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UNSUNG  作者: 二宮シン
3/16

人間の王と悪魔の王子

悲鳴の聞こえた場所へ木々をぬって出ると、広場に出た。そこらには身なりのいい赤いマントの騎士たちが血を流して倒れており、ドレス姿の若い女がクマより巨大な悪魔、オークに迫られていた。人間の女を襲い巣へ連れ帰って子を孕ませるオークは一歩一歩と女へ近づいていく。この国の警備はどうなっているのだと悪態をつきたくなりながら剣を引き抜くと、アルマが袖を引っ張った。

「片腕じゃ勝てない。私たちまで襲われる」

 意外と現実的なことも言うのだと感心するが、この手のやり取りはもう飽きるほどやってきた。

「片腕で十分なんだよ」

 そう言って剣を地面に突き刺してオークに石を投げつけてやると、目が赤く血走り、牙を覗かせている醜い顔とご対面になった。

「来いよ」

 剣を地面から抜いて挑発してやると、一心不乱につっこんできた。アルマは咄嗟に木々の後ろに隠れたが、俺は右へと転がって突進を避けると、がら空きの背後へ踏み込んでから片腕を切り落とした。またも返り血で真っ赤に染まったが、これで両方とも片腕だ。

 だがオークは痛みのあまり膝から崩れ落ち、なくなった片腕を拾ってくっ付けようとしている。血しぶきがあがっているというのに、何度も切断した断面と斬れて落ちた腕をぐちゃぐちゃと不快な音を立てながら合わせているのだ。パイクのように知性のある悪魔もいれば、こんな無様なことをする馬鹿もいる。それが悪魔だ。

 苦しむさまをいつまでも見ている趣味はないので、近寄って首を斬り落とすと、オークは倒れた。

「ざっとこんなもんだ」

 隠れているアルマと腰を抜かしている女へ言ってやると、女がよろよろと近寄ってくる。

「助けて、くれたんですか?」

「見りゃわかるだろ」

「そう言われましても……」

 俺のことを上から下まで見ていると、返り血塗れで片腕でオークを倒した化け物にも見えなくはないなと自分でもわかった。

「悲鳴が聞こえたから助けただけだ。だがなにかしら、の……」

 ドタバタしていて忘れていたが、ここ数日ほとんど食事抜きだったのだ。ひったくりを街中追いかけて、アルマを騎士たちから助けて、森の中を走って、オークを倒した。ひと段落ついたからか、気が抜けて急にめまいに襲われる。

「だ、大丈夫ですか!」

 腹の減りすぎで、女の声が聞こえたあたりで意識を失った。なんともなさけないが、俺は空腹に負けたようだ。


 死にたくない。それは貴様だって同じだろう? ならば手を伸ばせ。命を紡ぐのだ。奴に身の程を教えてやるまで。


 また嫌な夢を見て目が覚めた。だが視界に広がるのはいつもの野宿生活の空ではなく、知らない天井の下でベッドに寝かされていた。ああそうだ、オークを倒してあたりで体に限界がきたのだ。

 となるとここは誰かの家だろうか。だが街の中で騒ぎを起こした身の俺を引き取ってくれる場所などあるのだろうか。それによく見ると、返り血は洗い流され、着ていたボロボロの黒いコートは冬用の生地が厚いものへと変わっていた。

「起きた」

 ベッドから起き上がると、椅子に座ったアルマが心配するわけでもなくこちらを見ている。

「ここは、どこだ」

 ちょっと待っていてとアルマが言うと、部屋を出て行った。中々広い部屋で、内装も豪華なシャンデリアや絵画が飾られている。

 相変わらず腹は減ったままだが、少しすると、オークに襲われていたドレス姿の女がアルマとメイド服姿の女たちを連れて部屋へとやって来た。

「助けてくださったことはアルマさんから聞いております。申し遅れましたが、私はクレサの王女、シトラ・クレサと申します」

「お姫様ねぇ、だから身なりがよかったのか」

 どうやら悪魔の子のようで、目が赤く髪も真っ赤で長い。赤目の病と少し違う赤で、深紅と言った方が正しいかもしれない。そんなことを思いながら立ち上がろうとすると、ふらついて床に倒れた。

