じゃあいいよ、未散になんかやらん」
袋を未散の前に出したときは得意げだったのだが、未散の反応にぶすっとふてくされながら優太はその袋をまたバッグにしまおうとした。
「あーあーあーあー!欲しい!欲しいです!ありがたく頂戴いたしますっ!」
まるで敵からボールを奪うような勢いで未散はその袋を優太の手から捥ぎ取った。
「もう!誕生日プレゼントの袋だったらバッグに押し込まないでよ!」
貰った分際で偉そうに未散は優太に文句をつけた。
「別にいいじゃねーかよ、タダの袋なんだからさ」
それに対して優太は実にガサツなというかある意味男らしいというか、そんな反論をした。
「……まぁ、いいか。未散、おめでと」
なんだろなんだろ、と隣でニコニコと笑って袋を開ける未散を見て優太は苦笑い。
「……あ、あとコレも」
そう言いながらポケットからよれよれになっている紙切れを優太は取り出すと、未散の前に出した。
「……なにそのゴミ」
未散は「自分で捨てなさいよ」という顔をした。
「あっそ、わかった、じゃあいいよ捨てるよ……あーぁかわいそうになぁ、おまえ読まれずに捨てられちゃうみたいだよ……」
わざと涙声を作りそのどう見ても紙くずにしか見えない紙切れを掌において優太はさも愛おしそうに撫でた。
「せっかく聖直筆の手紙なのにさぁ……」
「……だったらもっとちゃんと保管してよ!」
聖直筆、の言葉に未散は優太の掌を見てすぐさまその紙切れをかっさらった。
「ま、楽しみにしてなよ。今日はすんごいことがあるから」
優太は未散を見上げニッ、と笑った。
今日誕生日だよね。おめでとう。
練習試合が終わってからの時間を、俺にください。
多分優太や小橋からも貰うんだろうけど、俺からも誕生日プレゼントを考えていますので。
とりあえず、昇降口に集合ということで。
それでは――。
とても男の人が書いたとは思えない綺麗な字が並んでいた。
優太に貰ってからもう数え切れないくらい何度も読んでいるが、そのたびににやけてしまっていた。
しかし笑ってみても寒いものは寒い。
――ちょっとならいいよね。
そう思いながら未散は食堂へ缶コーヒーを買いに立ち上がった。
5分後。
もしかしたら待たせたかもしれないと思った未散は走って昇降口まで来たが、聖の姿はなかった。
――まさか聖くんはそんなことしないよねぇ……?
これがもし優太なら間違いなくどこかに隠れていて後ろからこっそり出てきて「わっ!」とかやるのだが、聖は性格的にそれはないとは思いながらもなんとなく隠れられそうなところに足を運び覗いてみた。
だが当たり前のことだがやはり聖はいなかった。
――まだ部室にでもいるのかな……。
未散は持っていた缶コーヒーをバッグに入れ部室に向かって歩き出した。
だがこの3分後に何が起きるのか、このときの未散は知る由もない。
こんばんは、愛梨です。
未散ちゃん、ただ今幸せいっぱいでございます。
でも最後に書いたとおり、この3分後にはあることを目撃します。
それは未散にとってなんなのか……。
……はい!
気になる人は次行ってくださいね!←またこれかい(苦笑)
ということで、またです。




