Vol.61
聖が部室でそんなことになっている頃、今週掃除当番の優太は掃除を終えて持っているバッグを振り回しながら廊下を走っていた。
角を曲がると見知らぬ制服を着た女のコがこっちに向かって歩いてくる。
――あれって確か今年インターハイベスト4まで残った高校の制服だよな……。
もしかしたら自分が行ったかもしれなかった高校の制服だなぁと思いながら、優太はその制服を着ている彼女をなんとなく見た。
その時、ふと彼女も優太を見た。
「……嘘、並木優太!?」
彼女は目を丸くしながら優太を指差しいきなり人の名前を大声で呼んだ。
「やーん嘘だぁ!本物じゃん!」
彼女はまた大きい声で独り言を言い優太に駆け寄ってきた。
――な、なんだこの女?!
優太の方は思わず身構えた。
「あの、突然ごめんなさい。あたし雨貝って言います。並木くんの活躍、インターハイの予選で見てました。会えるなんて思ってなかったからちょっとびっくりしちゃって」
彼女は優太の目の前に来たかと思うと一気に喋りだした。
「あの、握手してもらっていいですか?」
そして彼女は今度はおもむろに優太に右手を差し出した。
「あぁ、はい……」
完全に彼女のペースに飲み込まれた優太はのそのそと右手を出した。
「よしっ、これでみんなに自慢できる」
彼女は優太の手を強引に繋ぐとぶんぶんと振った。
「どうもありがとう」
彼女は手をはなしながら優太に笑いかけた。
――背がでかい、社交的な衣……。
いいえどういたしましてと返しながら、優太は自分と対して背の高さが変わらない彼女になんともいえない不思議な感覚に襲われた。
「あの、すみません、ウチの学校に親戚とかいません?」
「いないけど、どうして?」
聞かずはいられない優太は彼女に実にくだらない質問をしていた。
彼女の方はというと案の定首をかしげた。
「……いや、いいです、ハイ」
ついつい知り合いで似ている人がいると言ってしまうベタな質問を優太は彼女にしてしまっていた。
「……もしかしてこの高校にいるのかな、彼女」
ふと雨貝と名乗った彼女は独り言のようにつぶやいた。
「え?」
優太は彼女の独り言が聞こえてしまったのでつい聞き返した。
「あたしね、この高校でバスケをやっているコで中学のときの後輩がいるんだけど、彼に言われたことがあるの、『小学校の同級生に似ている人がいた』って」
彼女はそう答えると優太に微笑んだ。
「……それってもしかして聖のこと?西倉聖」
聞かずにはいられない優太はつい彼女にたずねるような言い方をする。
「そうだけど……え?!なんでわかるの?!」
彼女にとっては予想外の展開だったのだろう。
実に正直な感想を述べてきた。
「俺と聖と雨貝さんのそっくりさんは、その、友達なんで」
事実を話そうとも思ったが説明するとややこしくなると思い、優太はかなり省略して彼女に説明した。
「そう、そんなこともあるんだね……」
納得したように彼女は頷いた。
「けど……驚いたなぁ、まさか並木くんや聖がウチの学校のライバルチームになるなんてねぇ」
急に話を変えて彼女は腕を組み始めた。
「てっきり後輩として入ってくるもんだと思ってたから。並木くんも……あと聖もね」
「すんません、裏切ってしまって」
別に謝る必要はないのだがなんとなく悪いような気がして優太は彼女に軽く頭を下げた。
「いいえ。その代わり徹底的にリサーチさせてもらうから、覚悟してね」
じゃあまたねと彼女は優太ににこっと笑うと優太の横を通り過ぎた。
――俺の気のせいかな。
優太は廊下を足早に歩く彼女の後ろ姿を追いかけていた。
聖の名前を自分が、そして……彼女自身が言ったとき、ほんの少しだけ彼女の顔の表情が変わっていた。
それは懐かしそうであるけれどどこか悲しそうだった。
――なーんかわけアリっぽいなぁ……。
聖に聞こうかどうか彼女の背中を見ながら、優太は「どうすっかな……」と頭をポリポリ掻いた。
こんばんは、愛梨です。
今回も最初で最後、優太と日和でお送りしました。
日和を見て優太もビックリしてました。
多分相当衣に似てるんですね(苦笑)。
それにしても……優太は自分のことにはドンカンなのに、何で他人のことにはこんなにビンカンなんでしょう?
まぁ、人間そんなもんですけどね(苦笑)。
さてと次回ですが、おっと……実はけっこう久しぶりですね。
優太&聖でお送りします。
聖が初めて話す元カノの話を優太はどう聞くのでしょうか……。
ということで、またです。




