Case 120「乙ノ峯に行こう!(後編)」
未青「まりあ~。恥ずかしいよ~。」
乙ノ峯旅行(実質)2日目。ボクはいつものようにおねしょをしてしまった。お母さんが庭に干したボクのおねしょ布団。それをまりあがボクと一緒に撮りたいと言って聞かないので、渋々付き合う羽目になった。恥ずかしいことこの上ない。
まりあ「お兄ちゃん撮るよー。」(パシャ)
未青「うう…」
まりあ「よかったね。おととい寝台特急で寝る時はおむつしておいて。」
未青「そうだけど… 電車のトイレ狭かったから履いてたおむつ処分するの大変だったんだからね…」
なんやかんやあった後は朝ご飯の支度を手伝う。お母さんの朝ご飯の支度を手伝うのなんて本当に5年以上ぶりだ。
緋音「それにしても、スカート履いてる未青が隣でご飯の準備手伝うのは新鮮に感じるわ。」
未青「ああ… センセイも前そんな感じのこと言ってたよ。」
しかしその朝ご飯を食べている最中のこと。
未青「あっ… んんっ…」
(ジュウウウウウウウウウウウウウウ…)
ボクの体に突然強い尿意が襲ってきて、10秒も抵抗できずおもらしをしてしまった。
まりあ「お兄ちゃん脚が大洪水…(苦笑)」
居間で座布団に座って朝ご飯を食べていたものだから、パンツとスパッツと靴下はもう言うまでもなく、スカートも前と後ろがすっかりぐしょぐしょだ。
緋音「あら~。前もよくあったのよ。ご飯食べてる最中に未青が突然おもらししちゃったこと。ささ、シャワー浴びて着替えましょ。」
未青「うん…」
お母さんに促されるままシャワーを浴びた後は、新しい服に着替える。お母さんは今度は赤いヒラヒラした感じのスカートを用意してくれた。
未青「―ありがたいけど… もしかしてボクの今住んでる家並みに女の子の服のストックあったりしない?」
緋音「あら気づいちゃった。そうなのよフレインさんと連絡を取って、大体同じくらい用意したのよ。」
未青「そうだったの…?(苦笑)」
緋音「今更未青がスカート履いても驚かないわよ。未青が女の子に間違えられて女の子の服の売り場に案内されたこと、よくあったじゃない。」
未青「確かにそうだったけど~。」
お母さんもすっかりボクの女装を受け入れてくれている。ありがたいけど、ちょっと恥ずかしさすら感じる。まあでもお母さんからしたらそれもそれでいいのかもしれないのだろう。
朝ご飯の後、8時半過ぎにみんなで外出だ。まずは乙ノ峯で有名なショッピングモールへ向かう。そのショッピングモールはお母さんの家から歩いて数分のところにあるバス停からバスに乗って30分ほどのところにある。
緋音「未青と一緒のバスに乗るのなんだか懐かしいわ。未青ったら病院に行くバスの中で我慢できなくておもらししちゃったこともあったわよね。」
未青「うん…」
『お母さんにしてみればボクのおもらしも懐かしいと思っているのだろう』とは思っているが、やっぱり恥ずかしい。そう思っている間にバスはショッピングモールに着いた。
バスのアナウンス「間もなく、乙ノ峯タウンラルべ、乙ノ峯タウンラルベ、終点です。」
「乙ノ峯タウンラルべ」。ここが今日まず最初の目的地だ。いようと思えば一日いられると思えるくらいとても大きなショッピングモールだ。
相当な数の店がある乙ノ峯タウンラルべ。食べ物屋さんだけでも100軒近くあるくらいだ。
フレイン「未青くんはどんなお店行きたい?」
未青「やっぱりアニメショップかな?」
緋音「もちろんあるわよ。サウスビレッジの4階に『Jump on』っていうお店なんだけど。」
未青「あーボクJump on知ってる!テレビやネットのCMでよく見るよ!」
緋音「未青なら知ってるんじゃないかと思ってたわやっぱり(笑)」
途中他の店にも立ち寄りつつ、バス停近くの入口から10分ほどで『Jump on』という店に着いた。アスムールのリアル店舗のあるタイプのアニメショップでは国内シェア2位を誇る『Jump on』。少なくともテレビでアニメを見る時は必ずCMを目にするほど有名だ。
緋音「舞嗣遠にはJump onないの?」
未青「Jump on舞嗣遠にもお店あるにはあるんだけど、家や駅からはちょっと遠くて、ボクの行動範囲にはないんだ…(苦笑)」
アニメのキャラクターのぬいぐるみやフィギュア・アクリルスタンドはもちろんのこと、(この世界で勝手に出版されたとしか思えない)いわゆる「アニメ絵本」もたくさん売られている。夏休み中ということもあって、ボクと同い年くらいのお客さんも他にも何人かいる。かなり規模の大きいショッピングモールのテナントということもあって店の規模はその分とても大きい。こんな規模の大きなアニメショップに来たのは初めてだから、ボクはその雰囲気に少し圧倒されている。
未青「―何を買おうかめっちゃ迷う…」
緋音「せっかく来たんだから、欲しい物いっぱい買っていいわよ。」
未青「でも… 帰りの荷物が…(苦笑)」
フレイン「大丈夫だよ。カバンを追加で買えばいい話だし。」
未青「それもそうか。」
という訳で、ボクもまりあも値段をあまり気にせず、ぬいぐるみやらアクリルスタンドやらアニメ絵本をいろいろ買った。
その結果…
