第8話: 新しい出会いは、新しい自分との出会いである2
全員の自己紹介が終わり、紬先輩が口を開いた。
「みんな、ありがとう! ……あ、そうだった。
今日はこのあと職員会議があるから、短時間の活動になります。
なので、今日は1年間の活動の流れについて説明して終わりにするね」
紬先輩は、黒板のほうへ向き、チョークを手に取った。
カツカツと小気味よい音を立てて予定を書き込んでいき、杏奈先輩が説明を始める。
「じゃあ、説明していくね。大会や人前で発表する機会が増えるのは夏からです」
7月:オープンスクール 全校生徒の前で校歌を披露
音楽室でのミニコンサート
8月:夏合宿
全日本合唱コンクール 県大会
9月:文化祭
全日本合唱コンクール 東北支部大会
12月:クリスマスコンサート
アンサンブルコンテスト
1月〜3月:全国大会 & 卒業コンサート
アンサンブルコンテストや全日本合唱コンクールで本選で勝ち進めば、年明けに全国大会!!
(……こんなに大会があるの?)
その時、隣の席で美空さんがスッと手を挙げた。
「Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)には出ないんですか?」
「学校によるんだけど、うちは『全日本』一本に絞ってるの。
練習を詰め込みすぎて、どっちつかずになるのを避けるため。」
紬先輩が答える。
すると、学生指揮者の凛先輩が補足するように口を開いた。
「4月から8月まで大会がないように見えるけど、うちは初心者が多いからな~。
ここで発声の基礎や、みんなで声を合わせる感覚をみっちり叩き込まないと、間に合わないんよね~」
「他に質問は?……ないかな」
杏奈先輩が締めようとした時、ちょうど終了のチャイムが鳴った。
「よし、今日はここまで! 何か報告ある人?」
「はい」
凛先輩が手をあげた。
「今日は時間がなかったから、2年生と中学生の自己紹介はパートが決まってからにする。
……それから。明日、白井先生が来ます。部員は、わかるよな?」
その瞬間、部室の空気がざわっと波立った。先輩たちの顔に緊張が走るのがわかる。
「高校1年生はちょっと話があるから残ってな。中学生は全員帰ってええよ~」
中学生たちが帰り支度を始め、残ったのは私たち新入生8人と、高校2年生の先輩6人だけ。
さっきまで大勢いたように感じたけれど、高校生は意外と少ないんだ……と、その時初めて知った。
凛先輩が私たちの前に立ち、厳しい表情で告げた。
「全員、立ってもらってええかな?」
椅子から立ち上がった私たちの前に、凛先輩の後ろからポニーテールにメガネをかけた先輩が近づいてきた。
彼女は一直線に陽葵さんと桜さんの前に立ち、ガシッと二人の肩を掴んだ。
「可愛いメイクに短いスカート。青春したい気持ちはわかる。心からわかる。……だけど」
先輩の眼鏡の奥の目が、鋭く光る。
「お願いだから、明日は絶対にメイクは薄く、スカートは全力で下ろしてきて。お願い」
かなり懇願した声。
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陽葵さんは今にも泣きそうな顔で、消え入りそうな声を絞り出した。
「……なんでですか? もしかして、その先生って人、怖い系ですか?」
「ビンゴ」
メガネの先輩は小さく呟き、親指を立てた。
「私たち、このバカ(凛先輩)が初日に劇短スカートで来て、連帯責任で死ぬほど怒られた」
「いや、あの時はごめんって……」
凛先輩がバツが悪そうに目を逸らす。
メガネの先輩がこちらを向き、改めて自己紹介をした。
「あ、名前言ってなかったね。私は学生指揮者の清水琴音。服装のことはもちろん、髪が肩につく人は明日は結んでくること。いい?」
私たちは揃って「はい」と頷いた。琴音先輩は頷き、再度口を開く。
「最後にもう一点。明日、パート決めをするから。
……自分の中学校の校歌を、私たちの前で一人ずつ歌ってもらう。よろしく」
私は恥ずかしいが分からずに思わず手を挙げた。
「あの、すみません… パート決めって、何ですか?」
「今私たちは女性部員しかいないから、『女声合唱』になるの。
学校の合唱祭とかだとソプラノとアルトの2つに分かれると思うんだけど、
私たちは声質とか音域によって『ソプラノ・メゾ・アルト』の3パートに分かれるの。
それを明日、学生指揮者とコーチが決めるんだよ」
紬先輩がやさしく教えてくれた。
なるほど……。
「というわけだから、練習期間は一晩しかないけど、中学の校歌、思い出しておいてね」
凛先輩がニヤリと笑う。
「以上! 明日からよろしくね。じゃあ解散。みんな、しっかり寝るんだぞ!」
杏奈先輩の声で、1日目の部活動は終了した。




