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Vol.28

 今日もまた衣が泣き出した。

「いえーいっ!」

 聖は悪友たちと大喜びする。

 もちろんしっかりと怒った顔も泣きそうな顔も拝ませていただいた。

 そして……いつものようにまた優太が現れて、

「なにしてんだよっ!あっち行けっ!」

 竹刀を片手に聖を追い回す。

 で……いつもならここで取っ組み合いを始めるのだがこの日は違っていた。

――あれ?

 優太に追いかけられるだろうとわかっていた聖は逃げ回っていたのだが、その気配がないのことに気がついて走るのをやめた。

「なんだよつまんねーな……」

 追いかけて来いよ、と優太に喧嘩をふっかけようと聖は優太を見る。

「お……」

 しかしそこまでだった。

 聖の胸にずん、と何かが重くのしかかった。

 聖がそこで見たものは、

「衣ちゃんもう大丈夫だからね、泣かないで」

 優太が衣を泣きやませようと一生懸命になって頭をなでなでというかぐりぐりと撫で、そして「ぎゅうっ」としている姿と、

「うん、うん……」

 優太が着ているトレーナーをぎゅっ、と掴んで泣きそうになっては泣き出し、泣いてるかと思ったら泣きやんで……を繰り返す衣の姿だった。

 聖がその姿を見ていちばん衝撃を受けたのは、優太が、

「泣かないで」

 と優しく言っただけで何度だって衣が泣きそうな顔をすることだった。

 優太と自分では衣を泣かせている理由が明らかに違う。

 自分は「怒り」と「恐怖」、それから「悔しさ」。

 でも優太は……安心という名の「あたたかさ」や「優しさ」。

 その違いに何となく気づいた聖は優太に子供心にも嫉妬を覚えた。

「な、なんだよっ、女とくっつきやがって!」

 こじつけもいいところ、聖はそう言うと今度は「優太のスケベ」と喚き始めた。

 それを聞いていた聖の仲間も一緒になって騒ぎ始る。

 初めは優太も、

「な、なんだよっ、そんなんじゃねーよっ!」

 と必死で言い返した。

 けれど相手は3人。

 徐々に優太は劣勢に傾いていく。

 そして段々「スケベ」と辱めを受け続ける優太の目に涙が浮かび始めた。

――よしっ、泣け泣けっ!泣けーっ!

 どこまでも腹黒い聖は徹底して仲間と「泣ーけっ!泣ーけっ!」と優太を煽った。

 

 だが、そこまでだった。


「いい加減にしてっ!」

 どこかからか女の張り上げる声がした。

――へ……?

 聖は驚いて言うのをやめ、声の主を探してきょろきょろする。

 すると横からどんっ!と聖は誰かに押された。

「うわあっ!」

 聖はバランスを崩ししりもちをつく。

「痛ってーな、なにすんだよっ?!」

 誰だこのやろっ!と聖は怖い目をして相手を探した。

「なにすんだよ、はこっちのセリフよっ!この最低男!」

 聖を張り倒したと思われる女の声が聖を責め立てた。

「なんだとぉ……!」

 声のした方へ顔を向けたとき、聖の頭に中に「があぁぁん……」という音が鳴り響いた。

 声の主は……なんと衣だったのだ。

 さっきまでのか弱い女の子の姿とは違いまるで女勇者のようだった。

 泣きべそを掻いている優太を庇うように前に仁王立ちになって聖を睨みつけていた。

 そしてつかつかと聖のそばへ来ると、ばちん!と聖の左のほっぺを力いっぱい叩いた。

「あんたなんか大っ嫌い!優太くんのこといじめたらあたしが許さないからっ!」

 そう言って衣は軽蔑の眼差しで聖を見下ろしていた。


 聖はこの一瞬で、衣は優太が大好きで自分のことは大嫌い、ということを知ってしまうのだった。


 そう。

 聖のこの恋は自業自得ではあるが「大失恋」で終わる。


 そしてこの日から、聖は衣にも優太にも一切口をきかなくなるのだった。

 こんばんは、愛梨です。


 おバカなんだけど可愛い聖少年、いかがでしょうか。

 もう悪ガキの典型です(笑)。

 ちなみにですが、衣と比べると随分記憶のギャップがありますが、そこはまぁ、記憶力の違いあるいはインパクトに残っていることが違うということでよろしくお願いします(苦笑)←おいおい。


 さてと。 

 次回からは優太との友情がどうやって生まれるのかを綴っていこうと思います。

 これもまた小学生らしく可愛いんだけど実におバカさんです(笑)。

 よかったら「ふっ……」ってほくそ笑んでやってください(笑)。


 それでは、またです。

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