「ああ!」

 シトラが声を上げると、メイドたちが俺に肩を貸してベッドに戻した。

「なにかの病気ですか! 命の恩人を死なせるわけにはいきませんから、なんでもおっしゃってください! すぐに適切な医者を呼びますから!」

 血相を変えて肩を揺さぶるシトラに、なら一人だけ呼んでほしいと苦笑いを浮かべて言った。

「コックさん、呼んでくれる?」


 数十分後、肩を借りてたどり着いた大広間には長細い机があり、ありったけの食い物が並んでいた。牛肉、豚肉、鶏肉、ウサギ肉、川魚、海魚、その他多数。食えるときに食えるだけ食っておくように心がけているので、作法もなにもなしにひたすら貪り食った。アルマも同席して肉をつまんでいるが、見ているシトラも含めてひかれるほどに食い散らかしていたようだ。

「ご馳走様」

 食い終わって水を飲み干すと、手を合わせて食材に感謝した。

「左腕、動くんだ」

 つい癖でやってしまい、アルマに左腕のことをいぶかしがられた。

「まあ、あれだ、医者からも動かすように言われているからな」

「でしたら、我が国いちばんの医者をご用意いたします!」

 シトラが食器を下げていくメイドたちのあいだから声を上げるが、丁重に、そして慎重に断った。

「それで、なんであんたはあんなところに居たんだ?」

 王女様ともあろう者が危険な森の中にいた。おそらく護衛らしき者もいたが、皆死んでいた。成人しているかどうか怪しい見た目とはいえ、そんな簡単に命を散らしていい身分ではないことは、王女であるシトラが一番分かっているはずだが、うつむいて小さく答えた。

「外の世界が、気になりまして」

「どういうことだ?」

 聞くと、シトラは難しい表情だ。

「赤目の病に感染しないために、王であるお父様から外出を禁止されているのです。ですが、城の外で民たちはどうしているのか気になったのです。しかし、それがきっかけで騎士たちを死なせてしまった……」

 どう声をかけたものかと思案していると、大広間にもう一人身なりのいい男が入ってきた。

「好奇心は猫を殺すと教わったはずだろう」

 シトラと同じく悪魔の子らしい男は、赤い髪が目にかかる程に伸びており、赤いマントを羽織っている。シトラをしかると俺の方を向いてすまなさそうな顔をして、イルムと名乗った。

「我が妹のため、その身が倒れるまで戦ってくれたと聞いている。王子として、そして兄として、ここに感謝する」

 どうやら話が誇張されているが、王子と王女に借りを作ったのだと考えると悪い気はしない。むしろ、この偶然をなにかに利用できないかと思案した。金を貰うか、食い物を貰うか……流石に即物的すぎるか。ならどうするか、右腕で頭を押さえて熟考すると、いい考えが浮かんできた。

「わけあってレッドアイ……赤目の病に感染した者たちを追っているんだが、赤目の病を広めさせている悪魔がいる。諸国にも連絡して奴を追ってくれないか」

「まさか、赤目の病の元凶を知っているのか?」

「少なくとも、赤目の病の根幹に関わっている奴であることは確かだ」

 それを聞いてイルムは考え込むと、すぐに捜索隊を出すと約束してくれた。

「奴は紫色の翼を持って、お前達と同じく赤い髪と赤い瞳をしている。だが見つけても攻撃するなよ? 常人じゃ束になっても敵わないからな。居場所だけ教えてくれ」

 それを聞くと、イルムの眉間にしわが寄った。

「我が騎士たちを舐めないで貰おうか」

 腕を組んで座っている俺を見据えるイルムの態度は、王子としては正しいのだろう。むしろ自分に仕える騎士たちを信じる様は王子として理想的とすら言える。だが、それを踏まえたうえで、攻撃してはならない……違うな、殺してはならないのだ。