店員「以上合わせて7,359苑になります。」
緋音「あらそんなに?(笑)」
未青「お母さん… ごめん…」
緋音「いいのいいの(笑)せっかく乙ノ峯に来てくれたんだから。」
その後は昼ご飯の時間と言うにはちょっと早いが、カフェで昼ご飯を食べる。乙ノ峯名産のお米を使った米粉パンのサンドイッチに、この季節だから飲み物は冷たいメロンソーダにした。メロンが名産の乙ノ峯だから、とても美味しい。
緋音「―未青ってカフェでアルバイトしてるわよね?」
未青「そうだけど、コーヒー飲んだらトイレ近くなっちゃうから…」
緋音「やっぱりそうよね(苦笑)」
未青「ただでさえボクバイト中にトイレ行きたくなって間に合ったことあったかなって具合だから…」
緋音「あらあら(苦笑)」
食事を済ませた後はお母さんの仕事先に行く。乙ノ峯タウンラルベから、お母さんの家の最寄のバス停とは別の方向のバスに乗って20分のところにある「乙ノ峯女子魔法上級学校」だ。魔法専門学校よりも専門的な上級魔法が学べる「魔法上級学校」。学校のキャリアセンターで名前を聞いたことはあるが、実際に来てみるのは初めてだ。
緋音「お疲れ様です。」
職員A「お疲れ様です。この子は赤砂さんの… 娘…さん…?息子さんがいらっしゃったとは聞いていますが…」
緋音「その息子です。」
未青「こんにちは。ちょっといろいろあってスカートとか履くのが好きで…」
職員B「そうだったんですね(笑)顔つきや声の感じも、赤砂さんから聞いている通り女の子そっくりですね。」
未青「今もたまに言われます…(笑)」
途中通りがかった職員用休憩スペースのテレビでは、なんと日本のアニメが流れているのを目にした。
緋音「ああ言ってなかったわね。乙ノ峯には日本人の転生者がいっぱいいるから日本人転生者向けのケーブルテレビがあるんだけど、平日お昼12時には日本のアニメが流れているから、それでアニメ見ている人もいるのよ。」
未青「そうなの?お母さんの家はそれ入ってる?」
和葉「あー入ってないなあ…」
未青「え~もったいないよ入ろうよ~。」
緋音「次未青が来る時までには考えておくわ(苦笑)」
未青「お母さん… センセイ…」
緋音「未青?もしかしてトイレ?」
未青「うん…」
さっき飲んだドリンクが効いたのか、トイレに行きたくなってしまった。しかし女子学校だからか男子トイレの数は女子トイレと比べて少なく、見つけるまでに時間がかかってしまった。
結果…
未青「あっ… ああっ、あああああっ…」
(ジュウウウウウウウウウウウビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャ…)
やっと見つけた男子トイレの入口でボクの膀胱は力尽き、ガニ股の状態でおしっこを漏らしてしまった。
まりあ「お兄ちゃんおもらし2回目~(笑)」
未青「うう…」
幸いスカートは無事だったので、そのままトイレの個室に入りお母さんの家から替えのパンツとスパッツと靴下をお母さんの家から転送魔法で転送して履き替え、トイレから出た。
未青「お待たせ。」
まりあ「お兄ちゃん。」
未青「まりあ?」
まりあ「スパッツ何色にしたの?」
未青「普通に黒だよぉ…」
着替えた後はお母さんに案内された学校の図書館で過ごすことにした。舞嗣遠の魔法専門学校にはないレベルの高い魔法の本がたくさんある。
まりあ「どうお兄ちゃん?」
和葉「未青君?分かる?」
未青「う~ん… 全然分からない…」
結局ボクが一番すんなり読めたのは、一般の魔法専門学校レベルの本だった。上級な魔法の本を立て続けに読んでいたので、良いリラックスにもなれたと思う。
学校の図書館を出発したのは午後2時過ぎ。近くの和菓子屋さんでお母さんが和菓子を買ってくれた。ボクに旅行のお土産として、ネルルたち友達に渡して欲しいものだという。
未青「いいの?お母さん?」
緋音「いいのよいいのよ。未青もまりあちゃんも、お友達みんなに渡してあげなさい。」
未青「分かった(笑)」
その後ボクたちはバスを乗り継いで家に着いた。乙ノ峯ではバスの少ない時間帯だから、家に着いたのは夕方4時少し前のことだった。
家に着いて手洗いうがいシャワーを済ませ、5時までテレビで再放送のアニメを見た後は、晩ご飯の準備だ。
緋音「昨日以上に上手くできてるじゃない(笑)」
未青「えへへ。これ終わったらレプリンに野菜スティックあげてくるね。」
ボクは昨日以上に楽しい一日を過ごせたと思う。前の世界では家族と一日外出だなんてことは病気のせいでできなかったボク。それがお母さんやセンセイたちとできたのだから、ボクはそれがとても嬉しかった。
そして翌朝。朝ご飯を食べた後に荷物をまとめて、お母さんの家から出発だ。その出発はボクのおねしょのせいで若干遅れてしまったが。
未青「またね。お母さん。今度は友達も連れて来るからね。」
緋音「楽しみにしてるわ。未青。」
久しぶりにリアルで会ったお母さん。夏休みにとても楽しい思い出が作れた。
-一口メモ-
アスムール民主国にある日本人転生者が多い地域のケーブルテレビや独立テレビ局での「平日昼12時台に日本のアニメが組まれている」という編成は、珍しいことではない。




