第6話: 私の前には、いつも新しい道がある
朝一番で、担任に『部活動最終決定届』を提出した。
受理された瞬間、自分の中で何かが変わったような、不思議な高揚感が広がる。
お昼休み、いつものように葵と緑と一緒に机を囲んでいるとき、
部活の話題になった。
「そういえばさ、私は軽音部で出したけど、二人は結局何にしたの?」
購買のパンを頬張りながら、葵が身を乗り出してくる。
「弓道部」
緑から返ってきたのは、予想外の答えだった。
「「えっ! 弓道部!?」 」
私と葵の声が綺麗に重なる。
あんなにバスケ部の先輩たちから熱烈な勧誘を受けていたのに。
「色んな部活を見て回った中で、すごく綺麗だったんだよね。……初めてだから上手くできるか分からないんだけど」
緑は照れくさそうに笑う。
「びっくり〜。じゃあ、茜は?」
二人の視線が私に集まる。
「私……実は、合唱部に」
え!?と二人は驚いたようだったので、
トイレで起きた出来事を話そうとした。
――その時。
スピーカーから、チャイムが響き渡った。
『一年生へ連絡です。現在、部活動決定届の集計を行っておりますが、軽音部を希望している生徒が学年の三分の一を超えています』
放送の内容に、教室が静まり返る。
『全員が入部することは困難な状況です。このままでは抽選となりますので、第二、第三希望の部活でも良いという生徒は、至急担任まで申し出てください』
一瞬の沈黙。
その後、各教室から地鳴りのような「ええええ!」「まじかよ!」という阿鼻叫喚の声が湧き上がった。 ふと横を見ると、葵が魂が抜けたような顔で机に突っ伏している。
軽音部の人気、恐るべし……。
それからの数日間、一年生フロアは軽音部の部員確定を巡る紆余曲折で持ちきりだった。 大半の生徒は放送に圧に負けて希望を変更したが、葵は最後まで自分を曲げなかった。
結局、最後は抽選。
希望パートやアンケートを提出し、AIがバランスを見て選出するというハイテクな選考が行われたらしい。
結果…葵は見事当選!
「当選メール来たぁぁ!」
と教室で飛び跳ねる葵を見て、私も自分のことのようにホッとした。
そして、いよいよ各部の新入部員が確定し、活動初日の放課後がやってきた。
葵と緑、それぞれの場所へ向かう二人と別れ、私は一人で階段を上る。
廊下の突き当たり。
夕日に照らされたプレートに『音楽室』の文字が浮かび上がる。
私は扉の前で立ち止まり、深く、深く呼吸をした。
(よし……)
覚悟を決め、防音仕様の重い扉に手をかけた。




