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Case 115「禁忌かまして撃退クレーマー」

未青「あっ… ああっ… ああああっ…」

(ジュウウウウウウウウウウウウウウウ…)


まりあ「ちょっとお兄ちゃ〜ん。元日早々おねしょとおもらしどっちもとか勘弁してよ〜。」

未青「えへへ…」


若菜ちゃんのバイト先の本屋さんでの出来事からしばらくが経ち、年が明けた。この世界で迎える4回目のお正月。そんなボクは元日早々おねしょをしてしまった上に、センセイやまりあと一緒に初詣に出かけた先の神社でトイレを見つけられずおもらしをしてしまった。


まりあ「こんな寒いのにミニスカートで外出るからだよ(苦笑)」


それからさらにしばらく経ったある週末、いつものようにカレンデュラでアルバイトに行くのだが…


未青「クレーマー…ですか?」

マリーユ「そうなの。年明けて少し経ってから来るようになって… アルリスちゃんもその人にかなり詰められたのが怖くなって、しばらくバイトお休みしてるんだ。」

未青「アルリスちゃんかわいそう…」

マリーユ「うん… その人大体未青ちゃんがいない平日に来ることが多いんだ。一応治安兵団にも相談はしているんだけど、なかなかやめてくれないって感じで…」

未青「そうだったんですか。全く知らなかったです。」


カレンデュラは年が明けてからしばらく経ってから迷惑なクレーマーに悩まされているということをマリーユさんから聞かされた。アルリスちゃんはそのクレーマーに相当詰められて怖い思いをしたという。


マリーユ「だから今日未青ちゃんはカウンターの方にいて。」

未青「分かりました。」

そうこうしている間に10時、お店の開店時間を迎えた。それと同時にお客さんも入ってくるが、店の雰囲気はお客さんもアルバイトのみんなも、神妙というか重い雰囲気だ。みんなそのクレーマーとやらが来るのを恐れているというか、警戒しているのだろうか。


そして開店から1時間ほどが経った時のこと。

レクファニー「いらっしゃいまs…」


店に男の人が入ってきた。すると、店の空気はたちまち一変する。

女性客A(小声で)「うっわあいつ来たよ…」

女性客B(小声で)「なんで私たちがいる時に来るのよ…」


その人は初見で見るからにも傍若無人だと分かるような態度で、ホールの真ん中くらいの席に着いた。


未青(通信魔法で)「ルキちゃん… もしかしてこの人が…」

ルキ(通信魔法で)「うん… 最近来てるクレーマー…」


ボクが察していたことは的中した。今店に来たやや大柄な男の人。それがまさにそのクレーマーという人であることを。「クレーマー」という割には若く見えるが。(失礼)


ハミン「とりあえず私行くね。」

ルキ「うん。お願い。」


ルキちゃんがそのクレーマーの接客をすることになったのだが、嫌々ながらという感じがボクにも伝わってくる。


ルキ「ご注文は…?」

クレーマー「分かるだろ!いつものだよ!」

そう言うとクレーマーの人は、スマホを取り出してカメラを回し始めた。

未青(待って!?この店撮影は食べ物とか撮るの以外NGだよね!?)


と思っていると、店の奥からベルーザさんが大急ぎでやってきた。

ベルーザ「お客様!店員の撮影はおやめ下さい!」

クレーマー「うっせーな証拠保全に決まってるんだろ!」

ベルーザ「しかし他のお客様の迷惑になりますので!」


ベルーザさんとクレーマーの応酬は続く。他のお客さんがそそくさと店を後にするのが分かる。


未青(うぅ… トイレ行きたい…)

実はさっきからトイレに行きたいボクなのだが、とてもじゃないけどトイレに行ける状況ではない。


クレーマー「店の奥から来てる癖に俺の邪魔ばっかりしやがって!俺に言いたいことがあるんなら店で働いたらどうだ!」

(ジュウウ…)

