Vol.46
15分後。
当番の引継ぎを済ませた佳佑と理は階段を下りていた。
目的地は『メイド喫茶』。
「どんなんかなどんなんかな……あ!」
理は佳佑をほっといて1人わくわくして歩いていると入り口で笑顔でお辞儀をしている衣を発見した。
「ちょっとあれヤバいだろ。かわいすぎるっ!」
いても立ってもいられない理は佳佑をおいて走り出した。
「衣ちゃんかわいいっ!持って帰りてぇ!」
理としては挨拶程度というかたいした意味もなくひしと衣にしがみつきぴょこぴょこ跳ねた。
「や、やめてくださいっ!なにすんのよっ!」
誰に飛びつかれたかわかってない衣はおもいっきり理のスネを蹴っとばした。
「いてーっ!」
衣が蹴ったところはまさに弁慶の泣き所、今度は半べそになりながら理はぴょこぴょこ跳ねた。
「……ふ、福原先輩?!大丈夫ですか?!」
恐怖に慄きながら相手を見て、その相手が理とわかると衣は慌てて理の傍に寄った。
「ご、ごめんなさい、大丈夫ですか……?」
「うん、大丈夫……」
痛いよぉ、と呻きながら理はスネをさする。
「ほんと、ごめんなさい、すみません……」
衣も理と一緒に彼のスネをそっとさすった。
「謝らなくていいよ、どう見ても理が悪い」
のんびり歩いていた佳佑がようやくメイド喫茶の入り口に着き、ポケットに手を入れしゃがみ込む2人の前に立ち止まった。
「あ、小田先輩。……あ、違う違う。いらっしゃいませ、ご主人様」
衣は立ち上がり佳佑にお辞儀をした。
「かわいいね」
佳佑は犬か猫の頭を撫でるようにして衣の頭に手を置いた。
「ありがとうございます」
衣はニコニコしながら佳佑に礼を述べた。
「あ!佳佑先輩っ、なにするんですかっ?!」
たまたま入り口にいる衣と佳佑を見ていた優太が怒って走ってきた。
「おう並木、お前もカッコいいじゃん」
佳佑はそう言うと衣から手をはなして優太の頭をぽぽん、と掌で叩いた。
「へへ、そうですか?」
本当は「衣に何するんですかっ!いくら先輩でもダメですっ!」って言いにいったはずなのに、佳佑に褒められてそんなことは優太はすっかり忘れ照れ笑いする。
「……そういえば吉岡は?」
佳佑は今はメイド喫茶店となっている優太たちの教室を見渡した。
「いますよ、ほら」
優太は中を指差した。
「……あーあれが噂の『超エロカワイイメイドさん』か」
佳佑は中を覗き込んだ。
「呼びましょうか?……未散っ、おい未散っ!」
優太は未散を呼んで手招きすると、 未散はびく、と肩を上げ振り向いた。
――なんで佳佑先輩が?!
穏やかな笑顔で手を振ってくれる佳佑に未散は引きつる。
「な、なんですか?冷やかしお断りですよっ」
未散は顔を引きつらせたまま佳佑に向かってずんずん歩いてきた。
「馬子にも衣装……」
「……え?」
いつのまにか佳佑の後ろにいた理がぼそっとそう言い、その声に反応して3人は理を見る。
「ふーん、吉岡ってなんだかんだいっても女だな。いいじゃんそれ」
めずらしく理は素直に褒めた。
「……そうですか?」
未散は不安そうに上目遣いで理と佳佑を見る。
「うん。かわいいかわいい」
佳佑は未散の頭も衣や優太と同じように撫でてやった。
「お気遣いありがとうございます」
未散は佳佑と理に頭を下げた。
「気なんか使ってないよ。噂どおりの『超エロカワイイメイドさん』だと思うよ、なぁ理……って、あら」
佳佑が横を見るとすでに理はいなかった。
佳佑が前を見ると、理はちゃっかり衣に案内され、優太に「ウチの店員に気安く触らないで下さい!」と怒られながら先に中に入ってしまっていたのだった。
「どうした、浮かない顔して」
なんとなく元気がない未散が気になり佳佑は未散の顔を少し覗き込んだ。
「そんなの人によりますよ。似合わないって思う人もいるし……」
未散はいじけた様子で佳佑に答えた。
「そんなこと言うヤツがいるのか。おかしなヤツがいるもんだな、あの理が素直に褒めたのに。それ誰?俺も知ってる人?」
佳佑は腕を組み納得できない顔を未散に向けた。
「……聖くん」
未散は蚊の鳴くような声で答えた。
「西倉かぁ……」
思ったとおりの答えだったがそう思われないように佳佑は未散に返した。
――あいつのことだ、多分この姿に照れちゃってまともに見れなかったんだろうなぁ……。
エプロンの裾を持っていじいじしている未散を見ているうちに、佳佑はなんだかとってもかわいそうなってきてしまった。
……実は佳佑、自分が未散を見ているだけあって未散が聖を想い慕っていることも、聖も未散を見ているのもとっくに気がついていた。
また、聖の性格もたった2週間しか付き合っていないのに見事に見抜いていたのだ。
――しょうがない、助けてやるか。
佳佑は「全く世話が焼ける」と思いながらも未散に呼びかけた。
「吉岡」
「……はい」
佳佑が声を掛けると、未散は相変わらずしょぼんとした顔で佳佑を見上げた。
「世の中にはいろんな男がてさ、並木みたいに思ったことは何でも口にするのもいれば理みたいなのもいるし、あとは……そう思えば思うほど言葉が出なくて先に顔や態度に出るのもいる。これは俺の勘だけど、西倉はそのタイプだと思うよ?」
「…………」
そんなことないですよあたしには似合わないんですよどうせ、という表情で黙ったまま自分を見る未散に佳佑は微笑んだ。
「なんなら並木あたりに聞いたらどうだ?何か聞いてるかもしれないし」
「……もういいんです、ほんとに」
「あ、吉岡?!」
未散は客に「すみませーん!」と言われたタイミングで佳佑から逃げるようにして中へ行ってしまった。
――これは、本人に言わせるしかなさそうだな。
やれやれ、と思いながら佳佑は苦笑するとため息をついた。
こんばんは、愛梨です。
いかがですかね、学園祭編は。
それにしても、佳佑ってどこまでお人よしなんだろう……書いている私が思います(笑)。
しかも今なら充分未散に入り込めるのにねぇ……。
ま、そのへんについてはおいおい書いていきますので気になる方はどうか読み進めて下さい(笑)。
さて。
次回も引き続き学園祭編でお送りします。
密かに佳佑は聖にあることを漏らすのですが……。
何を言うのか、気になる方は次回をお読み下さい。
それでは、またです。