「奴は俺の親友と戦友たちを皆殺しにした。サンストが集めた精鋭たち五十名以上をだ。俺も見ての通り片腕が使えなくなっている。それに、これは復讐なんだよ……奴は俺が殺さなきゃ意味がねぇんだ」

 自分でもよく分かっている。復讐について考えたり、行動したりしている時は漂う雰囲気が変わると。ニオがまるで殺し屋を見ているようだとも口にするほどに、俺の復讐への根底には激しい私憤があるのだ。それを感じ取ってか、イルムは固唾を飲みこんだ。

「ですが、あなたは片腕です。それでも、倒せると?」

 リージルでいいと返してから、奴を殺せるのは間違いなく俺だけだと言いきった。

「……わかった、その話を信じよう。その間、この城に滞在してもらっても構わない。それに、それだけの化け物では我が騎士団でも敵わないだろう」

「助かる」

 紆余曲折在ったが一石二鳥というやつだ。エルメラを追いつつ、食い物と寝どこにも困らない。笑いを堪えていると、蚊帳の外だったアルマがイルムへと向かっていった。

「このお城に、工房はありますか」

 突然話に加わったアルマに対し、イルムは使われていない古工房があると言った。

「ならそこを借りられますか」

 なんのためにだとイルムは聞くと、俺を指差した。

「命を救ってもらったあの人のために剣を打ちたいの。そうすれば旅に連れて行ってくれるだろうから」

 勝手に話を進めるなと口を挟むが、そんななまくらと片腕では限界があると指摘された。

「大丈夫、おじいちゃんから天才だって言われて育ったから」

「そこらのジジイが孫娘を褒めてただけだろうよ」

 しかし、アルマは違うと首を振った。

「私のおじいちゃんは五百年以上生きている純血のエルダードワーフなの。鍛冶には誰よりも誇りを持っていて、アルムストの首都にいる騎士団長の剣を何代にもわたって造ってきたの。だから鍛冶に関しては妥協しない。私のお父さんも認めてもらえなかった。そんなおじいちゃんから譲り受けた知恵と磨き上げた腕で最高の剣を作るから……だめ?」

 確かに、言われてみれば安物の剣でエルメラを殺すのは難しい。それにエルダードワーフに認められたアルマなら信用してもいいのかもしれない。

「どうするかはでき上がってから決めるが、なんで旅についてきたいんだ?」

 率直な疑問をぶつけると、アルマは目を細めてから天井を見上げた。

「この街に来るまで、ずっと山奥の里で暮らしていたから……きっと好奇心だと思う」

「イルムの言葉を借りるが、好奇心は猫を殺すぞ」

「大丈夫。エルフが弓を使うように、私たちドワーフは斧で戦うから」

 そう言って、アルマは片腕で料理の乗っていた長机を持ち上げてみせた。

「この力だけじゃ、だめ?」

 これはもしかしたら、思いもよらぬ戦力というやつなのかもしれない。とりあえず保留にするとして、食事を終えた。


 アルマは騎士に案内された古工房に籠り、イルムとシトラが離れていった後、好きなだけいていいと言われたが、街には戻ることはできないのでブラブラしていた。成果が出るまで城の中でなにをするかと考えていると、廊下の曲がり角で誰かとぶつかってしまった。

「おっと、すまねぇ、ちょっとぼうっとしていてな」

「いや、こちらも注意が散漫だった。申し訳な……貴様は!」

 なんだと顔をよく見たら、面倒なことになると確信した。

「赤目の病を広める者め! 我が主が住まう王城に攻め込んできたか!」

つい先ほど気絶させた騎士エドワードがそこにはいた。事情を説明しようとするも、エドワードは剣を抜いた。

「待てって言ってるだろうが!」

 そのまま斬りかかってきたエドワードの剣を鞘におさめたままの剣で受けると、なかなかの力があった。伊達に騎士をやっているわけではないということか。

「私の家族は赤目に殺された! 故に赤目は絶対に許さん! 貴様もあの小娘もこの手で始末してやるからな!」

「てめぇの事情なんて知るか! これ以上続けるなら、俺も剣を抜くからな!」

 王城の赤いカーペットの敷かれた廊下でにらみ合いが続くと、しばらく剣での斬り合いが続いた。だがおそらく身分の高いエドワードを殺せば人殺しだと、弁明の機会も与えられずに殺されてしまう。どうするかと戦いながら考えていると、エドワードが俺の後ろを見てハッとして剣を納めた。振り返ってみると、黒髪を短く整えた身なりのいい初老の男が俺たちを見ていた。