そのクレーマーに気圧(けお)されたボクは、おしっこをチビってしまった。


マリーユ「とりあえず注文のものは出して。いつものあれ。」

ハミン「はい。」


クレーマーの人がいつも注文しているのは、ブレンドコーヒーのMサイズ。

ハミン「こちらブレンドコーヒーのMサイズです。」

クレーマー「やればできんじゃねえか。」

ハミン「ごゆっくりどうぞ。」


クレーマーの人はカメラを回すのをやめようとしない中、ハミンちゃんがカウンターに戻ってきた。

未青・通信魔法で「ありがとうハミンちゃん。」

ハミン・通信魔法で「大丈夫だよ。未青ちゃん。こういう人苦手でしょ?」

未青・通信魔法で「うん… ありがとう… それでハミンちゃん…」

ハミン・通信魔法で「未青ちゃん?」

未青・通信魔法で「ボク… もうホントにトイレ行きたい…」

ハミン・通信魔法で「マジ!?もう漏れちゃう?」

未青・通信魔法で「うん…」

ハミン・通信魔法で「大丈夫。今なら行けるよ。未青ちゃん迷彩魔法使えるでしょ?それ使ってホール抜けなよ。」

未青・通信魔法で「分かった。ごめんね。行ってくる。」


そう通信魔法で言ってボクは通信魔法を自分にかけ、トイレに急ぐべくホールを離脱したのだが…


未青「あっ… ああっ… あっ…」

(ビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャ…)

リューミナ「未青ちゃん… 大丈夫?」

未青「うん…」


案の定と言うべきか、間に合わなかった。トイレのドアの前でおもらしをしてしまったボク。ハミンちゃんもこの間クレーマーに長々着き合された末にトイレに間に合わずトイレの便器の前でおもらしをしてしまったことがあるようで、みんなホトホト困っていることを改めて感じた。


「カレンデュラのみんなを助けたい」「早くこの状況をなんとかしたい」そう思って帰宅後ネットでいろいろ調べていると、ボクはある情報を見つけた。

未青(これ使えるんじゃないかな…?)

そう思ったボクは次の日図書館に出かけ、24年前の新聞のある記事の中の写真を拡大プリントアウトした。


それから数日後のアルバイトの日。

レクファニー「いらっしゃいませ。」

そのクレーマーの人はまたカレンデュラにやって来た。


すると、クレーマーがスマホを取り出してカメラを回し始めた。

未青(今だ!)

ボクはすかさず転送魔法で家からあるものを転送する。

未青(遺族の皆さん、お許し下さい…!)

ボクはそう思っておもむろに、自分の顔を覆うように家から転送した1枚の大きな顔写真を、ボクの顔を覆い隠すようにして掲げた。


男性客C「あの写真…!」

男性客D「ルミドル・ラツーン… だと…!?」


ルミドル・ラツーン。今から24年前にアスムール民主国で起きた「12歳女子連続標本化殺人事件」の犯人だ。

ラツーンの顔写真はShort Trackに載せたら即座にアカウントを凍結されてしまうなど、この事件はアスムールにおいてのある種の禁忌とされている。

初めてクレーマーに遭遇した日の夜、「カメラを回しているクレーマーにはその国にとって禁忌になるものをぶつければいい」ということを知ったボク。そこからボクは「12歳女子連続標本化殺人事件」にたどり着き、図書館でラツーンの顔写真を拡大プリントアウトし、今に至っている。


クレーマー「わっ!テメェ何しやがる!」

ラツーンの顔写真を掲げられて動揺し、ボクに襲い掛かろうとするクレーマー。自慢じゃないが魔法検査1位独走中のボク。万が一の事態を想定して店の更衣室に持ってきておいた近代魔法剣を手元に転送し、クレーマーを大立ち回りを繰り広げる。


近代魔法剣の音声「Flower Power.」「Flower Strike!」

様々な属性の魔法を駆使して戦うボク。すると、周りにいた他のお客さんも、次々ボクに加勢する。


男性客C「店員さん!俺たちもコイツをクッソ迷惑だと思ってたんで!」

男性客E「助太刀します!」


近代魔法剣の音声「Wind Power.」「Level 1! Level 2!」「Wind! Twice Break!」


もうこうする以外仕方なかったとはいえ、戦場と化したカレンデュラ。クレーマーが取り押さえられたのは、ボクがラツーンの顔写真を掲げてから10分くらい経ってからのことだった。


