銃に再会を祈って
お題は後書きで。
入り組んだ、迷路のような道を、息をする音でさえ殺して歩く。
すると、目の前に曲がり角があらわれた。
俺は、しばし考え、やがて石を拾うと、それを転がす。
手に持った銃を構え、引き金にかけた手先に全神経を集中する。
それは、やがてくる敵を打つため、ひいては脱落していった仲間のため――。
じっと、辛抱強くその時を持つ。
そして、敵は唐突にやってきた。
足のつま先を、視界のはしに捉えた時には、俺はもう引き金を引いていた。
小型銃から、弾丸が発射される。
真っ直ぐに空気を切り裂くそれは、やがて全身を露わにした敵に見事に着弾する。
「ぐはっ……!」
反応すらできなかっただろう。
恐らくこいつは、場数を踏んでいない。じゃなきゃ、迂闊に曲がり角を通りはしない。
「骨があるやつがいねー……」
今日仕留めた敵は、全部で五人。
敵は十人だったはずなので、その内の半数を俺が仕留めたことになる。
味方は、残り俺を含めて二人だろう。
なぜなら、こっちには俺と互角の実力がいる遠藤がいるんだ。
そう簡単にはやられまい。
慎重に、道を進む。
時にミラーを使いながら、時に敵をおびき寄せるために意味のない発砲をしながら、俺は進んで行く。
「くそ、いねー。どこにいやが……」
言葉尻がしぼんだのは、会敵したからでもなく、虫に驚いたわけでもない。
そこには、遠藤の屍があった。それに少し動揺したのだ。
しかし、すぐに冷静さを取り戻し、死体を観察する。
腹を撃ち抜かれてる……。しかもこの弾の大きさは、もしやライフルか?
その可能性に思い至った時、とっさに身体が動いたのが、俺の命を未来へ繋いだ。
――しゃがんだ俺の頭上、そこを一筋の銃弾が通過していく。
避けられた喜びに浸る暇も、深呼吸する暇もない。
俺は、すぐさまその場から退く。
幸い、弾が飛んできた方向を見ることはできた。
「西か……」
ここから西に進むと、相手の陣地に辿り着く。
敵がスナイパーだったとすると、もしかしたら陣地から出ていないかもしれない。
俺は、なるべく頭を出さないように、重心を下にして走る。
途中、何度も弾丸が飛んできたが、幸い当たることはなかった。
よし、ここを左に曲がれば敵の陣地だ。
ミラーを使い、敵がいないことを確認し、素早くミラーをしまおうとしたその時、俺は確かに感じた。
静かな殺気を。
大袈裟に、横へスライドする。
しかし、反応が遅れたからか、完全には避けられなかった。
弾丸が横腹を掠める。微かな熱さと、明確な痛みが全身を駆け抜ける。
顔を少ししかめ、着弾した部分をおさえながら、俺は後ろを振り返る。
そこにいたのは、全身を黒い布で覆った人間だった。
俺は銃を構えようとする。
しかし――
「ちょ、流石にこれは笑いません?」
「……ですよね。やっぱり」
「あーあ、さっき弾丸当たってたからなー、結局やり合っても負けたよなー」
「いやいや、そんなことないですって。僕の狙撃避けられるなんて凄いですよ。しかもあれ完全に知覚外っすよね?」
「あれ、本当にたまたまですよ。スナイパーかなーって可能性に気付けただです」
「それで、避けられるのも普通に凄いすけど」
その男の姿を見た俺は、流石に吹き出してしまった。
俺達が行っていたのは、BB弾を用いたサバゲーだ。
無論、遠藤とかその他の人も死んでない。
「いやでも、最後は楽しかったですね」
「そうですね、またやりましょう!」
「いいですね、じゃあどうぞ」
「はい」
俺は、男に俺愛用の銃を渡した。
それは、サバゲープレイヤーが表せる最大のライバルに対する感謝の気持ちだ。
お題はBB弾!
書き上げた時間41分。本文38分。推敲3分。