「貴様! 図が高いぞ! この方を誰と心得る!」

「その反応を見ればだいたい想像がつくっての。この国の王なんだろ?」

 なおも俺へ頭を下げろと言うエドワードを無視して、国王とご対面した。数瞬の静寂の後、睨み付けられながら口を開いた。

「話は聞いている。娘を救ってくれたそうだな。それにだけは感謝してやろう」

「そういう割には感謝の気持ちってのが感じられねぇな」

 たしかエーベルとかいう国王は更に目を鋭くすると、腰に固定してある剣を抜いた。

「感謝の言葉はくれてやったのだ。片腕の貧民には身分不相応のことだというのに、あろうことか私に意見するとはな」

「なんだ、やるってのか?」

「この城にいる男は強くなくてはならない。弱き男は死ぬまでだ」

 両手で剣を握ったエーベルの黒い瞳には言葉通り殺意すら感じられた。

「そっちが先に抜いたんだ。どうなっても知らねぇからな」

 こちらが鞘を投げ捨てると、エーベルは一瞬体から力を抜いたように見えた。その後目にもとまらない速さで構えていた剣先が頭上へとあげられた。だがそれくらい反応できなければ、悪魔への復讐なんて始めない。

 容赦なく振り落された剣を片腕で受けてやると、そのまま押し斬ろうと力を込めてくる。それでも、俺の片腕には敵わなかった。そんな様子を見て、エーベルは剣を頭上から足元へ向けるが飛び上がって回避する。落下際にもう一度頭上から斬りかかられたが、それも弾いた。

 互いに剣を構えたまま、俺たちの間に静寂が流れた後、エーベルは一息ついた。

「なるほど、力があるようだな」

 エーベルはそれだけ言うと剣を鞘へと納めた。

「片腕でそこまで戦える男はそうそういない。強者の言葉なら、先ほどのお前の発言も態度も許すことにしよう」

「勝手に仕掛けて来て勝手に終わらせやがって……だから金持ちってのは嫌いなんだ、自分勝手でよ」

「力がある者が力を使ってなにが悪い」

 開き直った金持ちには言葉など意味をなさないだろう。早々にそこを離れたが、エドワードが追いかけてきた。

「我が主が許したのだ。それに戦いも見せてもらった。だが、貴様の右目は赤目の病の証拠だ。なにか弁明しなければ、どんな手を使ってでも排除する」

 面倒なことに巻き込まれたと頭を掻く。どうするかと思案していると、イルムが廊下の先――エーベルがいた方向から走ってきた。

「リージル! 片腕で父上と戦ったというのは本当か!」

 即座に膝を付いたエドワードを見やりながら、あれくらい楽勝だと返しておく。

「戦った感じ、まだ本気を出していないように見えたがな。それは俺も同じだが」

 そうか、とどこか気を落としたイルムは、話があるから部屋に来てくれと頼んできた。

「いけません! この男は赤目の病を患っているかもしれないのですぞ!」

 エドワードは引き留めようとするが、イルムはそんなことはないと否定する。

「赤目の病の患者が、私の妹を救ってくれるとは思えないからな」

 どういうことですかと聞いたエドワードは、先程のオークとの一件を聞いて、躊躇しながらも俺に頭を下げた。

「気にするな、まだ赤目の病について分かっていることは少ねぇからな。だが……」

 いったん言葉を区切ると、二人が覗き込んでくる。

「俺は赤目を百人以上斬り殺してきたが、発病したことはない。ふつうなら、赤目と接触した時点で発病するのにしないってことは、抗体があるってことなんだよ。アルマ――あのドワーフの少女もな」