クレーマー「テメェ…!」

セレスティーヌ「マリーユさん!治安兵団はもう呼んだ!?」

マリーユ「うん!もうすぐ来るかも。」


床に縛り上げられて転がされているクレーマー。床に転げ落ちたクレーマーのスマホを拾い上げるボクだったのだが、Short Trackのアカウントが運営に消去されていたのが分かる。

それから治安兵団の人が店に来てクレーマーが逮捕・連行されていくまでに、時間はそうかからなかった。


クレーマー「クッソ…」

治安兵団の隊員A「―ご協力、ありがとうございました。」

治安兵団の隊員B「オラ!立て!」


レクファニー「ありがとう未青ちゃん!」

ベルーザ「でも、どこでルミドル・ラツーンなんか知ったの?」

未青「いろいろ調べてたらそれに辿り着いて…」

ルキ「未青ちゃんって意外とそういうとこ容赦ないんだね…(苦笑)」


後になって分かったことなのだが、今回店に来ていたクレーマーの「ウェルミス・クラムド」という人は、3年ほど前若菜ちゃんをいじめの末に自殺・転生に追いやった末、そのおよそ1年後に義憤に駆られた見ず知らずのインターネットユーザーに殺されてこの世界に転生してきた「旭津(あさひづ) 綱二(こうじ)」という男に雇われた人で、ゆくゆくは2人で一緒にカレンデュラはおろか、場合によっては舞嗣遠の街そのものを襲撃することを目論んでいたというのだ。旭津(あさひづ)は9月にボクが本屋さんで取材を受けた際の映像をたまたまテレビで見たことで若菜ちゃんがこの世界に転生したことを知り、「俺を死なせた復讐」とばかりにカレンデュラ襲撃を目論んだという。


未青(逆恨みって怖い…)


数日後。

未青「―とにかく、みんなを迷惑なお客さんから救いたかった。ただそれだけで…」

という訳で、ボクは舞嗣遠の治安兵団や学校から「街を救った英雄」として表彰を受けたのである。このことはアスムールの全国ニュースでも取り上げられた他、舞嗣遠のローカルテレビではそれから3日ほどこのことが擦られた。


フレイン「未青くん凄いよ!街の英雄にもなれちゃうなんて!」

未青「待って!?英雄ってそんなに凄いの!?」

フレイン「うん!お兄ちゃんとお父さん以来!生きている状態で英雄認定された人は、舞嗣遠ではもう56年ぶりなんだから!」

未青「そうなんだ…!」

フレイン「うん!だから私本当に嬉しい!」

(未青を抱き締めるフレイン)

未青「でも、初手でやったことはあんまり褒められることじゃないよ…?(苦笑)」

フレイン「いいのいいの!(笑)」


センセイから英雄に関するとてつもなく凄いことを聞かされたボク。

未青(ボクは凄いことをしてしまった…)

なんてことを考えていた。


〜一方表彰のことが全国ニュースで報じられた日の夜、アスムール民主国内某所〜

??「この子… 間違いなく未青だわ…!」

ー一口メモー

未青は表彰には普通に男ものの服を着て臨んでおり、まりあからは「男の子の格好してるお兄ちゃん久々に見た」と言われたんだそう。


-用語解説-

【12歳女子連続標本化殺人事件】

アスムール民主国で24年前に発生した連続誘拐・殺人事件。犯人のルミドル・ラツーン(享年28)はアスムール民主国内各地を広範囲に転々としながら事件を起こしたため、ラツーンの逮捕は最初の事件発生から半年を要した。

ツラーンの最高裁判決特番は各局で中継されたのだが、そのうち玉藻テレビ系の特番は、殺害された子のうちの1人が生前好きだった同局のバラエティー番組「DANCE STADIUM」をベースに進行。アスムール民主国のテレビの最高裁判決特番に被害者が好きだったバラエティー番組のテイストが取り入れられるようになったのはこれがきっかけ。

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