Vol.55
聖と日和の出会いはよくある話だった。
この頃すでに優太は県内のバスケットボール界では実力はもちろんのこと、見た目のかわいらしさも手伝ってちょっとした有名人だった。
小学4年の終わりに親の都合で転校してからは一度も連絡を取ったことはなかったが、同じフィールドにいればまた優太に会えるかもしれないと思って中学から聖もバスケを始めた。
このときの日和はというと男女バスケ部兼任のマネージャーだった。
それが理由で2人は出会ったわけだ。
我が校の小野小町――そう日和は男子から称されていた。
なぜ小野小町なのかというと、見た目の美貌とは裏腹にどんなにカッコいい男に言い寄られてもピシャリと一言、
「ごめんなさい、気持ちは嬉しいけどあたしはそんな気ないから」
と、ことごとく跳ね除けてきたからだ。
一体誰がこの現代に蘇った小野小町を落とすのかと噂するのは日常茶飯事だった。
しかし聖から見た日和の第一印象はというと正直あまりよくなかった。
別にこれは日和が悪いのではなく単なる偶然に過ぎなかったのだが、外見があまりにも衣に似ていたのだ。
だから同級生達や先輩達が、
「雨貝先輩、かわいい!」
「日和のそのつれない仕草、最高だね」
と、日和をまるでアイドルのように崇めている輪の中にはどうしても入れなかった。
――ちっくしょう、古傷が痛むなぁ……。
特に衣とそっくりな日和の笑顔を見るたびに聖は日和を遠ざけるようにしていた。
だから日和とは社交辞令というか挨拶ぐらいしかしなかった。
だが、聖が入部した2ヶ月後には状況が変わっていったのだ。
「西倉、ちょっと来い」
練習が終わってめいめいが帰ろうとする中、顧問が聖を呼んで手招きした。
「……はい」
聖は顧問に駆け寄った。
「西倉、今日からボディーガードを頼まれてくれないか」
「ボディガード、ですか?」
何を言い出すんだこのオッサンは、と聖は心の中で眉をしかめた。
「今朝雨貝が『部活を辞めたい』って言い出してな。理由を聞いたら帰り道が怖いって言うんだよ」
顧問の話はこうだ。
ここ1ヶ月ぐらい、日和は帰り道に見知らぬ男に声を掛けられたり追いかけられたりしているらしくて、それに耐えられなくなっているらしい。
しかもそれをしてくる男が1人2人じゃない上に全く知らない男のため余計に恐怖心が募っているらしいのだ。
「一応警察には届けは出してみたらしいけどそれだけじゃ心細いから、今日から雨貝を家まで送ってやってくれ」
「……なんで俺なんですか?」
挨拶しかしたことがない女と帰るなんてできれば避けたいもの。
聖は断る理由を探そうと顧問に質問を返した。
「おまえが隣にいればよっぽど勇気ある馬鹿な男じゃなきゃ近づいてこないだろうというのと、あとおまえだけなんだよ、雨貝のことついでに送れる距離に家があるのが」
他の連中は遠回りになっちまうからなぁ、と顧問は聖の質問に答えた。
「それにもう1つ言うと……雨貝の要望でもあるんだよ」
「……なんですかそれは」
顧問の一言に聖は思わず突っ込みを入れた。
「多分他の男だとかえって危険な気がするんじゃないのか。でもおまえならそれがなさそうって雨貝は思ってるらしい」
なんだまだ質問があるのか、と言いたげに顧問は腕を組み始めた。
「……いえ、わかりました。はい」
どうあがいても断るのは無理と思った聖は観念してしまった。
――どうすんだよ、何話せばいいんだよ……。
部室に戻りながら聖は深くため息をついた。
こんばんは、愛梨です。
日和が厄介な理由、わかりました?(笑)
そうなんです、なんと日和は笑った顔が衣に瓜二つ、なんです。
だからできるだけ接触しないように努力する聖だったんです。
でも、似てるってだけで他はぜんぜん違うなんてことはよくある(というよりそれが普通)のに、なんせ中坊ですから割り切れないわけです(苦笑)。
いやはやすっかり困った聖くんですが日和はというと……?
では次回は、渋々一緒に帰るハメになった聖と日和が聖を指名した理由について迫っていこうと思います。
ということで、またです。