 アルマのことは後付けで今後狙われないように付け足したが、今の話を聞いてエドワードはすまなかったともう一度頭を下げた。

「気にするな、エドワード。誰しも間違いはあるものだ」

 イルムがそう言ってやると、ありがたきお言葉と残して廊下の反対へと歩いていった。

「さて、少し話を聞いてくれるかな」

 そう言うイルムにうなずくと、広い王城の中を登ったりおりたりして、イルムの部屋へ通された。


 王子の部屋というのでどれだけ装飾がほどこされているかと期待していたが、中に入ると思いのほかせまく、数学や言語の本の類が乱雑に転がっていた。日当たりも悪く、なぜ王子がこんな部屋にいるのかと疑問に思った。

「すまないね、せまくて。でも王子だからって下手に広い部屋を使っても不便なだけなんだ。あと、辺りに落ちている本のことは気にしないでくれ。王子として膨大な知識を蓄えなければならないのだが、いかんせん多すぎてね」

 辺りをキョロキョロトしていたから気づかれたようだが、気にはしていないようだ。

イルムは椅子を二つ部屋の隅から持ってくると、座るように促した。そのあいだに、小さな机も運んでくる。ついでとばかりに、小皿になにかをもっている。

「この国でとれた果物の砂糖漬けだ。砂糖菓子といって、そこらの店で買えば銀貨では足りなくなる」

「そんな高級品を出してくるってことは、それだけ聞いてほしい話なのか」

 無言でうなずいたイルムは砂糖菓子を一かけら口へ放り込むと、情けない話だと前置きを置いた。

「私はもうすぐ二十五になる。そうなれば王位を継承するはずだったのだが、父上本人と、父上と繋がっている老人たちがそれをなしにしようとしている」

「甘い蜜を吸っていたいってわけか」

 甘い砂糖菓子を食べながら言ってやると、その通りだとイルムは憤慨した。それでも新しい王に変わるべきだとの声も少数だが上がっているらしい。

「民を中心とした新王派とこの城に関わりのある権力者や内部の者が率いる旧王派がこの城を、ひいてはこの国を二つに分けている。こんな状態を長く続けてはならないと旧王派も悟ったのか、条件を出してきた」

 イルムはその後をため息交じりで話した。今の王エーベルを一対一の決闘で打ち負かせば王位を譲ると。

「でも、父上は剣と共に生きてきたと言っても過言ではない程に戦ってきた。このクレサを市壁すら作れない程広大にしたのは、父が戦の中、剣で切り開いたようなものなんだ」

「それで、あのジジイとやりあった俺に相談ってわけか」

 またもうなずいたイルムは、まだ剣を習って一年しかたっておらず、対人の稽古は行っていないとも付け足した。

「私に稽古をつけてはくれないか。報酬は好きなだけ払う。なんなら物でなくてもいい」

「俺としては、さっき話した奴を探してくれるだけでいいんだけどな」

 そう言うと、イルムはすまなさそうに顔を下げた。

「それについてだが、実は先程、赤目の病を広める悪魔について父上に報告したのだが、捜索隊は出さないと断言されてしまった」

「おいおい、そりゃないだろ。いったいどんな理由で断られたんだよ」

「……赤目の病が発病する前に火刑台にてすべて燃やせば問題ないと、父上は断言した」

 ばかげている。あんな真似をしても悲劇を生むだけというのがわからないのか。それは俺の復讐も同じことかもしれないが、俺は俺だけに被害がかかることをしている。しかし王ならば別だ。民を根本的な問題を解決して安心させなければならない。

もしここで話を断れば、またアルマのような子も燃やされてしまう。それにせっかくの恩が帰ってこない。となると、選択肢は一つだ。

「わかったよ、これでも十年は首都サントルで騎士をやっていた身だ。教えられることを叩きこんでやる」

「協力に感謝する」

 そう言いつつ、イルムは手を差し出してきた。

「握手をしよう。君は私の数少ない味方だ。だから友になりたい」

「だから握手ってわけか。結構嫌いじゃないぜ、そういうの」

 お互いにがっちり握手を交わすと、早速剣の修業を開始した。


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