Vol.45
これを読もうとしている方にお願いです。
私の操作ミスで順番が逆になっています。
これはVol.45なんですが、これより前にVol.44があります。
で、Vol.44のほうは次にアップしています。
なので、Vol.44を先に読んでからこちらに来てください。
ご迷惑をおかけします、すみません……。
本文はしばらくスクロールしていけば出てきますので少々お待ち下さい……。
廊下を歩いているとすれ違う男子生徒が全員振り返る。
理由は簡単だった。
みんなみんな未散だなんて思いもしないで、
「な、あれ、誰?!」
と噂しているのだ。
「未散って誰もわかってねぇのがおかしい」
優太は未散の隣でくくくくっ、と笑った。
「おい並木、小橋に言いつけるぞ、誰だよ隣の美女は」
廊下で作業している隣のクラスの男バス部のコが優太に声を掛けてきた。
「バーカ、未散だって」
疑うなら見てみろって!と優太は彼に手招きした。
「……嘘だぁ!」
作業中の手を止め、彼は未散を見に来た。
「……吉岡?」
彼は顔を見て確認する。
「……うん」
未散はおどおどしながら小さく頷いた。
「……めっちゃかわいいじゃん!」
うおーやられたー!と彼は1人で騒ぎ出した。
「だろ?明日来いよ、未散このカッコすっから」
優太は彼にそう告げて聖のクラスに向かった。
「よし……未散ここで待ってて」
あんまり聖のクラスに近いと未散にバレると思った優太は急に未散を立ち止まらせた。
「え、優太は?!」
1人取り残されるのが怖い未散は思わず優太のシャツの裾を掴んだ。
「心配すんなって、すぐ戻る」
優太は「放せ」と未散の腕を取り払うとそのままどこかへ行ってしまった。
――もーやだよー優太どこ行ったのよぉ……。
未散は廊下の端っこでできる限り小さくなって優太をひたすら待った。
――いたいた。お、聖も男前じゃん。
聖の教室に着いた優太はずんずん中へ入っていった。
「聖!」
「おう、どうした」
ちょうど浴衣の着付けが終わった聖が優太に振り返った。
「聖ってなにすんの?」
優太は聖の浴衣姿をまじまじと見る。
「あぁこれ?明日はテキヤの兄ちゃんってとこ?」
「あ、そっか。それで浴衣なのか」
「俺としてはあっちの方がいいんだけど、なんせ俺がでかすぎてあれ着るとつんつるてんになっちゃうんだよね」
聖はクラスの男子が着てる『寅さんスタイル』を指す。
「つんつる……?」
語彙力の乏しい優太は聞きなれない言葉と格闘する。
「要するに、俺があれ着ると丈が短すぎてカッコ悪くなっちゃうんだよ」
「なるほどね……でもいいなぁ、やっぱ背があると浴衣姿カッコいいわ」
優太は羨望の眼差しで聖を見上げた。
「あ、そうだ。聖ちょっと来いよ、見せたいモンがあるんだ」
すぐ終わるからさ、と優太は聖の手を引いた。
「いいけど、なに?」
「いいから、来ればわかる!」
聖の質問には一切答えず優太はぐいぐい聖を引っ張った。
「……なにしてんだよ」
聖を連れてきた優太は影に隠れてこそこそしている未散の頭を後ろから小突いた。
「ちょっと、どこ行ってたのよッ?!」
こんな格好で廊下に1人にさせられびくびくしていた未散は半分涙目になって優太を睨みつけた。
「……吉岡?」
優太の後ろから浴衣姿の男が顔を覗かせてきた。
――ひ、聖くん?!
最近は挨拶ぐらいしかしてなくったって覚えているその声に一瞬未散の心臓は跳ね上がった。
「……お疲れ」
聖は遠慮がちに未散に挨拶した。
「聖、どう?最初はさ、俺とおんなじ格好する定だったんだけど、これ大好評だからちょっと見せに来てみた」
優太はまるで聖に差し出すように未散を聖の前に立たせた。
――やべぇ……直視できないよ……それいきなり見せるの反則だろ……。
目の前にいる未散のあまりの変身ぶりに聖は目線が定まらない。
その上どんどん顔が火照っていく。
「…………」
聖は思わず目を伏せてしまった。
――やっぱりヘンなんだ……!
未散も未散で聖に目を逸らされてこの上なく恥ずかしくなってくる。
「あたしもう帰る!」
未散は優太を押しのけ一目散に駆け出してしまった。
「あ、ちょっと未散?!」
優太は未散の腕を取ろうとしたがすり抜けてしまった。
「もう!聖のアホ!なんか言えよ!『カワイイ』ぐらい言ってやれよ、バカッ!何のために連れてきたと思ってんだよっ!」
後ろを見ていた優太は聖に向き直ってぐいっと聖の浴衣の襟をつかみ、頬を膨らませて聖の頭を小突いた。
「……優太あれは困るよ……突然連れてくるなよ……」
はああぁ、と聖はへなへなと床に手をついた。
「なんだよあれ……かわいいなんてもんじゃねーよ……俺オーバーヒートしちゃうかと思った……」
顔から湯気が出てるんじゃないかと思うほど聖の顔は熱い。
――あー作戦失敗かぁ。
思っていた以上に聖に過敏な反応を示されてしまった優太は頭に手を置いてため息をついた。
文化祭当日。
「佳佑、おもしろい情報を入手した」
「……どんな?」
今佳佑はクラスの出し物であるお化け屋敷の受付をやっていて、理は休憩中。
理は真面目にお仕事中の佳佑の隣の椅子に座った。
「今年1年のクラスで『メイド喫茶』やってるところあるんだけど、そこに『超エロカワイイ』メイドがいるんだって」
「へぇ。……で?」
はいいらっしゃいませ、と客をさばきながら佳佑は理の話に相槌を打った。
「で、どうやら並木と吉岡のクラスらしいんだよ」
「……それ、小橋さんのことじゃないのか?」
なんだたいした情報じゃなかったな、と心の中で思いながら佳佑は理にまた生返事をした。
「俺も最初はてっきり衣ちゃんのことだと思ったんだけど、どうやら違うんだよ……誰だと思う?」
理はもったいぶって話を続ける。
「……吉岡とか?」
オチが見えてしまった佳佑はつい普通に答えてしまった。
「なんで言っちゃうんだよ、つまんねーな!」
理はぶうっ、と怒ったフリをした。
「だったらもっとわかりにくく話しなよ」
佳佑はそんな理を見て苦笑した。
「佳佑くん的にはかなりのおもしろい情報だと思ってね……吉岡に言われに行ってみる?なんでも『いらっしゃいませ、ご主人様』って言ってくれるらしいぞ」
理は佳佑の方を向くと机に頬杖をついた。
「……とか何とか言いながら俺にかこつけて理が言われたいだけだろ、さしずめ小橋さんあたりに」
ふん、と佳佑は理を見て鼻で笑う。
「……あ、バレた?」
理は足を組みふんぞり返った。
「あと10分で交代だから待ってろよ。そしたら付き合うよ」
だからおとなしく座ってて、と佳佑は理を普通に座らせた。
――身長以外は女のコだからなぁ吉岡は。確かに『超エロカワイイ』かもな。
佳佑は慣れない姿でぎこちない未散を想像して、何となく楽しくなってしまって、ひとりで笑いをこらえた。




