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Vol.38

 県大会は準々決勝が終了した。

 ……なんと。

 聖たちはまだ残っていた。

 つまり……県ベスト4に選ばれてしまった、ということである。

 これは聖たちの高校では初の快挙らしい。

「ま、これもひとえにチビデカコンビのおかげだな」

 どうも「チビデカコンビ」という言葉の響きが相当笑いのツボになっているらしく、理はぷくくくと笑った。

「チビデカコンビじゃないよ、ゴールデンコンビだって」

 訂正しろよせっかく俺が考えたのに、と佳佑は理を少し口を尖らした。

 理のいう『チビデカコンビ』と佳佑のいう『ゴールデンコンビ』は同一人物たちを指している。

 チビデカコンビの時点ですでに面が割れてしまっているが、これは聖と優太のこと。

 ゴールデンコンビの方はちゃんと佳佑が考えて命名したのだが、チビデカの方は、

「そういやさ、チビデカコンビ5年ぶりじゃん!」

 なんて優太が聖に嬉しさのあまりうっかり言ってしまい、それを聞いていた理がかなり気に入ってしまったようで、どんなに佳佑が「それ言うな」と怒っても「あいつらゴールデンってガラじゃねーよ。いいんだってチビデカで」と一向に直そうとしない。

 だが、チビデカコンビなんていうとまるでお笑い芸人のコンビ名だが、実力はというとゴールデンに限りなく近かった。

 いつもコートの中を冷静に見ては敵が「やられた」と思うところにいつの間にかいて、ボールは奪い取るわ奪ったボールは絶対敵に回さないわおまけに点数までかっさらうわの並木優太と、圧倒的な存在感で敵を威圧し次々とダンクを決めあっという間に観客を味方につけてしまう西倉聖のプレイングは、去年までは弱小バスケ部だったことも手伝って他のどんな一流プレイヤーよりも注目を浴びていた。

 チームの方も聖が入部してきた日に冗談で言っていた「全国行っちゃう?」がどんどん現実になりつつあり、チーム員のモチベーションは上がっていく一方。

 さらにはついさっきまでやっていた準々決勝では、毎年県大会ベスト4か8まで勝ち残る高校になぜか勝ってしまったので本当にインターハイが見えてきていたのだ。

 だが、やはりベスト4となるとそう易々とは行かない。

 準決勝、残り時間2分。

 現在、43対40で負ていた。

「まずいなぁ、完全に並木の動きを封じていやがる」

「しかも、並木もさすがに疲れてますよね」

 ベンチでスタンバイしている理をはじめとする部員一同は苦虫をつぶした顔をしてコートを見ていた。

 相手は聖は身長があるので潰すも何もできないと踏んだようで優太を潰しにかかっていた。

 優太一人に何人もついてマークしていたのだ。

 それでも優太は何とか振り切ってきたが、いつもの3倍は動いているのでさすがの優太もバテてきていたのだ。

――ここまで来たのに、こんなところで終わってたまるかっ。

 3人がかりガードされながらも負けず嫌い根性丸出しで優太は肩で息をしながらも3人相手に睨みをきかす。

 3人の様子をうかがっている間に、残り時間は1分になろうとしていた。

――隙アリっ。

 一人が隙を見せ、そこを突いて優太は前に出た。

 見ていた聖が優太にボールを出す。

 優太はボールを貰ってそのまま走った。

 ボールは……見事にリングをくぐった。

 味方の観客は総立ちで歓喜の声を上げた。

――あと1つ、あと1つ……。

 ボードが40から42に変わるのを見ながら優太は元の位置に戻った。

 だが敵もなかなか手ごわい。

 優太の奇襲を恐れてか今まで以上にディフェンスがきつくなる。

――あと、どのくらい?

 優太は時計を見る。

 残り30秒。

――あと1回ならたぶん持つな……。

 正直足がもうぷるぷるしているが、30秒しかないならもう1本自分が決めて後はみんなでボール片手に逃げ回ればいい。

 優太は敵の動きを見てフェイントをかけた。

 敵は見事に引っかかりガードが外れた。

 見ていた佳佑が優太にボールを回す。

 そして優太はそのまま走る……はずだった。

――な、なにーっ?!

 敵が一枚上手だったようだ。

 先回りされ動きを止められる。

――くそっ、誰か、誰かいないのかよっ?!

 優太はボールを守りながらあたりを見渡した。

――いた。

 そこには、ノーマーク状態の聖がいた。

「優太、出せ!」

 自分を見つけたと認識した聖は走り出した。

 優太は聖を見てボールを放した。

 敵は「しまった!」という顔をしながら慌てて聖に走り寄る。

 だがその間にボールはすんなりと聖の手に移った。

 聖は時計を見た。

 残り時間、あと5秒。

 ランニングシュートはもう距離的に無理。

――くそ、こんな所からかよ。

 そこは聖がいちばん苦手なシュートポジション。

 でも、もう迷っている時間はなかった。

 できる限りリングに近づく。


 ピー………。


 ホイッスルが鳴った。


 それと同時に聖はボールから手を放した。

 ボールはまだ弧を描いてリングへ飛んでいた。

 これが入れば逆転勝ち。

 でも入らなかったらここでチームは解散。

――頼む、入ってくれ、頼む……!

 聖も優太も、佳佑も理も、みんなみんなボールの行方を送っていた。

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