Vol.43
カラオケボックスの通路で優太は腰に手を当て、じいっ、と聖を見上げていた。
「聖、未散はどうしただよっ?!なんでおまえだけしか来ないんだよっ?!」
「……だからさっき言ったじゃん」
「嘘つくな!」
疑いの眼差しで優太は聖をまた見上げた。
未散に締め出されてから聖は廊下で30分間、
「吉岡、やっぱりおかしいから一緒に行こ?いい加減出て来いって」
と促し続けたが、
「行かない。聞かれたら『急に家から電話があったみたいで帰った』って言っておいて」
……と「未散がいないことを聞かれたときのトークマニュアル」まで作ってもらってしまった聖はもうなす術がなく1人カラオケボックスへとぼとぼ歩いた。
で、案の定「吉岡はどうした」とみんなに聞かれたが、未散作の即興トークマニュアルで難なくかわした。
……ただひとり、優太を除いては。
「今のは絶対嘘。そんなに言い張るなら未散の母ちゃんに確認するぞ?」
俺が納得できる説明をするまで中に入れてやらん、と顔に書いてある優太は相変わらず仁王立ちを続ける。
――今が観念のしどきだな。
聖はふう、とため息をついた。
「……わかった、けど1コだけお願いがあるんだけど」
「なんだよ」
「怒っても殴ってもいいけど、頼むから最後まで話聞いて?」
「わかった、頑張るわ」
よし聖ここに座れ、と言いたげに先に廊下の床に座った優太は自分の隣をペチペチ叩いた。
「けど……中はいいのか?」
聖はドアを後ろ指で指して、ちら、と後ろを見る。
「大丈夫、みんなマイク争奪戦に熱中してるから。俺たち2人いなくったってかまやしないって」
いいから早く座れ、と優太は聖のジャージのズボンを引っ張った。
「……で?」
胡坐をかいた聖に優太せっつく。
「まぁ、結論から言うとさ、小橋にした話がまずかったというか、あれが事の発端というか……俺が話をややこしくしちゃったというか……」
そこから聖はぽつり……ぽつり……と話を始めた。
……10分後。
「……というわけです。ハイ、以上おしまい。質問は?」
聖は苦笑いしながら自分の膝に頬杖をついて優太を見た。
「……ていうと、俺がココでバスケやってるの知ったのって俺が来るちょっと前だったってこと?入ったほんとの理由って俺じゃなくて未散?!」
「……ごめん」
「別にいいけどさ……あーもうなんだよそれ?!あん時の俺の涙返せっ!」
優太は聖と衣に一方的に怒って未散を励ましたあの日のことを持ち出して聖を横から押した。
――だけどこれは困ったぞ……。
ちょうど話が終わったところで、
「西倉、遅刻してきて歌わないとはなにごとだ!」
と、聖は部員に服を引っ張られ部屋へ拉致されてしまったので、ひとり通路に残った優太は「じゃあなー」と手を聖に振りながら考えを巡らす。
――結局未散は誤解しているわけだろ?俺が違うって言っちゃえば話は早いけど、未散が信じなかったら余計やこしくなるしなあ……てかさ、なんで聖って順番逆なの?言う前に手を出すんじゃねーよ。俺だってやんないぞ、そんなこと……。
「あーもう!」
優太はひとり頭をかきむしった。
だがそんな悩める少年優太に、ほどなくして天……いや、衣の助けが舞い降りてくるのだ。
どうもこんばんは、愛梨です。
さてさて、ついに優太は聖の本音を知ることになりました。
さぞかし嬉しかったでしょうけど……同時に悶々とする日々の始まりです(苦笑)。
で、次回ですが。
次回もちょっと、いかにも高校生らしい設定でお送りします。
そこで何が起こるのか。
未散と聖の恋の行方はいかに?
引き続き見守っていただけたら幸いです。
ということで、またです。




