Vol.33
優太がここまで怒り狂った発端は未散の一言だった。
「優太さぁ、そのぐらい許してあげなよ」
ご飯を食べる前の手洗いをしていた優太を捕まえ、
「ほんっとに優太って衣のことになると見境なくなるよね」
と、未散は呆れながら優太を見て笑っていた。
「何の話だ」
何の事を言われているのかわからなかった優太は水で濡れた手を振って水を飛ばしながらそう返す。
「優太はさ、衣が聖くんに告白されたことなのか聖くんが衣に告白したことなのかわかんないけど、それを怒ってるんでしょ?」
「未散……それ……」
あまりの驚きに優太は手を振るのをやめていた。
「別にそのぐらいいいじゃない。聖くんが優太から衣を取って食おうとしてるなら問題だけど、そういうわけでもなさそうだし」
優太の動揺に気づいてない未散はいつもの説教を始める。
「ね?衣かわいそうだよ?仲直りしてあげて?」
わかった?!と未散は優太に念を押して教室に戻って行った。
だが優太は見逃さなかった。
未散がうっすらと目に涙を浮かべていたことを――。
――なんで知ってるんだ、なんで衣喋っちゃったんだ……。
優太はこのことを1番知られちゃいけない未散に知られているのが、しかも、未散の好きな男から告白を受けた上に未散の親友という立場の女から教えてもらうという最悪なパターンなのがこの上なくショックだった。
……で、怒りのあまり衣に攻撃をしてしまったのである。
そしてもちろん怒りの矛先は聖にも向かった。
「ちーす」
言いながら優太が部室のドアを開けると、ちょうど着替え終わった聖がロッカーを閉めるところだった。
「あ、優太、昨日のことなんだけどさ……」
聖が話かけるや否や、優太は自分の荷物を投げ飛ばすように置くと聖に掴み寄った。
「聖、なんでだ?!どういうことだよっ?!どうして衣なんだよっ!」
バンッ!と優太は聖をロッカーに叩きつけた。
「別に女なんか他にいるだろ?衣よりイイ女なんかいっぱいいるだろ?!」
優太は聖の顔を見た途端そう叫んでいた。
「優太、悪かった、でもあれはちが……」
優太の怒りの理由を察した聖は弁解を試みようとしたが、すぐに優太に遮られた。
「違う!そういうことじゃない!俺が怒ってるのはそういうことじゃない!」
「……優太?」
「違うんだよ……そうじゃねぇんだよ……!」
優太は聖に力なくもたれぼろぼろと涙をこぼした。
優太はとにかく悲しかった。
悲しくて……悔しかったのだ。
未散が聖におぶられて帰ったあの日からなんとなくは気がついていた。
でも確信がつかめなかった。
けれど今日決定的瞬間を見て優太は確信した。
それは……未散は聖が好きなんだということだった。
未散はずっとずっと自分たちの事を見守ってくれていた。
だから今度は自分がそれをやってあげようと思っていた。
それなのに……確信したと同時にどうしてあげることもできないこともわかってしまったのだ。
おまけにその理由を作ったのが自分の彼女であり未散の親友であるなんて、なんという皮肉なんだろう――。
「聖ぃ頼むよ……頼むから気づいてやって……?」
「優太?」
「聖のこと好きになっているコ絶対いるから……衣とおんなじぐらいイイ女が聖のこと見てるから……お願いだから気づいてやって……」
それだけをやっと言うと優太はわんわん泣き出した。
――遅かったか……。
優太が自分に投げつけた言葉で聖は大体のことを把握していた。
結果としてわかったのは「完全に誤解されている」ということだ。
しかし今ここで話しても優太は半分も覚えてないだろう。
――こりゃまたの機会だな……。
「優太、わかったからもう泣くな」
とりあえず今は優太を泣きやませるのが先だ。
聖はしゃっくりをあげる優太の背中に手を置きそっとさすった。
どうもこんばんは、愛梨です。
こういう展開になったときって当事者よりも見ている面々のほうがキツかったりしますよね(苦笑)。
特に優太のような立場の人間はホントにしんどい。
そのしんどさが皆さんに伝わったらいいなぁ……と思いながら書きました。
未散と聖がこれからどうなっちゃうのかはもちろんですが、この2人にせい(?)で悩みに翻弄される優太にもご注目いただければとも思います(笑)。
……で。
次回はしばらくお休みしてした未散も出てきます。
未散と優太の『男と女を越えた厚き友情』に、よかったら涙してやってください。
それではまたです。




