第11話: パート分け会議
≪ソプ部屋≫
新入生全員の歌声を聴き終えたソプ部屋では、
指導者の白井月枝、学生指揮者の紺野凛と清水琴音による、話し合いが始まろうとしていた。
まず、白井が静かに口を開く。
「お疲れ様。まずは二人の意見を聞かせてもらえる?」
最初に凛が、手元のメモ書きを見ながら言葉を返した。
「そうですね……。まず経験者はさすがでした。
佐々木紫と斎藤美空、
この二人は歌い慣れてる声をしています。声量もあるし、周りのメンバーに合わせるのも早そうです」
凛は続ける。
「意外にも、ダントツで上手かったのが小野寺桜ですね。
合唱というよりは、舞台に近いような声の出し方でした。
音程もバッチリ合っていて、おそらく一年生の中では一番上手かったと思います」
凛はそこまで言って、また手元のメモ書きに視線を落とした。
「西野陽葵、野中樺音の二人は、
歌うこと自体にはまだ慣れていない感じはしましたが、音程の軸はブレずに合っていたと思います。
……あとは、残りの三人です」
白井は何も言わず、先を促す。
「葦葉望、加藤萌、それから五十嵐茜。
この三人は初心者ということもあって、他のメンバーと比べるとまだまだという印象です。
ただ、練習を重ねていけば問題ないかと思います」
今度は琴音が、一枚の紙を白井に差し出した。
「パートについてですが、紺野と話してこちらでどうでしょうか。
実は、メゾソプラノとソプラノをどうするかに悩んでいます。
私たちの案だとメゾソプラノが極端に少なくなってしまったので、
ソプラノの誰かをメゾソプラノに避けようと思うのですが……先生はどう思いますか?
ご意見をお伺いしたいです」
白井は渡された紙をじっと見つめていたが、やがて、迷いのない手つきである一人の名前を指さした。
「――この子、メゾソプラノに入れたいわ」
その指先を見た琴音が、少し驚いたような表情をして声を漏らす。
「分かりました。それでは今年の二部、一年生はまず【ソプラノ三名、メゾソプラノ二名、アルト三名】で決めたいと思います」
白井は頷き、「ではメインホールに行きましょうか」と二人と一緒にソプ部屋を出て行った。
≪アルト部屋≫
その頃、アルト部屋では。
ソプ部屋で先輩方と先生が話している間、一年生のみで残されてしまった。
案内役だった紬先輩は、途中から他の二年生の先輩や中学生と一緒に話し合いに合流してしまっている。
シンと静まり返る部屋の中で、紫が周りを見渡して、みんなに話しかけた。
「みんな、これからよろしくね! 大会とか一緒に頑張ろうね!」
(……さすが紫。コミュニケーション力が凄すぎる)
あのピリついた雰囲気の中でよく声を出したなと、私は素直に感心してしまう。
周囲から「よろしく」と返事が返ってくる中、紫は話を続けた。
「合唱経験者は私と美空ちゃんだけだよね。みんな先生の前で歌ってどうだった?」
「私は結構、姿勢とか肩に力入ってるとか注意されたよ」
私がそう答えると、隣にいた萌も返事をした。
「あ、私も……」
「別に中学の時と変わらなかったかな」
美空ちゃんも淡々と話した。
「普通~」
と、樺音ちゃんもおっとり話し始める。
陽葵ちゃんは自分の爪を見ながら、あまり会話の輪に入ってこなかった。
桜ちゃんはそれを見ながら、
「陽葵どうだった? 」
「…疲れた。」
みたいな会話を二人でしていた。
すると急に、樺音ちゃんは隣にいる美空ちゃんに向かって、
急に質問を投げかけた。
「ねぇねぇ。私たち、会ったことあったっけ?」
美空ちゃんはきょとんとした顔をして、
「いや、ないと思うけど……」
樺音ちゃんがまた話し始める。
「ピアノって弾ける? 弾いてみてほしい」
「えっ、今ここで……?」
美空ちゃんが理由を聞こうとし、私や他の1年生も不思議に思っていた、その時だった。
ドアが開いて、凛先輩が入ってきた。
「パート分け決まったから全員メインホールに出てきてなー!」
「はい!」
とみんなで返事して、私たちはメインホールへ向かった。




